私の嫌いな彼女
人間は誰もが無いものねだり
満たされても満たされても足りない
誰よりも誰よりも幸せになりたいの
特に自分に無い物を持っている相手には嫌悪感や嫉妬心を持つ物
そんな人間の弱さ屈折した心をリアルな体験談から描く
第一章 〜 出会い 〜
高校卒業の春、将来に不安だらけの私は東京の四角い空の下にいた
進学校ではめずらしい東京への高卒就職
夢の為だった
上京の理由はそうだったと思う
某大手企業の女子寮暮らし
そこには学生時代となんら変わりのない、女子特有の『つるむ』という習慣が根強く
正直ウザかった
社会人になってまで、なぜ毎日行動を共にしなければならないのか窮屈で仕方なかった
しかし、一匹狼でいる勇気もない18歳田舎者の私は、同室の先輩同士が仲が良かったことから
『由希子』と行動を共にすることを選んだ
由希子はとても同い年とは思えないほど、幼く内気なタイプだ
女3姉妹の末っ子・女子高育ち
汚れのない純な感じに見えた
おまけに美少女で細身なのにDカップの胸
まさに男受けしそうな童顔巨乳の女だ
田舎者の私達は、日夜街へ繰り出した
ファッションのアンバランスな2人
一緒に撮ったプリクラは数知れず
もちろんどれもアンバランスだ
きっと周りから見ても、なぜ私と由希子が一緒にいるのだろうと不思議だったことだろう
お互い無理をしてたんだ、もしかしたら今も...
第二章 〜 孤立 〜
会社での拘束から解き放たれるかのように、私は決まって週末、歌舞伎町のCLUBにいた
外人客の多い店は、客引きになると言って日本人の女の子を無料で入店させてくれる
毎晩、CLUBをハシゴした
ある店で1人の男に出会った
長身にワンレンの髪
今で言うイケメンの『政樹』だ
それが私の人生2人目の相手だった
ちなみに初体験は高校3年生の後半
周りの友人に彼氏が出来て行くのを見て、焦って処女を失った
処女でいるのが恥ずかしかった...
私は政樹と接近し、いつしか恋仲になった
私にとっては彼の心も体も愛おしかった
駅のホーム、電車を待つ私に不意打ちのkiss
体中がとろけそうなくらい熱くなり、私はその場にしゃがみこんだ
そして、その様子を見た彼も、私の意外な反応になんだか嬉しそうだった
そして、初めて彼の部屋に呼ばれたとき
私の欲はマックスだった
彼が欲しい 彼を満足させたい 彼を私の虜にしたい
私の暴走は止まらなかった
その日を境に、政樹からの連絡は途絶えた
それどころか、政樹の親友に売られそうになったのだ
きっと、すぐにやらせてもらえるとでも耳打ちしたのだろう
ショックで涙が止まらなかった
政樹にフラレたショックを埋めるかのように
私はまたCLUB通いを始めた
そして、酔っ払って私を口説いてきたのは3人目の男『康』だ
康はいきなり私にkissをして下半身にも手を伸ばしてきた
少しは抵抗したが、政樹に対する想いでもうメチャクチャだった
どうにでもなれとヤケクソだった
すると、康は私に「付き合おうか」と言ってきた
私は軽い気持ちでOKをした
後から知ったことだが、康は前科持ちで喧嘩っぱやくキレやすい
少し怖かったせいもあり、呼び出されるとどんな夜中でも、友達と買い物中でも飛んで行った
そのせいもあり、だんだんと私は会社の仲間とも、もちろん由希子ともつるまなくなって行った
変な男と付き合っているという噂も広まり
どんどん孤立して行った
第三章 〜 1回目の転機 〜
上京した私には夢があった
歌手になりたかった
そんなことも忘れて日に日に男に堕ちて行った
経済力もない家族の信頼もないダメ男と同棲しようなんて馬鹿なことを考え始めていた
賃貸アパートを下見し仮契約までしかけたとき
父の一言で目が覚めた
「おまえ、そんな事をしに東京へ行ったのか...」
すぐにタウンページ片手にダンススタジオを探し始めた
何件も何件も見学して回った
ようやく少しだけ道が開けてきた
週3回、仕事の後、休日、必死になって通った
ますます単独行動が増えていったが、年1回の発表会は
毎年、由希子と仲間達が観に来た
舞台後、花束をいっぱい抱えた私は、きっとキラキラして見えたはずだ
一時の優越感だった
第四章 〜 紹介 〜
入社しておよそ半年が経った頃、私の男友達を由希子に紹介した
もちろん男友達は由希子を気に入った
水族館のお土産コーナーで由希子が欲しがった白イルカのぬいぐるみを買って与えた
そのときは由希子もまんざらではないかに見えた
その時までは...
それから2.3日後だったか、急に「友達の部屋で由希子が泣いているから来て欲しい」と言われ駆けつけた
すると、「優しくしてもらったのに気持ちに応えられなくて申し訳ない」と泣いているというのである...
そんなの「付き合えないのゴメンナサイ」で済む話だろ!!
ビックリしたと言うか、呆れたと言うか...
しかし、その時はまだ、ただの純粋な子なんだと思えた
その時までは...
その後、私は夢を理由に退社した
フリーターで毎日、始発から終電まで働き詰めた
たまに由希子や仲間がアパートに遊びに来たりもした
その頃から、よくこのメンバーで合コンなどにも行くようになった
当時コンビにで手に入る出会い系の雑誌があった
私はすぐにアクセスしてみた
相手の幹事『進藤』は、偶然にも隣の駅に住んでいた為
前もって2人で打ち合わせをすることになった
約束場所に現れたのは、私のタイプとは言い難いタイプの男
酒が入りテンションはあがったものの、恋愛対象となるにはかけ離れて見えた
しかし、1人暮らしの寂しさから持ち帰り癖が出始めていた私は
とうとう進藤を持ち帰ってしまった
体を重ねても愛に発展することはなかった
合コン前日は、偶然にも私の誕生日だった
会話の中でそれを知っていた進藤は、ぶっきらぼうにケーキと花束をくれた
それでも愛に発展することはなかった
合コン当日、不思議なことに、急に進藤が愛おしく見えてきた
合コン中も進藤が気になって仕方なかった
誰にも取られたくないと思った
案の定、思ったより盛り上がらなかった合コンはあっさり終宴を迎え、私はすぐさま進藤に「一緒に帰ろう」と誘った
帰りの電車の中で、今日の合コンの話をした
どうやら、進藤は由希子を気に入ってしまったらしい
わかってはいてもショックだった
私は、それでも想いを告げた
「私は進藤さんが気になってたよ」と...
それから4年間私は進藤のセックスフレンドになった
もちろん私は進藤を愛していた
呼び出されると嬉しくて、喜んで抱かれた
進藤の部屋へと向かう真冬の凍えるような夜道で、私の体は間違いなく発熱していた
真剣に彼女になりたくて、時に駆け引きにも出たが、彼が落ちることはなかった
結局、出だしの失敗はリベンジはありえなかった
進藤にとって私は性の対象でしかありえなかったのだ
第五章 〜 過ち 〜
進藤と体を重ねた4年間、寂しさを埋めるべく
または、進藤を超える人材を見つけようと紹介・合コン・出会い系サイトなど
いろんな手を尽くした
そんなある日、働いていた店の常連客に紹介され『大林』と出会った
大林は長身で大人で整った顔立ちをしていたが、内面を表に出さないタイプの男だった
週に1度は会っていたが、毎回セックスするわけでもなく微妙な付き合いだった
ちょうどその頃、滋賀に転勤になった4年来の男友達『堀』の家に泊めてもらい3泊4日の京都女2人旅を決行した
堀とは4年の付き合いがあるが、体の関係は1度もなかった
おまけに、当時、奴には遠距離恋愛中の彼女もいた
安心しきっていた
旅の最終日、堀の男友達と計4人で飲むことになった
日本酒で酔っ払った私は早くもダウン
夜桜を見に行くはずだったが、私は1人車に残ると志願した
意識がもうろうとしていた私は、次に目が覚めたときには堀とアパートに戻ってきていた
「なんで行かなかったの?」と聞く私に、ごまかす堀...
部屋に入ると、すぐにベッドで潰れた私
テレビの前でいつまでも寝ようとしない、不自然な堀
そして帰ってこない友人達...
私が寝返りを打ったその時、いきなり堀が覆いかぶさりkissしてきた
「どうしたの?!」と聞く私に
かまわず服を脱がそうとする堀
初めて奴を男と感じた瞬間だった...
酔っ払っていたこともあり体に力が入らない
されるがままに朝を迎えた
一宿一飯の恩義なんて思ってしまった
朝方、友人も帰ってきた
乱れた私を見て、何かあったと気づいたらしい...
帰りのバスで昨夜の事をお互いに暴露した
出来上がった写真を見ながら、楽しい旅の思い出にふけっていた私に
それは訪れた
尖圭コンジローム(性病)になった為に行った産婦人科で「妊娠はしてませんか??」
と聞かれ「生理は遅れてます」と答えた私
「一応調べてみますか?」と聞かれ、急遽妊娠検査をした
結果は 陽性
この世の終わりを感じた
誰の子かわからない
大林の子か...堀の子か...
周期的に見て堀の子だろう...
かといって確信はないし、産めるわけもない...
まだ小さすぎて、すぐにはおろす事も出来ないらしい...
日に日に張っていくお腹・ひどくなるつわり
なんとも言ない罪悪感...
結局2週間後に人口妊娠中絶をした
それからと言うもの、私は何もかもが嫌になった
自分をどんどん壊したくなった
自分を大事に出来なくなって行った
出会い系サイトで知り合った男をヤリ捨てた
時に報酬をもらった
時に変体オヤジに騙されたりもした
やりきれない虚しさで涙が出た...
第六章 〜 天国と地獄 〜
ある日、東京を去った友人に会いに出かけた
ちょうどスノーボードシーズンと言うこともあり
地元の友人も誘って、山へ行くことになった
そこで出会ったのが現在の主人だ
東京では絶対に出会えない東北なまりの純朴青年だ
彼は私の真っ黒に汚れた心と体を真っ白に近づけてくれた
ようやく苦労の日々に終止符を打てると思った...
交際2年半が過ぎた頃、長年の夢にも結末を迎え東京を去る覚悟が出来た
結婚を決めた
自由奔放に過ごしてきた私は、貯金も担保無くすぐにと言うわけに行かず
それから半年間はあくせく働きお金を貯めた
その間、魔の手は着々と忍び寄っていた
由希子と出会って7年
神様のイタズラと言うべきか、因縁と言うべきか、
東京を去った私達2人は同じ土地に嫁いでしまった
男に無縁だった彼女も24歳にして初めて男を知った
初体験だ
そして、相手の子供を身ごもったが流産した
しかし、すぐにその相手と結婚した
相手の男は御曹司で、外車を乗り回しブランド物で身を固めている
言わば、由希子は人生1人目の男で玉の輿に乗ったのだ
綺麗な体のままで...
数え切れない男性経験と1度の中絶を経験し苦労を重ね、
やっとの想いで手に入れた平凡な幸せが
由希子の強運にあっさりと負けた気がして
正直、由希子の結婚の報告に神を恨んだ
この世は平等じゃないと思った
最終章 〜 勝敗 〜
由希子の旦那と私の旦那は小・中学校の同級生
したがって同じ土地に嫁いでしまった由希子と私
お互いにいつか子供が生まれた時
子供同士をも比べ戦わせてしまうのではと、一瞬でそんな先の未来まで案じた
しかし、由希子はあれから3回も流産を繰り返し
おまけに旦那の亭主関白・浮気の疑いなどに悩まされ、離婚を考え
何度も実家に帰っていると友人から聞いた
「ざまーみろ」と思った
私も実際、相談にのった事がある
心配してるフリをして離婚を勧めた
何の苦労もしてこなかった恵まれたお嬢さんに
大きなバツを付けてやりたいのだ
私が傷だらけになったように今この瞬間から...
本当にあったお話です
そして、由希子はまだ離婚せずに苦悩しているようです
あえて私からは歩み寄ったりしません
また何年か経った頃きっとこのお話に続編が加わることでしょう
その時私達2人の関係はどうなっているのでしょうか
出来ることなら苦労した分
彼女より幸せでありたい
人間として未熟な私に神はどう裁きを下すのか