終章
その日眠りについたのは日付けが変わって大分経ってからだった。
そういうのもあの決戦後待ち受けていたのが、決戦よりもしんどい出来事だったからだ。
あれはもう思い出したくもない。
まあ、そんな感傷に浸りながら泥のように眠りにつく。
あわよくばあいつに会えることを願って。
それから意識が覚醒したのはすぐの事だった。
と言ったところでどれだけの時間が経っているのか確認する術はない。
そういうのも目覚めた場所が寝室ではなく、俺の望んだ通りの場所だったからだ。
「こんなに早く君に会うことになるとは思っていなかったよ」
「予定調和だみたいな顔をしてよく言うよ……」
「はははっ、やっぱり君、いい性格してるよ」
彼女は魔王であるのが嘘かのように無邪気に笑う。
しかしやはりその裏には影のような物が見え隠れしていた。
やっぱり食えない相手だな……。
なんて思っていると、
「君には言われたくないかな」
などと反撃を受ける始末だった。
なんか悔しい。
「それで本題に入らなくてもいいのかい? ここにはそう長くは入れないことになっているんだけど」
「そうか。で、どうなの?」
「単刀直入だね。私は君になら抱かれても構わないよ」
そういう意味じゃねぇよ!
そう思わずツッコみたくなるのを抑える。
それでは相手の思う壺だからな。
まあ、こう考えた時点で負けたようなものなんだけど。
「その通りだね」
ニヤニヤしながらそう言ってくる彼女に少し嫌気がさしながらも本題に入る。
「それで何回死んでも大丈夫なの?」
「知りたい?」
「ああ」
彼女のにやついた表情に一抹の不安を覚えながらも俺は短く答える。
すると彼女は案の定ため息を吐いた。
「私には分からないが正解かな。知らないことには答えられないよ」
その言葉が嘘でないと本能的に分かってしまった。
つまり死んでも生き返るという前提でこの先生きていくのは危険だということになる。
今回はこの能力のおかげで助かったが、あてにしててはいけないということだ。
死なないようにしなきゃな……。
なんて当たり前の事を考えてしまった時点で、やはり俺は普通の人間ではなくなってしまったのだろう。
ただそれだけは重々理解ができた。
「それで、聞きたいことはそれだけじゃないんだろう?」
「まぁな。で、どうなんだ?」
「私はそれでも構わないよ。そう簡単に終わるだなんて思っていないから」
「そうか」
彼女は悪戯に笑った。
そう簡単に終わらない。
その言葉の持つリスクについて分かっていないわけではない。
そう思っていた。
だがそれは俺の慢心だったのかもしれない。
そう気付いた時には手遅れだった。
全身の痛みに目を覚ます。
普段から身体は動かしていたつもりだったが、どうやら昨日の決闘はその許容範囲を越えてしまったようだ。
しばらくこのまま動きたくないな……。
なんて事を思いながら仰向けのまま天井を眺める。
違和感に気が付いたのはその時だった。
「なんでこっちの世界に……」
そこにあったのは見慣れた天井。
しかしそれは昨日も見たそれではない。
知らないうちに現実世界へと帰ってきていた。
RPGの世界に行くまで暮らしていた本来の自宅の天井が目の前に広がっていたのだ。
以前2度こちらに帰ってきた時とは違うこともある。
本来ならば手首にしっかりついているはずのエスシュリー(仮)の姿が見当たらない。
次にパソコンのメールを確認してみる。
全ての現況は不意に届いたあの怪しいメールだった。
そう思ったのだが、そこで予期せぬ事実を発見してしまった。
ディスプレイの右下に表示されている日時。
それが示していたのはあのメールを受け取った日であり、その時刻。
こちらに戻ってきた記憶すらも幻想だったと否定されたかのような気持ちになり、俺はしばらく動くことすらできなかった。
その後いろいろと考えてみたが、今までの出来事が現実だったのか、それとも長い夢だったのかは分からない。
ただ心に大きな穴が空いたかのような虚無感を引き連れて争いなどない平和な日常に戻っていくだけだった。
賛否両論、否多め……というよりも否しかなさそうな結末で終了しました。
本作中では触れられていませんが、この結末を迎えた理由としては、
三厳が不老不死の能力を手に入れたことによって、危機感を覚えた神が異世界への召喚を解除した。というものになります。
そんなところでリアリティなんていらないという意見が多そうですが、行き当たりばったりがコンセプトの本作なのでご容赦ください。
仕事の繁忙期が終わったら続々RPGとして再び続きを執筆するかもしれませんので、その時はまたダラダラとした拙作にお付き合いいただけると光栄です




