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つれづれペンペン草  作者: おのみちたかし
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夕暮れの少年

4歳の頃


 「三つ子の魂百まで」


 意味を間違えやすいことわざだが、要するに3歳の頃にオッチョコチョイだった人は100歳になってもオッチョコチョイだということである。これは、僕によーくあてはまる。


 人生で3回ほど交通事故というやつに遭遇した。美しい女性ならばいくらでも遭遇したいが事故にはできることならお目にかかりたくない。これはその記念すべき(?)第1回目の出来事である。


 その日、僕は近所の友達と公園に遊びに行き、家に帰る途中だった。時間は午後の5時過ぎ、あざやかな夕焼けが空を真っ赤に染め、町は黄昏の中に沈み行こうとしていた。

 家まであと100メートルといったところに幅が10メートルほどのちょっとした道路があった。結構、車の往き来があり、無事に家に帰りつくまでの最後の関門といったところ。


 道路を横断しようと1、2歩と歩き始めた少年はふと左側に車の音らしきものを感じた、そしてふと左を見ると20メートルほど先から一台のスーパーカブとおぼしきバイクが走ってくるのを発見する。


 「あ、おーとばいだ」 少年は心の中でつぶやく 


 「このままだとぶつかるな」 少年は冷静に分析する


 「さがればぶつからないや」 少年はかしこかった


 「いっぽさがろう」 実は少年はあまりかしこくなかった


 少年は一歩下がったおかげでオートバイのタイヤに轢かれることはなかった。この点では少年の判断と行動は高く評価できよう。しかし、オートバイという乗り物にはハンドルという横に出っ張った装置があるのである。このことに気づかなかったという点で少年の評価は大きく下がるのであった。


 大きな衝撃とともにオートバイのハンドルが少年の左頭部に激突して少年は跳ね飛ばされた!


 何が何やらわからないままにふと顔を見上げるとおじさんらしきひとが少年の顔を覗き込んでいる。


 「大丈夫か?」

 「大丈夫だよな」

 「じゃあな」  ブブブブブ・・・・


 世間一般にはどうやらこれを「ひき逃げ」というらしい。

 少年は大丈夫かというと・・・・全然大丈夫じゃないのだ!

 ふと頭に手を当ててみると手には真っ赤な血がいっぱいについているのだ!


 血だらけの少年を放置しておじさんは走り去った。


 さて、その後の少年の行動に注目してみよう。まず、偶然にもこの事故の目撃者が誰もいなかった、夕暮れ時というのも災いしたようだ。誰でもいい、大人がひとりこの場に居合わせてくれたら・・・


 次に少年は思いもかけぬ行動に出た、今思い返しても恐ろしいことに少年は血だらけのまま家に向かって歩き出したのである。そして、これまた偶然の出来事といえよう、家に着くまでの約100メートル、たった一人の大人とも出会わなかったのだ。もっとも、誰かがこの光景に出くわしたら悲鳴の一つも上げていたかもしれない、何しろ黄昏の住宅街を血だるまの子供が歩いているのだ!へたなホラー映画よりよっぽど怖い!


 さて、少年は無事に(?)帰宅

 ここで第二の悲劇が・・・父親も母親も誰もいないのである。父親は仕事、母親は買い物・・・


 「血を止めなくちゃ」 少年は考える


 ここが4歳の子供の考えの浅はかなところ、隣近所に助けを求めるという考えが全く及ばないわけだ。

 台所から持ってきたタオルを頭に当てること約20分、白いタオルはみるみる鮮血に染まり意識も朦朧としてきた。不思議と痛みはまったくといっていいほどない・・・


 さあ、少年の運命は如何に!!


 しかし、神は少年を見放さなかった! 母親が帰宅したのである!

 自分では記憶にないが、その時の母親の驚きといったら相当なものだったろう、何しろ帰ってきたら息子が血だるまで待っているのだ!なかなかお目にかかれる光景ではない。


 そして、その後少年は救急車の車中の人となる、救急隊員の人の顔が見えたところまでは覚えているがその後の記憶はない、後から聞いたところによるとあと10分遅れていたら出血多量で手遅れだったらしい。それから、これも後から聞いたことだが、少年の事故はひき逃げ事件としてラジオで報道されたということである。


 この事故を皮切りにこの後の人生で大きな事故を2回、小さな接触事故を含めれば4回 まったく反省のない人生を送っている。


 ところで、こんなかわいらしい少年を轢いた例のおじさんであるが、結局捕まらないまますでに40年余りが経過している。法律的には時効というわけだ。


 きっと、どこかで犬をウンチを踏むなどの不幸を繰り返し、苦悶に満ちた人生を送ったに違いない。


 教訓 オートバイにぶつかりそうになった時は2歩下がろう!



  



  


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