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101:大乱-⑦


 「…んだ、ありゃ……?」


 シュタットルムの声と共に姿を現した巨躯に、ガオルは思わず呆然と呟き。


 「敵ならばただ踏み砕くのみっ!」


 そう叫び、猪人の族長は手にした槍を両手で構え巨大合成獣(キメラ)へと突撃する。


 「…って、突撃ぃ!?」


 己の視界に映るその一部始終を一時停止していた思考が噛み砕き、認識し。

 策も何もない猪武者の愚行にガウルが頭を抱え罵倒するよりも先に。


 「憤ッ!!」


 巨大合成獣(キメラ)の足元に到達した猪人の族長が渾身のランスチャージをその足に叩き込み、槍の中程までがその肉を穿ち。

 次の瞬間、身を屈めた巨大合成獣(キメラ)の腕の一本が族長の体を掴み、持ち上げる。

 足に深々と埋め込まれた槍に対しなんら痛痒を感じる仕草もなく、掴んだ腕ごと族長を腹部にある顔面へと寄せ。


 「ええい、放さんかこのバケモノがッ……!?」


 一切の躊躇なく、族長を己が口へと放り込み。


 ゴリッ、ボリ、ペキッ、パキョ……。


 噛み砕き、咀嚼し、嚥下し。


 プッ。


 最後に、吐き出され地に転がった猪人の族長の生首、その表情は……。

 苦悶と恐怖、絶望の色に染められていた。


 「人の話に傾ける耳も持たず、暴れ、無様に散る……。

  ふむ、所詮は獣だな」


 シュタットルムのその一言が、沈黙と静寂に包まれた場に静かに響き渡り。

 怒号と共に、猪人を筆頭に獣人が地を蹴り、シュタットルムへと突撃し。

 それを阻むべく、合成獣(キメラ)が獣人へと殺到し。

 ミラ法国首都を舞台とした大乱の第二幕も火蓋が、切って落とされた……。




 「…で、俺はそんな混戦の中合成獣(キメラ)のエサになりかけてたじいさんを助けて今に至る、と」


 回想を終え、ジト目で見遣ればゲオは縮こまりしょんぼりとしょげた。

 当然と言えば当然であろう。

 碌に戦闘もできない老いぼれの自分を庇って王が肩口を抉られるほどの深手を負い一時的に戦線を離脱する羽目になってしまったのだから。


 「…面目次第も御座いません」


 大地に接吻するが如き渾身の土下座で、震える声で謝罪するゲオの姿に思わずガオルは噴き出してしまう。

 ああ、俺がどれだけやらかそうとこの老人にとって俺はまだ敬意をもって接するに値する存在であれているのだ、と安堵と真面目すぎだろうという呆れが半々のなんとも言えぬ感情が胸中を満たし、我知らずガオルは笑っていた。


 「どの道じーさんがくたばりゃうちの国は内部崩壊待ったなしだしな、怒っちゃねーからそんな気にすんな。

  ただ、次からは自分の年とガタのきた体を考えて行動しろ。 羊皮紙の束で合成獣(キメラ)を撃退したのは評価するがそれで腰をヤッて身動き取れなくなってりゃ世話ねーだろーが」


 「…はい」


 更にしょげ返り縮こまるゲオの姿に軽く溜息を吐き、戦場へと目を移せば。 そこには既に片手で数えられる程度の合成獣(キメラ)と、大幅に数を減らした同胞の姿。

 幾ら数がいた所で所詮は合成獣(キメラ)、単純な身体能力で純人種を遥かに上回る獣人種の、その中からさらに厳選されたアラケル軍にとって脅威と呼べる程の存在足り得ることはない。


 「と、なると問題はあのデカブツと……」


 チラリ、と目線を移せばそこには元気に暴れ回る巨大合成獣(キメラ)の姿。

 度重なる獣人の猛攻により片足を失ってこそいるがなんら気にした風もなく、六腕で己の体を支えながら戦場を這い回り周囲に被害を振り撒いている。

 全身に槍や剣、矢を生やしながらまるで堪えた様子のないその姿に思わず頭を抱えかけるが、(かぶり)を振りどうにか意識を立て直す。


 「あっちの正体不明のきょーこーとやらか」


 大聖堂の前にただ、佇む男。

 どれだけ合成獣(キメラ)が狩られようと沈黙を保ち身じろぎ一つしないその姿はただただ不気味で。

 幾度となく討ち取らんと肉薄した獣人は皆鏖殺され、こちらから手を出さなければ無害と無視されてはいるが。


 「…どう考えても、放置していいような手合いじゃねーよなぁ」


 「うん、私もそー思う」


 「あ?」


 ぼそり、と呟いた一言に思いがけず返事が返ってきた事に驚き、慌ててガオルが振り返ると。


 モフッ♪


 「やんっ、おーさまのえっち♪」


 なんだかとても柔らかい肉の塊に、ガオルの顔が埋まる。

 甘い香りが鼻腔をくすぐり、突然の事態に動揺していた精神は少しずつ沈静化していく。


 「よしよし、おーさまは甘えんぼさんですね~♪」


 思わず目を閉じ、体の力を抜くと鈴を転がすような声と共に暖かな掌が優しくガオルの頭を撫でる。

 そのあまりの心地よさにガオルの思考はとろけ、身を委ねるように眼前の人物へと擦り寄り…………。


 「…何イチャコラこいてんスか、兄貴」


 絶対零度の声音が耳朶を打ち、休息に意識が覚醒していく。


 「…って、うおわぁぁぁああぁぁぁあっ!?」


 同時に己の現状を理解したガオルは、慌てて眼前の人物を引き剥がし。


 「…あっ」


 傷の縫合中であった衛生兵の溢した声と共に肩口に激痛が走り、陣中にガオルの悲鳴が響き渡った。



なんだか、書けば書くほどプロットにない展開が生えてきて終わらNEEEEEEEデスヨ....?

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