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98:大乱-④

※この作品はぽんこつな子兎が主役のゆる~いふぁんたじーすとーりー


             『らびっつ!』です?




 ミラの声に応じ、配下の者達はその身を覆う純白のローブを脱ぎ捨てる。

 その下から現れるは人の形を保ち、されど人に(あら)ざる異形。

 ある者は数対の腕を持ち、ある者は六対の拳大の眼球を胴体に宿し、またある者は複数の明らかに人種も年齢も異なる部位が寄り集まりヒトガタを成し。


 「蹂躙なさい」


 次いで告げられたミラの言葉に、彼らは喜声を上げ。

 その身が膨れ上がり、人の殻をかなぐり捨て。


 あるいは、人の貌を先端に生やした数多の触手を操る巨大な緑色の肉の塊。

 あるいは、その背に翼を生やし炎を纏った八足歩行の巨大な蜥蜴。

 あるいは、下半身に蜘蛛、上半身に熊の胴体を生やし全身を金属質の鱗で覆った怪異。

 あるいは、本来両腕のあるべき場所に大量の人の腕で構成された翼を生やした二足歩行の鰐。

 あるいは、その全身に鋭い棘を生やした巨狼。


 この世界に在る、魔物と呼ばれる異形をもってして更に醜悪であると評せざるを得ぬ人の悪意により形作られたそれらは。

 次々にその身を変じさせながら己が前に居並ぶガオルーンの兵を前に喜悦の笑みを浮かべ。

 四肢を踏みしめながら、威嚇するが如く両腕を、翼を広げながら、大口を開き牙を打ち鳴らしながら。

 自らの前に供された獲物を目掛け一斉に地を蹴り。


 「くたばれもしくは死ね」


 それら一切の機先を制し、一足の元に戦場を駆け抜けたカミラの刃がその身を人魔へと変じつつある血塗られたトリュケシア軍旗を手にした者を唐竹に割る。


 「貴様らが呼吸をする事を許可した覚えはない」


 全力で振り下ろしたその刃が地を裂く前に己が膂力のみで強引に軌道を変え切り上げ、騎士団長の生首を手にした者を逆袈裟に斬り捨て。


 「疾く、去ね」


 逆袈裟で伸びた全身を斜めに切り上げたその腕ごと右に流しながら軽く舞い、中空で一度身を転じ遠心力を逃がし。


 「あの世へな」


 身を転じた勢いを着地の踏み込みのままに剣に乗せ、無残な鎧の残骸を手にした者の顔を上下に断つ。

 されどその眼光は剣閃とは逆に流れ、眼球の紐飾りを手にした者へとその視線を移し…──。


 「姫、我輩の獲物の取り分が少なくはありませんかな?」


 そこには、枯れ木のような老人により無数の肉片へと変えられた元・ミラ法国神兵の姿があった。


 「……じい」


 「早い者勝ち、は姫から始めた事でありますぞ?」


 標的を失い振り上げた剣の降ろし処を無くしたカミラから漏れる地の底から響くような怖声に、しかし平然とした顔で返すロー。

 しばし睨み付けるもやがて無駄と悟り、カミラははぁ、と溜息を漏らす。


 「…まぁいい、目標は達した」


 「ですな」


 言いながらカミラは地に落ちた血塗られた軍旗と鎧の残骸を、ローは騎士団長の生首と眼球の紐飾りを拾い上げ。


 「…我輩、この拾得物の差に異を唱えたい」


 「知るか、早い者勝ちを受け入れたのはじいであろう」


 そんな、戦場で繰り広げられているとはとても思えないやり取りを経て。

 突然の強襲と惨劇、そしてその後に繰り広げられる掛け合いに呆然とする神兵へと視線を向け。


 「「後方に向かって全速前進だっ!!(ですぞ)」」


 一瞬の躊躇いも無く、背を向け、全力で駆け去っていった。

 そのあまりの勢いに更に無為な数秒を経て、我に返ったミラが指示を出すよりも早く。

 棒立ちになった無防備な禁獣の群れを目掛け、ガオルーン兵が一斉に襲い掛かり。



 かくて、戦場は巨体の利、異形の利を活かし辛い敵味方入り乱れての混戦と相成った。


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