のどかな町でのある事件(2)
「あ、これは……」
セレンの目に飛び込んだのは、キラリと光る物体。拾ってみればそれはリセが普段から身に付けているものではないか。それを彼が大切にしている事も、セレンは知っていた。その大切にしているものが此処に落ちている。と言う事は……。
「女将さぁぁぁぁん!! おおお、おまわりさん呼んで下さい! りり、リセ君が、リセ君が……」
セレンはひどく動揺し、その顔色は周りが心配するほどに真っ青だった。
*
「……ただ何処かに外出しているだけと言うのは考えられないのかい?」
リセの失踪疑惑は(実際は本当に失踪しているのだが、まだ確定ではない)、瞬く間に小さな町であるラピアス全域に広まった。
慌てるセレンに言われるがまま、宿の女将は警察を呼び、現在彼女は事情聴取を受けている。その宿の周りには囲むようにして、人が集まっていた。
解放者であるリセがいなくなっただけではない。失踪が事実ならば、それはラピアスの歴史の中で初めての出来事でもあるからである。
「だから、考えられないって言っているじゃないですか! 証拠はこれです」
「何故それが落ちていただけで解放者様が失踪した、って根拠になるのかな?」
「リセ君、一度だけ教えてくれたんです。“この首飾りは母親から貰った大切なお守りだから、寝る時はお風呂に入る時以外は肌身離さず付けている”って。そんな大切なお守りが、ですよ? どうしてこんな所に落ちていなければならないんですか!? 大切な物ならば、こんな所に落としてほったらかしにする訳ないじゃないですか!」
「まー……お嬢さんのその主張も分かるけれど、彼が仮に事件に巻き込まれて失踪したとして、彼を襲って誰が得をする?」
警察の言葉ももっともな箇所があるせいか、セレンもなかなか反論が出来ない。
「納得してくれないようだね。じゃあ、こうしよう。今日いっぱい、お嬢さんの元やリングデイさんの元に彼が姿を現さなければ、彼を捜そう。今はまだ出掛けている最中の範囲から抜け出せないからね」
「そんな……! リセ君、絶対今日は意気込んでいた筈なのに……約束を破らせるんですか?」
「すまないけれど、こちらからは……」
警察の提案に今にも泣きだしそうなセレンに救いの手を差し伸べたのは、リセ失踪疑惑の話を聞き、そんな彼女を心配してやって来たロディアであった。
「お嬢さんを信じるよ。だから、諦めないで捜そう? ウィルドの事なら心配しなくていい。アイツは図太いから寿命なんてまだ八十年以上は残っている。今日見つからなくても、必ず果たしてくれるならば、今日解けない事を怒ったりはしない」
「ロディアさぁぁぁぁん………!!」
「ほら、泣かない。……おまわりさんも必ず約束は果たして貰いますからね? こんなに可愛いお嬢さんを泣かすだけで終わりなんて、あんまりです」
ロディアの優しい言葉に、とうとう泣きじゃくってしまったセレンをなだめながら、彼は警察に釘をさすかのように、にっこりとほほ笑みそう言い放つ。それには警察も“分かった”としか言えなかった。