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幸せ解析学  作者: アルタ
ふわふわくらっしゅ
6/12

第6話 *吹谷君の場合

 今俺は幸せについて考察している。

 どうやら人の感覚において、幸せだと思うのことは個人差があるらしい。

 そこで校内でも癒し系で有名な和歌山風子と付き合ってみた。



 和歌山は言う。

「なんだか幸せだなぁ」

と。

「幸せとはどういう気持ちなのだ?」

 俺が問うと彼女は答える。コタツに入ったときみたいに、じんわり温まる感じであると。

 そのときなんとなく「ああ、そうか」と納得した。

 ホンの僅かな感情であるが、何か自分の中で現れたよく分からない感情……これがそうなのだと。


 ほのかに温かい感情。もう少しこのままでいるのも悪くは無いと…俺にしては至極非効率的なことを思った瞬間、触れれば消えてしまうのではないかと、人間である和歌山に抱いてしまった非現実的な思考。


 それはなんでもない、ただ2人で河原に座って弁当を食べていただけのことだった。

 河原に座って弁当を食べることなど珍しくも何もなく、また、いつでもできることだ。

 人はそんなことで幸せを感じることができるのだろうか?

 特別でもなんでもないことで。


――否、違う。

 特別でないことは無い。

 そして、きっと消えてしまわないことも無いものだ。


 河原に座ることも、

 弁当を食うことも、

 風に吹かれることも、信号待ちすることも、横断歩道を渡ることも、歩くことも…いつだって出来る。


 だが、和歌山と一緒だと何もかも特別に変わる。

 そして、和歌山が消えたときにそれは普通のものに戻る。




 そして思考は遡り、過去へと戻っていく。


「うーん、でも吹谷君。みんな吹谷君みたいに強くはないんだよ。

 すこしだけ……皆のこと考えてあげることって出来ないかな?」

 最近、俺にクラッシュされたという噂を聞くことがかなり減った。


「人ってやっぱり誰か彼氏や彼女が出来たら変わる変わる。

 相手のこと考えてるから気遣いできるし、優しくなるもんだと思う。

 でもそう変わるスピードは人それぞれ違うんじゃないのかな……。

 ゆっくりでいいんだよ。大切にしたい気持ちは不器用でも、きっと伝わるから」

 だが俺はいつも通りの俺で何も変わってはいない。


 相手の感情を予測する何てことは以前から試みていたことだ。

 次にどう動くかという予想。

 全てがいつも通りで、

 俺は何も優しくなどなっていない。

 けれど、雰囲気がやわらかくなったと、周りの者は言った。

 いつだってやっていることなのに、変わったと言われるのは……


 ああ、

 そうか。


 和歌山が一緒にいるからだ。


 俺は優しくなどはない。だが、和歌山につられて行動しているうちパターンがうつった。隣に和歌山がいるから、それらしい行動をとっているだけのことだ。だから和歌山がいなくなれば、俺は元に戻るだろう。


 だが、和歌山は最初から優しいと言われていた。

 もしかして和歌山には別の…いわゆる“一緒にいて幸せだと感じる人間”がいたのだろうか?

そうでなければ説明がつかない。


 きっと和歌山は幸せなのだ。気がついていないのかもしれないが、そういう人間が近くにいるんだろう。

 だから誰でも、誰とでもそう思えるはずだ。

 そして誰をもそう思わせることが出来るに違いない。

 ……俺でなくてもいいのだろう。



――俺は変わらなかった。




 ふと、思い浮かんだことがある。

「和歌山にとって、俺と一緒にいることはメリットになったのだろうか?」


 考察が終わる瞬間が少しずつ足音を立てて近づいてきている。そんな予感がした。

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