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続RPG~召喚から始まる魔王生活~  作者: 柊雪葵
第一幕 神族と封印されし大地
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第五章「束の間の休息」6

「ただいま……」



「おかえり──って死にそうな顔してるけど大丈夫? 後その子誰?」



 時刻は午後6時。

 うちのダメ妹が働く会社には残業の概念がないのか、この時間には既に帰宅してらしく出迎えられた。



 いや、それが普通であるべきなんだけどね。

 やっぱそんな苦労をしなくて良い分あっちの世界の方がいいわ。



 そんなことを考えながら最後の力を振り絞ってソファーに倒れ込む。

 少し固い。



「無視してんじゃないわよ! 急に帰ってきたかと思えばこれって何なわけ!?」



「うるさい。少しは静かにしててくれないか」



「この状況で黙ってられるわけがないじゃない!」



 ホント近所迷惑だから叫ばないで欲しいんだが……

 まあ、苦情を受けるのは俺じゃなくて美月(みつき)だからどうでもいいけど。



「あ、あの、私はここにいない方がいいんでしょうか?」



 兄妹喧嘩──実際には妹の方がワーワー言っているだけだが、それは放っとくとしよう。

 まあ、それを受けてリリィが悲しそうな顔をしてそう問いかけてきた。



「ほら聞かれてるんだから答えなさい!」



 その問いに答えることなくソファーと同化しようとしていたら美月から蹴られた。

 痛い。



「そうだな。美月と2人で買い物にでも行ってきてくれ。お腹空いたから晩御飯が食べたい」



「どうしてそうなるの!?」



「はい。分かりました」



 困惑する美月と受け入れるリリィ。

 あれだけ大変な目にあったというのに、こういう場面では聞き分けのいいリリィの方がいい女に見えるな。



「ほらほら、ハリアップ」



「蹴るよ?」



「もう蹴ってんじゃねぇか……」



 見事なまでに口より先に手が出ていた。

 悪質なことこの上ない。



「ごめん。すごくムカついたから」



「まったく可愛くない妹だわ……分かったよ。そんなに俺がここにいるのが嫌ならもう帰るよ」



 これ以上蹴られても堪らないからな。

 少し計画よりは早いが、RPGに帰るのも1つの手だろう。



「……そこまでは言ってない」



 今まで散々嫌みを言っていた妹が急にしおらしくなった。

 なんか怖いから余計早く帰りたくなるんだが……



「ほら、さっさと買い物に行くよ。三厳(みつよし)は何か食べたいものあるの?」



「おまかせで。でもできれば出来合いの物より作りたい」



「はいはい。ならこの子に食べたいものを聞いて食材を買ってくるね」



 そしてリリィが美月に連れられて行った。



 やっと1人になれたな……



 今頃俺の代わりに美月が賢者様の子守りに悪戦苦闘している事だろう。

 買い物に行くだけだが、思い通りにいかないことは身を持って分かっている。



 たぶん帰ってくるのは1時間後くらいだろうな。



 なんせ服を買いに行く途中に遊園地の広告を見て行き先を変更させるほどのじゃじゃ馬娘だ。

 その後もジェットコースターが気に入ったらしく10回ほど繰り返しで乗り、その後もことごとく絶叫系のアトラクションをはしごしたくらいだからな。



 うん。

 あれだけで寿命が5年くらいは短くなった自信がある。



 まあ、いいか。

 今は少しでも体力を回復させるために寝ることにしよう──






 あの後予想通りに1時間以上をかけて買い物を済ませてきた2人に叩き起こされ、料理のできない2人に代わり夕食を作り、それを食べ終わったところで臨時の家族会議──というか兄妹会議が開かれることになった。



 議題は言うまでもなく、リリィについてである。



「それでこの子は誰なの?」



「リリィ。お前もあっちの世界で会ったことがあるだろ?」



 美月がリリィの顔をじっと見つめる。

 しかし会った記憶が甦ることがなさそうな顔をしていた。



 そういえば魔法で耳がエルフのそれじゃないように見えるようになっているから気が付かなくてもおかしくはないのか。



 なんて思っていたら美月が大声を上げた。



「──あー! どこかで見たことあるかもと思ったらあの時のうしちちエルフ!」



 うしちちっておい……

 てか、余計に美月の表情が曇ってね?



「うしちち……ですか?」



「あんたなんてうしちちで充分よ! 塩まくからさっさと帰りなさい!」



 リリィのおかげでこっちに戻ってくることができたというのに、なんとも厚顔無恥なやつである。

 仕方がないからビシッと言ってやろう。



「美月」



「な、何よ、三厳」



「言っとくけどな──お前が料理をしないからこの家には塩がないぞ」



「えっ!?」



「マスター、そっちですか!?」



 うん。

 面白い反応が見れたからそれで満足だ。



「それはさておき、お前ら2人がそこまで仲が悪いとなると、今夜どうやって寝るかを考え直さないとだな」



「そんなの適当にそこ辺りに寝せとけばいいのよ」



「客に対してそんな扱いはできないだろ」



「私マスターと一緒に寝たいです!」



「はい、却下!」



 美月とリリィを一緒のベッドで寝させるのが無理なら俺がリリィと寝ないとだなって思っていたのにそれすらも拒否されてしまった。



 てかなんであのバカはこんなにムキになってんだよ……



「ならどうするんだよ」



「私が三厳と寝る」



 は?

 ヤバい、耳が悪くなったかな?



「アンモアプリーズ?」



「だから、私が三厳と一緒に寝るって言ってるの!」



 残念ながら耳は正常だったようだ。

 むしろおかしいのはあいつの頭だな。



「お前ブラコンかよ……」



「ち、違うから!」



「ふーん」



「な、何よその目は! 当然の判断じゃない!」



 必死に反論すれば反論するほどどつぼにはまっていくとはこういうことだな。

 まあ、別にどうでもいいが。



「私とマスターは夫婦ですから一緒に寝るのが当然だと思います!」



 うん。

 それもどうでもいい──



 ってよくねぇよ!

 何でそんな火に油とアルコールを一緒に投げ入れるみたいなこと言ってるんだよ!

 俺をフランベしたって美味しくないし、香りがよくなるどころか異臭がしかねないからな!?



「三厳、夫婦ってどういうこと?」



「あっちで色々あってな。5人ほど嫁として娶ったから。その内の1人」



「はぁ?」



 うん。

 それが普通の反応だと思う。



 俺も自分で言ってておかしいと思うもん。



「──はあ……もう好きにしたらいいよ」



 そして美月は全てを諦めたように寝室へと引きこもっていく。



 居間に残された俺とリリィは紆余曲折を挟んで寝ることにした。

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