こんなはじまり(1)
『リセ、お元気ですか? 無理などしていませんか?
今年もリセの大好きな村のリンゴが沢山収穫できましたので送ります。
半年に一度だなんて言わず、またいつでも顔を出して良いからね。
アナタに与えられたその力は、神様を辱める為にあるのではないと言う事、忘れぬよう。
ルシェル・アディートより』
*
国一番の大都市アーヴァイス。この都市の城下町に、リセ・アディートは一人で住んでいた。歳は十八、藍色の髪に緑色の瞳を持った少年である。背の低さと童顔、そして名前のせいか年相応に見られる事も、男性と思われる事もない事があった。
朝早くに送られてきたりんごの山を見ながら一つ溜息を吐くと、リセは支度を済ませ、決まって一番に向かうのはギルドと呼ばれる仕事仲介所。しかし彼は無職ではない。自身の住まいから少しだけ離れた場所で、医院を営む医者の手伝いをしている。なら何故ギルドへ行くのか。その理由はと言えば。
「夜の内に入った依頼はないようだね……」
「いいや。三件ほど入ったが、全て違う奴らが引き受けたんだよ。一足遅かったね」
「……“またか”」
朝だと言うのに既ににぎわいを見せているギルド。このギルドには様々な案件が飛び込んでくる。一番多いのが賞金首に町を荒らされたから助けて欲しい、と言った地方からの依頼である。他にも作業に人手が足らず、力を貸して欲しい。遠くへ出かけるから護衛をして欲しい。怪我をしてしまったから家事をして欲しい……等、その内容はピンからキリである。
リセが探している案件は賞金首の情報でもなければ、その他の事でもない。もっと特殊な事である。
「……本当は僕みたいな奴に任せられるものがないから隠している。とかじゃないだろうな?」
「そんな事はだね……」
「はは、分かっているじゃねえか。リセちゃん。幾ら能力持ちでもな、お前なんてもやしみたいな奴に、任せるなんて無謀すぎるぜ」
ギルド役員とリセの会話を聞いていた、やけに筋肉質の男は笑いながら嫌みを言う。男もまた、リセと“同類”なのである。恐らくは“その仕事”を手に入れてご満悦なのだろう。
リセは軽くイライラを募らせつつも、冷静な態度で男に接した。