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人生は遊戯のように生きよ  作者: 天内翔


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2/29

男との出会い

カクヨムでも投稿をしています

私がそろそろ帰ろうと、荷物を片付けていたとき、黒いローブを深く被った男が近づいてきた。

 男は、紅く鮮やかな唇で微笑み、話しかけてくる。

「さっきの勝負みていたが、圧巻だった。どうだ一つ、わたしと対戦してみないか?」

男の思惑はよくわからないが、様子を見るに、おそらくまだ、受付をしていないのだろう。

「悪いが、今日はもう疲れているんだ。それに、勝負の申請を受付でしてからにしてくれ」

私は、受付のところを指差す。

「ああ、受付が必要だったのか。遠方から来たんで、よくわからなかった。では、また、明日会おう」

そう言って男は、ローブを翻し、受付に向かって行った。私は、男をとても訝しく思った。


 翌日、とても晴れた朝だった。日光がこれほどかというほど照りつける。

 日光を手で遮りながら、いつもと同じように会場に向かった。

 競技者席には、昨日の黒ローブの男が座っていた。

 私は、男の真向かいに腰掛ける。

「ああ、本当に来たのか。あんた、名前は?」

「名前? わたしは、レイ。きみに勝利するもの」

黒ローブの男は、顔を隠しているのもそうだが、身分をとても疑わしく思った。

 レイは、ニヤリと笑い、大きな声で宣言した。

「わたしがもし、このゲームで負けた場合、わたしの命をどうしようと構わない。ただし、わたしがゲームに勝った場合、わたしの言うとおりにしてもらう。どうだ?」

 バチバチと視線が交錯する。

「ああ、構わない。さあ、早く始めよう」

 このゲームでは、賭ける対象は、なんでも構わない。ただし、対戦相手の合意を原則している。だから、命だろうと、全財産だろうと構わないのだ。

 ゲームの開始の合図である鐘がカンカンと鳴った。

 レイは、迷いなく駒を進める。私もそれに倣う。

 レイがどの程度やってきたのかは、わからないが、私の今までの対戦相手から考えても、腕が立つと言えるだろう。

 レイが、急に言葉を発する。

「疑問に思ったんだが、このゲームで負けたことはあるのかい?」

「いや、一度も」

その返答を聞いて、レイは満足したように微笑んだ。

「では、わたしが、勝ったら、初めて君の戦績に初めて傷をつけられるというわけか」

独り満足している。

 今までも傲慢なやつは、たくさんいたが、ここまでのは、珍しい。再起不能になるほど叩き潰したくなった。

 私の中の炎が勢いよくこの瞬間から燃え出した。様々な戦略が頭を巡る。


——おかしい。


 さっきまでは、拮抗していた。

 だが、今は、どうすることもできない。


 まずい……。このままでは……。

 次は、ここに置こう。——まだ勝てる可能性は、残っている。

「次は、ここに置くんだろう」

レイは、わたしの考えた最適解を易々と見破った。

「……」

「ダンマリするつもりかい? まあそれがきみにとっての最善の手か」

 30分は、ゆうに超えていた。ここまで続くゲームは、初めてだ。

盤面を改めて見る。誰が見ても、あちらがリードしているのが明らかだが、どこかに、隙があるはず。

 親の仇でも探すかのように見る。


——見つけた。


 駒を進める。この男に勝つことができる。そう思ったのも束の間、レイは、すぐそれを対処してみせた。

「——えっ?」

「まさか、これが偶然生まれた隙だとは思ってないよね?」

返す言葉がなかった。

「しかし、思っていたよりも、少し発見するのが遅かったなぁ。きみが、この隙を見つけても、勝つことができないのは、わたしがあえて、この隙を作ったからさ。当然、きみがこれを見つけることも想定内。わたしは、きみを試したのさ」


 そうして、私は、私の持っているすべてを投下したのにも関わらず、敗北した。

 逃げ道は、すでになかった。

 目を瞑って、開けても結果は変わらない。わかっているはずなのに、しばらく結果を受け止められずにいた。最後に残ったのは、悔しさというより呆気なさだった。

 観客たちもどよめいていた。私が勝つと信じて疑わなかったからだ。

 レイは、立ち上がり茫然としている私を前に、手を翳した。

 観客席から一人立ち上がり、近づいてくるのが見えた。

 瞬間、凄まじい閃光が走った。何が起こったか、全くわからなかった。

 ただ、何となく、自分の命が果てていく、そんな気配がした。





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