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のどかな町 ラピアス(3)

 ウィルド・リングデイ。歳は十九。茶髪に青い瞳の青年である。既に亡くなった両親から継いだ喫茶店を、マスターの兄と共に切り盛りをしている。

 リセが案内を受けた時間は、買い出しの為に外へ出ていたようだ。それを聞いたリセは彼がすぐにいなくなった理由を理解した。急いでいたのだ、と。


(悪い事をしたような、そうでないような……)


 罪悪感が芽生えだした所で、リセはレンティルの案内の元、彼が働いていると言う喫茶店へ到着した。少し年季の入ったこじんまりしたそこは、ラピアスの住人にとっての憩いの場所となっている。

 そんな場所にリセがレンティルと共に一歩足を踏み入れた瞬間、自身の目を思わず疑った。


「何で此処にいるんだよ……」


 グレーのロングヘアをなびかせ、カウンター席に座っている少女。物音に気付き、振り向いた彼女は緑色の瞳をほんの一瞬だけ嬉しそうに輝かせたが、次の瞬間には……。


「リーセーくーん? 行くなら何で言ってくれないの? 

しかも私より早く行ったくせに、私よりも遅い到着って。方向音痴にも程があるよ、全く」

「セレン……前にも言わなかった? 僕には助手はいらないって」

「でも最終的に勝手にしろ、と言ったのはリセ君だよね? だから勝手にさせていただきました」


 リセは額に手を当て、軽く眩暈を覚えた。レンティルやその場にいたマスターは何の事かと首をかしげて見せたから、セレンと呼ばれた彼女はリセと自身の関係を二人に教える事にした。


「私はセレンディーネ・リハネス。歳は十九歳です。セレンと呼んで下さい。以前大切な友人を助けていただいたのを切欠に、そこにいるリセ君の助手をやっています」

「それは勝手に言っていることであり、僕は認めた訳ではないので」


 セレンが説明した事に対して、リセは一言補足を付けた。それにむくれるセレンを余所目に、リセはウィルドの兄であるマスターに話を聞く事にした。それを他の客が興味ありげに見ている中で。


「えーっと……」

「ロディア・リングデイです」

「ロディア、さん。弟さんは今……」

「ウィルドなら今、ティータイム用のクッキーを焼いています。

もう少ししたら顔を出してくれますよ。それまではボクが分かる範囲でお答えします。町長と来ていると言う事や、そちらのお嬢さんの発言から察するに、貴方が弟を助けに来たのでしょう?」


 おっとりしているように見えて、案外賢いなと失礼な事を考えながらも、リセは次々とロディアに質問を続けた。何時からこうなったのか、ウィルドは生まれつき病弱なのか、等。聞き終えた後にリセはポツリと呟いた。


「本当に僕の方向音痴は何とかならないかって、こんなに思う事はないね」

「だから、私が最初から一緒について行けば」

「セレンは黙っていようか」


 ウィルドが呪いを発動させたのは、今から五日前。この時点で既に一年三ヶ月の寿命が縮んでいる。此処まで経っているのに、発動に気付かなかったのは、発動の際に熱を出したからだと言う。だから依頼の遅さを責める事は出来ない。


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