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西へ

作者: 坂上 葱久


 チャウチャウちゃうんちゃうん?

 ちゃうちゃう、チャウチャウちゃう。

 ちゃうって、チャウチャウやって。


 い、異次元だ……。初めて立った西の大都市は不思議空間だった。

 まさか、同じ種、同じ肌の色、同じ言語を話す者のハズなのにここまで違うとは……。

 ホームシック5秒前。聞くのと体験するのではまったく違う。

 正直なところ、恐怖を抱いた18歳のトガり盛り。


 これでも地元の同年代の中では少しは名の通った人間だ。悪い方面で。

 そんな自分でもなんとかこうやって新境地に行く機会が出来たのは、一重に――自分のおかげだ!

 ………多分。

 そして、ここから一人で生きていくのだ! 

 ………おそらく。


 イヤイヤ、俺だぞ? 高校の時分、数多くの後輩に慕われ、先輩にはかわいがってもらい、キチンと歴史を引き継ぎ、渡した俺だぞ? 

 もしかしたら思い出は4時間半の間に相当の美化が入ったかもしれないが。

 なにを恐れることがある! むしろ、道行くこの有象無象どもが俺を畏怖するべきなのだ!

 そう考えてようやく右足が前に出た。


 大体、この街の人間は歩くのが速すぎる。なにをそんなに急ぐことがあるのか? 競歩でも流行っているのか? 有酸素運動なのか? ダイエットなのか? じゃあなんでこんなに駅と駅の間隔が短いんだ。その間を歩いたほうがよっぽどダイエットになるぞ。

 歩くだけじゃない。すれ違うスーツはみんなケータイを……ケータイなのか? 画面がむき出しじゃないか! 傷つくぞ。ともかくそのケータイらしきもので、重要っぽいことをものすごい早口で捲くし立てている。まるで怒っているかのようだ。しかし、ヘコヘコ頭を下げているところを見ると話し相手は目上のようだ。 

 

 俺の地元じゃ大切なことは口頭ではもちろん、ちゃんと書類にまとめて提出しなければならなかった。それほどそういう機会もなかったが、悪いことをした後は、口で謝り、反省文という名の拷問を受けなくてはならなかった。

 それ以外でも電話で話した後に、同じ内容のことが書かれた回覧板を渡すという徹底ぶりだ。間違うことなどあるはずもなかった。……会合のときに時間通りに集まった記憶はないが。


 あぁ! それにしても人が多い! なんだ? 今日は誰か有名人でも来るのか? 思ったよりここの人間はミーハーなんだな。しかも平日の昼間だぞ。大ファンか! 

 しかし、列を作っているようには見えない。まったく治安が悪いとはこのことを言うのか。同じ人間として恥ずかしくなってくる。

 

 俺はそういうものに興味はない。TV番組だって報道番組しか見なかったからな。

 それに、たまに有名人がコンサートをしにきたときもあったが、みんなちゃんと列を作って並んでいたぞ。もちろん俺や俺の友達も並んだ。こういうところはキッチリしたい性質なのだ。

 ……本当のことを言うと、斜向かいの頑固オヤジが仕切っていたから怖かっただけなんだけどな。

 それにしてもあのコンサートは心に染みた。なんていったかな、あの曲。たしか『兄弟なんとか』って曲だったな。荒々しくも悲しさが伝わってくる名曲だった。是非、どこかでテープを買わなければ。ここにはそういうものも売っているだろう。


 ん!?

 なんだこいつらは! 水着か!? たしかに若干暑いとはいえ、それはさっきから長い間歩いている自分だからこそ。こいつらはそんなことないだろう。

 布が、布がほとんどないぞ! やめろ! そんなことをしたら大事な部分が見えてしまうじゃないか。

肌色のほうが圧倒的に比率が高いぞ。なんてこった。俺は水着なんて持ってきてないぞ。

 イヤ、しかし……男のほうはそれほどでもないようだ。なにかダボダボした格好をしている。

 なるほど! ウチの制服のような感じなのか。こうやって学校外でも同じような格好をするところを見ると余程気に入っているようだな。ならばもっと上の服は短めのほうがいいぞ! こうシャツもアロハ柄とかのほうがもっと目立つぞ。


 イヤ~なんだかんだ言って、いいところじゃないか。少し違うところもあるけれどそれもおいおい慣れていくだろう。むしろこっちが教えてやらなくちゃな。

 お! ここだここだ。やっと見つけたぞ。賃貸の○○○。

 ………えーと、ビルの3階か。へぇ~高いところに店を構えているんだなぁ。さぞかし儲かっているんだろう。ウチのところも、ビルに住んでるヤツらは大抵金持ちだったからな。


 コンコン。

「あの~ごめんなすって~。こん間、電話さすてもらっだ~北のほうがらやってきたもんだすけんども~。マンスンの鍵さもらいにきたっべ」

さっそく二つ目です。

もしかしたら怒る人もいるかもしれませんし、そんなことはない!と言いたくなるかもしれませんが、そこはフィクションということで、何卒ご容赦ください。

割と自分の体験も含まれているので、そこは愛嬌と捉えていただけると幸いです。

また、ご意見ご感想、もしくはバッシングなどお願いします。

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