表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

のどかな町でのある事件(3)

「…………此処は」


 とある場所。やたらと静けさを感じる家でリセは目を覚ました。


(確か僕はあの時……)


 まだかすかにふらつく頭で、今までの事を思い出すリセ。確かお守りの首飾りを付けようとして……。


「そうだ! …………!?」


 全てを理解し、動こうとした瞬間に、左手首に感じる冷たい感触に気付く。その手首とベッドの柱を繋ぐ手錠である。これでは逃げ出す事も出来ない。


「気付いたか?」


 ドアの開く音ともに姿を現したのは一人の男。歳は見た目からしてロディアより少し年下の二十代前半くらいだろう。不敵な笑みを浮かべ、まるで何かに勝ち誇ったような表情だ。


「お前か。僕を襲ったのは」

「いいや? 襲ったのは俺の双子の兄の方だ」

「本人でなくてもこうしていると言う事は、お前が僕を襲ったのと一緒だろう? ……目的はなんだ?」


 その言葉に対して特に何も言わずに、男はリセの目と鼻の先まで顔を近づけ、それからようやく手短に用件を言う。


「安心しろ。命を奪おうとまでは思わない。二つ頼みがある。

一つ、ある人間の呪いを取り除いて貰いたい。

二つ、今からお前の行動は俺達が監視する。ウィルドが死ぬまで、この家に居続けて貰う」


 まるでそれは、救う事への決意を固く持ったリセの反応を楽しむかのようにも見える発言であった。助けたい相手がいると言う箇所は良いとしても、その次の言葉に問題があった。


「ふざけるな! ウィルドを見殺しにしろと言うのか?」

「ああ、そうさ? あの兄弟が苦しむ機会なんて滅多にないし」


 悪びれる事もなく言ってのける男に、沸々とわき出る苛立ちを、リセは抑えきる事も出来ず、手錠で繋がれていない片手で男の頬を叩いた。しかしすぐに仕返しされ、リセは頬を思い切り殴られてしまう。


「……っ」

「威勢が良いな。だが女でも俺は容赦しねえから」

「わざとらしい。僕は男だ!」

「ああ、そういえばそうだったな。そういえばついでに伝えておこう。風呂とトイレ以外、お前は手錠で繋がれてままだ。全てを束縛してしまったら、お前を殺してしまうからな。逃げ出そうとか考えたらその頬程度じゃ済まさないから。俺より兄の方が力強いし。じゃ、俺は用があるから。兄から取り除いて貰いたい奴の情報、聞くと良い」

「待て、お前の名前……は……いなくなりやがったか」


 男が去って行くのをただ呆然と見送ったリセ。逃げる事を考えるなと言われても、リセはウィルドを救わなければならない使命がある。

 逃げ出す方法を考えなければ。兄の方が来るまでの時間、それがリセに出来る唯一の事であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ