第四章「アマゾネス攻略戦」4
「噂には聞いていましたが、ここまで来ると異様な光景ですね……」
「女の子だけの秘密の花園だからね。僕としてはこういったのはあまり歓迎できないけど」
リアはアマゾネスに入るなり、カルチャーショックを受けたのかどこか呆れたような声を出す。
フランはフランで、やはり神としては同性愛は教えに反しているのか苦笑いを浮かべている。
それもそのはず。
街へ入るなり、女性同士でキスをしている光景を目の当たりにすればそうなるのも当然だろう。
何というか前に来た時よりもいろんな意味で酷くなっているな……
「それで、まずはどこへ向かうのですか?」
正成の質問で俺に視線が集まる。
「フ──」
完全に油断していた俺は思わず少し声を出してしまう。
なんとか踏みとどまったし、周りには聞こえていないみたいだからセーフだよな?
「お姉さん……気を付けて」
はい。
気を付けます。
それはさておき、これからどこへ行くかだったな。
まず向かうべきは結界の中心点。
術式を展開している場所なんだが……
「フラン、要になる場所はどこ?」
「結界の要なら間違いなくこの街の王宮だろうね。僕はこの街の地理には詳しくないけど、豪華そうな建物を探したら見つかるんじゃないかな?」
「少し調べてきますね」
フランの言葉を受けて、自称情報収集を得意とする忍者(女)が行動に移る。
正成を信用してここで待っているのも1つの手だと思うが、留まっていてもそれはそれで面倒な事になりそうだから俺たちも探し回るとしよう。
「私たちも行く」
「はーい」
「了解です」
サシャの声を合図に俺たちも行動を開始する。
移動中、よほど目を引くのか──まあ、原因の8割以上は間違いなくリアの容貌のせいなのだろうが、ジロジロ見られていて気が休まらない。
怪しまれないよう、少しでも女に見えるように内股で歩こうと試みたが、よくこんな歩き方でずっと歩いていられるなと思うくらいに歩きづらい。
「もう少し普通に歩きなよ」
フランはそんな俺を見て、お腹を抱えながら笑っている。
サシャから見てもやはり変だったのか視線を合わせないようにしているし、リアみたいに普通に歩くことにしよう。
「それにしてもどこも同じような高さの建物ばかりで、あまりよく分かりませんね」
「そうだね。しかも結構広いみたいだからこれは骨が折れるかも」
「疲労骨折?」
いやいや、そういう意味じゃないから。
心の中でツッコんでみたものの、サシャのボケか天然か分からないそれはすごく心臓に悪い。
声を出せない。
つまり笑ってもいけないんだから笑わせるようなことはしないでほしい。
「笑うところあった?」
「柳生三──みっちゃんの歩き方くらいじゃない?」
「確かにみっちゃんの歩き方は変でした」
サシャは無自覚。
フランは柳生三厳といつも通りに呼べないことに気付いてなんか変な呼び方するし、リアもその呼び方に便乗してるし……
不満があったとしても俺が喋れないからってこいつら好き放題過ぎねぇか?
「お姉さん……怒ってる?」
怒ってはいない。
ただ、この先も怒らないという保証はできない。
「フラン、調子にのったらダメ」
「はーい」
こいつ全く反省する気ねぇな……
てか、どんだけ歩いてもやっぱり景色が変わらない。
そもそも本当にフランが言うような派手な王宮なんてあるのか?
「もしかしたら……結界の要があるくらいだから街並みに擬態してる?」
「確かに。それはあるかもしれないね」
「いっそのこと空から街を一望できればいいのですが」
空から街を……か。
それならライドラを召喚すれば解決する話なんだが、こんな街中で呼び出すわけにも行かないからな……
「──お待たせしたでご……しました」
うわ。
こいつ今ござるって言いかけたわ。
「それで何か分かったんですか?」
「はい。ここから西方に500ユーレほど行ったところにそれらしきものを発見しました」
500ユーレか。
高々1キロとはいえ、この格好でそれだけ歩くのは精神的に辛いな……
しかも今回は視察だから、帰るときと次来るときも同じ距離をと考えると頭が痛くなりそうだ。
「とりあえず行くしかない」
「あんまり歩きたくないけどみっちゃんがそういうなら歩くしかないのかー」
「つべこべ言っていると斬りますよ」
「ちょ!? みっちゃん、この子怖いんだけど!」
リアから脅されたフランは俺の背中の後ろ側に隠れる。
仮面で表情すらは分からないが、ただでさえどす黒いオーラみたいなものがより黒くなっていて怖いからやめてほしいものだ。
「時間をかけてもあれなので早く向かいましょうか」
正成が道案内をするように歩き始めたことで、リアもフランもその背中を追うように歩き始める。
「お姉さん、大丈夫?」
大丈夫じゃない。
もう辛い。
「大丈夫なら私たちも行く」
大丈夫じゃないと言ったのに、サシャは俺の手を引っぱり始めた。
さすがに対格差がありすぎて、サシャが辛そうだから自分の足で歩くことにする。
とりあえず今日新たに分かったことがあるとすれば、サシャが俺に優しくないってことだな。




