レイチェルの怒り
「ルシアーノさん、どなたですか?」
「私はレイチェル・サンタナ。ルシアーノ様のガラス細工を、長年買わせていただいている者です」
「サンタナ家は、俺のことを若い時から目をかけてくれてな。まだ、名もないときからよくガラス細工を買ってくれているんだ」
「それは、、、ご挨拶もせず、すみません」
レイチェルが、ふふん、という目をする。
「別にあなたに謝ってほしくはなくてよ。ただのメイドなのでしょう?」
「え、えーと」
「ルシアーノ様の側に女が近寄ることなど、腹立たしいことこの上ないですが、、、まぁ、いいわ。た、だ、の、使用人なのですからね」
ティーナが黙り込む。
「で、レイチェルは何か俺に話しでも?」
とルシアーノが呟く。
「私は、、、私は、ルシアーノ様に一言申し上げに来たのです!」
「何を?」
「近頃の作風のことです!ルシアーノ様、一体どうされたのですか?このごろは、昔のような作品をお作りにならないじゃない!」
ティーナが、ルシアーノの方をちらりと見た。
ルシアーノは、小さくため息をつく。
「『氷姫』(ひょうき)シリーズに、『幻獣』シリーズを作っていたころ、、、ルシアーノ様の作品はもっと高潔で、冷たくて、美しかったわ!それなのに、どうして?
最近作られた作品は、気球を眺める動物と女の子の細工、、、そんな腑抜けた作品になってしまって、私は悲しいのです!」
レイチェルの怒鳴り声にも、ルシアーノはひるまない。
「、、、俺自身が、以前と比べて変わったんじゃないかと思う。それは、隣に大切な存在ができたからだ。だから、もう昔のような作品を作れと言われても、戻ることはできない。サンタナ家のあなたの頼みでも」
「大切な、存在、、、?」
レイチェルは、ルシアーノとティーナの左手に嵌められている指輪に気がついた。
何かを口に出そうとして、それを飲み込み、険しい表情になると、きびすを返す。
「私は、いまのルシアーノ様のことを認めるわけにはいきません」
そして、レイチェルはドアの向こうに消えていった。




