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続RPG~召喚から始まる魔王生活~  作者: 柊雪葵
第一幕 神族と封印されし大地
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第五章「束の間の休息」4

 薄暗い室内。

 俺はわずかに光の漏れる方へと歩くと、光を遮断していたカーテンを開いた。



 清々しいまでに晴れ渡った青い空。

 光を浴びて空へと伸びる鉄筋の塔。

 俺がRPGに行く前はまだ建造中だったビルはもう完成していて、時間の経過を感じさせる。



 しかしそんな感傷に浸る間もなく、2つの声が漏れた。



「マスター! あれは何ですか!? すごく大きいです!」



 1つは子どものように目を光らせて外の世界を眺めるリリィの声。



 もう1つは……



「ま、眩しい……溶ける……」



 と、だらしない姿でだらしないことを言う妹の声だった。



「いい加減起きろ。もう朝だぞ」



 季節が夏だからと言うのもあってか、下着姿でベッドに横たわっている美月(みつき)の身体を揺すぶり起こす。



「後5時間……」



「長すぎるわ!」



「…………痛い……」



 つい思いっきり頭を叩いてしまったが、まあ、気にしなくてもいいだろう。

 こんな場面で『後5時間』などと頭のおかしいことを言うやつが悪いならな。



 むしろ叩いたことで頭のおかしさが改善されるかもしれないし、できればそうあって欲しいとも思う。



「あれ? 三厳(みつよし)? 今何時?」



「もうそろそろ7時半」



「──えっ!? 嘘!? 帰ってきたところ早々で悪いけど、私仕事に行かないといけないからっ!」



 もしかしなくても寝坊したのだろう。

 美月は大急ぎでスーツに着替えると、息つく暇もなく家を出ていった。



 すごい寝癖があったとか。

 リリィの存在にすら気付いていないとか。



 いろいろとツッコみたいところはあったが、恥をかくのはあのバカなのだからもう俺は知ったこっちゃねぇな。



 とまあ、フランの手を借りて日本に戻ってきたのはいいが、朝から波乱の幕開けだった。

 それでもリリィはそんなこと気に留めることもなく、未だに目を輝かして窓の外を眺めているからもうどうでもいいけどな。



「リリィ」



「…………」



「リーリーイ」



「…………えっ!? はい。マスターどうかしましたか?」



「とりあえず朝飯食べようと思ってな」



 トリップしていたリリィも戻ってきたことだし、まずは飯だろう。



 システムキッチンが少し──というより結構汚れていることに苛立ちを覚えなくもないが、まあ、料理ができないってほどじゃないし問題はないだろう。



 なんて考えていると、何を勘違いしたのか目を輝かしているリリィと目があった。



「分かりました! マスターのために頑張って作りますね!」



「いや、できればリリィはおとなしくしていてくれ……」



 リリィの料理の腕は壊滅的だから作らせるわけがないだろ。

 そもそも料理ができあがる前に家の1軒や2軒は焼失しそうだし、もし奇跡的にできあがったとしても俺の命の保証がない。



「ですが、マスターにそんなことをやらせるわけには……」



「でもリリィは火の付け方とか分からないだろ?」



「火ですか? バカにしないでください。私は炎属性の魔法だけは得意ですから!」



 リリィはえっへんと胸を張る。

 おお、揺れてる揺れてる。

 じゃなくて、やっぱりこいつ魔法で火を着けるつもりだったんだな。



 よかった。

 そんなことされたら最悪火事になるところだったし、もし奇跡的に火事にならなかったとしても火災報知器の1つや2つは鳴り響いていただろう。



「もうおとなしくしててください」



「むぅ……」



「ほら、たまにはリリィのために俺が作るっていうのもいいだろ?」



「それは……少し魅力的です」



 さて、リリィが機嫌を直してくれたところで、早速料理に取りかかるとしよう。



 そう思い立って俺は冷蔵庫を開いた。

 そしてすぐに閉じた。



「あの、マスター。どうかしましたか?」



 どうしたも何も冷蔵庫の中に発泡酒しか入っていなくてな。



 あのクソ妹はどんなおっさんのような生活をしてるんだよ……

 あれか?

 冷凍食品か?



 そう思って次は冷凍庫を開く。



 その中には大量のアイスクリームが入っていた。

 後で説教だな。

 よし、決めた。

 今決めた。



「リリィ、お知らせがある。食材がない」



「食材がないなら買いに行きましょう!」



「その格好でか?」



「えっ!? そんなにおかしいですか!?」



 この時間では近くのスーパーが開いていないということよりも、リリィの服装の方がどうしても気になってしまう。



 こんなコスプレみたいな格好──どう見ても普通の服には思えないローブとかを着ている金髪女子と出歩くなんて羞恥プレイはできればしたくない。



 かといって科学文明にまるっきり耐性のないリリィを1人部屋に残していくというのも不安で不安でしょうがない。



 かくなる上は──



「仕方ない。美月の服を拝借する事にしよう」



 俺はそう言ってタンスを漁り始める。

 断じて妹の服に欲情するような変態的趣味があるわけではない。



 ましてやこんなまともに畳むことすらできてないダメ妹の服なのだからなおさらである。



「とりあえずズボンとTシャツでいいか。リリィ、これに着替えてくれ」



「はい」



 さあ、やってきました!

 金髪エルフ、リリィさんの生着替え!

 おっとまずは上着に手をかけたー!



 なんて朝っぱらからそんなテンションにもなるわけもなく脱衣所を使ってもらうことした。



 部屋に押し込まれる時、「マスターになら見られても構わないのですが……いえ、むしろ見られたいです」なんて言っていた気がするが、まあ、そんなことは気にしないでおこう。



 さて、今のうちに俺も着替えるとするか。

 さすがにこの暑い中をローブ羽織って歩くなんて自殺行為はしたくないからな。



 そんなこんなで俺の着替えは終わり、その後を追うようにリリィが出てきた。



 出てきたのはよかったんだが……



「マスター……その、似合っているでしょうか?」



 明らかに顔を紅潮させて出てきた彼女の服装は、似合っている似合っていないの問題ではなかった。



 体型的には美月とあまり変わらないからと安易に考えたのが悪かったようで、明らかにサイズがあっていない部分が目立つ。



 胸とか胸部とかバストとか。

 無理に着ようとしたせいか、服が引っ張られてヘソ出しになってるし、さっきの格好よりも際どいものになっていることは間違いない。



「……着替え直しだな。デニムは問題ないみたいだから、上は俺のでいいか?」



「は、はい! マスターの服着たいです!」



 何故そこで嬉しそうにしているのかはさておき、俺の服をリリィに渡す。

 サイズ的に大きすぎるかもしれないが、あの胸だからこれくらいはないと無理だろ。

 うん。



 ああ、朝からホント疲れるわ……

 もう朝飯作る気力もないし、外食にしようかな。



「マスター! 着替え終わりました!」



 そして着替え直したリリィが脱衣所から出てくる。



 黒のTシャツに青いデニム。

 ファッションセンスのファの字もないような服装ではあるが、これが今できる精一杯だから仕方ないよな?



 まあ、後で服は買いに行くとしよう。



「よし、それじゃ出かけるぞ」



「はい!」



 そして俺たちはようやく街へと繰り出すのであった。

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