椿と渚⑤
(椿)
渚、スタンピートを防げて良かったね。
(渚)
あゝ、王都に被害が出なくて良かった。
(椿)
ふふふっ、そのおかげでこんな旅に出られるのね。
(渚)
そうだね。
それに異世界に来ての初の大仕事だったしね。
(椿)
スタンピートを防ぐと、称号や褒賞が得られるなんて、思ってもいなかったでしょう。
(渚)
いや、充分思ってたよ。
それに姉さんのこだわりが凄かった。
(椿)
初めての旅だからね。
王都を少し離れると景色が変わってくるね。
(渚)
そうだね。
(椿)
スタンピドを止めるまでが一番大変で、上手くいって良かったわ。
(渚)
姉さん、いい加減"スタンピート"で統一しようか。
もう覚えたでしょ。
(椿)
ふふふっ、"スタンピート"で良いんでしょ、渚。
(渚)
はいそうです、おっしゃる通りです……
(椿)
渚、スタンピッドを止めてから、私達は注目の的よ。
名声も得られたし。
(渚)
はいそうです。
そろそろ話題、変えませんか?(ため息)
(椿)
渚、スタンピドを止めただけで、こんなに褒美がもらえるんだから、次もスタンピドの依頼を受ければ良いと思わない?
(渚)
そんな頻繁にスタンピートが起こってどうするんですか、物騒ですよ(ため息)
(椿)
あはは、スタンピートはそう頻繁には起こらないよね。
(渚)
当たり前です(ため息)
(椿)
渚、スタンピドを防ぐのは難しいから、依頼に応じれば高額報酬が貰えるわ。
(渚)
はいそうですね。
ホント、話題を変えてください(ため息)
渚は次にどこに行こうか考えていた。
(渚)
姉さん、海沿いの街に行って海鮮料理とか、山間部に行って山の幸とか食べません?
(椿)
ふふふっ、渚はスタンレイを止めた後、そんな所でゆっくり生活を送りたいの?
(渚)
もうスタンピートの話はいいです。
見て回るなら、グルメも大事でしょ?
(椿)
渚、スタンピドを止めた褒美で旅に出たんだ、美味しいご飯を食べに行こう。
(渚)
ぬがああぁぁぁっ!もうスタンピートから離れてください!
(椿)
渚がスタンピドを止めた功績と称号と高い報酬を得られたから、次にどこに行こうか話してたのではなかったっけ?
(渚)
しばらく"スタンピート"って単語は聞きたくないです……
(椿)
ふふふっ、スタンピッドについて考えると、自然と旅に関する事が浮かぶのね。
(渚)
の”お”お”お”お”ぉぉぉっ!その単語でせっかくの旅が台無しです。
もはやここまでくれば、イジメですよ(涙目)
(椿)
渚でスタンピッドを防いだ事を思いだせば、今回の旅も充実したものになるのよ。
(渚)
ボクはもう地獄です、最悪です(半泣)
(椿)
渚がスタンピエドを止めに行った時の緊張感や興奮は、今でも堪らないの。
(渚)
もうその話いいから!何度も聞いたから、そりゃもう嫌になるぐらい(涙)
(椿)
渚、スタンピドを防いだ時の喜びを忘れる事ができないの。
(渚)
いつまで興奮してるんですか、あれから3ヶ月経ちますよ(ため息)
(椿)
渚がスタンピートを防いだ時の気持ちは今でも心に残っているわ。
(渚)
はいはい、もう分かりましたから(ため息)
(椿)
渚がスタンピッドを防いだ事は、常に心に刻んでおくわ。
(渚)
刻むだけで、もう言わないでください(泣)
(椿)
渚がスタンピッドを防いだ時の感動と栄光は、私達が得た最大の宝物よ。
(渚)
もういいです、やめてください。
(椿)
スタンピドを防いだ事は最高の傑作よ、渚。
(渚)
もうヤダああぁぁぁっ!!(号泣)
ここまでくれば、もはや執念だな、椿。
しかも、なかなか"スタンピート"と言えない椿。
早く覚えて言い間違わないようにしような。
そうこうしていると、海が見えてきた。
(渚)
姉さん、街が見えてきましたよ。
(椿)
せっかくだから、寄って行きましょう。
(渚)
海鮮料理とかあれば良いですよね。
(椿)
そうねぇ、しばらく滞在するのも良いわね。
(渚)
姉さん、あるみたいですよ、海鮮料理。
ってか、この街の名物が海鮮料理みたいです。
(椿)
美しい海辺で過ごしながら、海の幸を堪能するのも良いわね。
(渚)
では、早速食べに行きましょう。
(椿)
うん、食べ歩こう。
しばらく滞在し、海の幸を堪能した椿と渚。
(椿)
うーん、堪能したなぁ〜。
(渚)
じゃあ、今度は山間部に行って山の幸を堪能しようよ。
(椿)
ふふふっ、次は山の幸ね。
渚達は山間部の街に向かった。
(椿)
見えてきたわ。
(渚)
どんな山の幸料理があるのかな?
めっちゃ楽しみ。
(椿)
うん、期待してるわ。
色々な山の幸料理を堪能した渚達。
(渚)
海の幸も山の幸も堪能しましたね。
次、どうします?
(椿)
そうねぇ……次は内陸部の街に行きましょうか。
(渚)
そうですねぇ、そうしますか。
(椿)
では、内陸部の街へ向かって出発!
渚と椿は内陸部の街へ向かった。
色々な街を見て回るが……
(渚)
どこも同じようなものですね。
(椿)
そうねぇ、色んな街を見て回ったけど、特にこれってのは無いわね。
(渚)
どうします?国境越えてみます?
ただ、軍事国家で……とか、隣国ときな臭いとか、あまり良い話は聞きませんけど……
(椿)
うーん、国境を越えてみるのも面白いかも。
(渚)
あまり良い話は聞きませんけど、そうしてみます?
(椿)
うーん、少し不安かもしれないけどね。
(渚)
そういえば、こっちに来てから15年経つけど、老いないよね?
ちょっと調べてみる。
渚がスキル一覧を調べると……
(渚)
あっ、これか!
スキルに"不老"ってある!だから老いないんだ。
(椿)
老いない理由が分かったのね。
(渚)
うん、最初から、スキルに"不老"があったんだ。
なら、時間はいっぱいあるね。
(椿)
そうだね。
(渚)
じゃ、理由も分かったし、国境越えようか。
(椿)
そうねぇ、隣国に行きましょう。
渚と椿は隣国へ。
そこは軍事国家だった。
(渚)
姉さん、この国って軍事国家だって。
(椿)
へぇ〜、軍事国家なんだ。
(渚)
なんか少し、ものものしい雰囲気がするのは気のせいかな?
(椿)
たしかに重苦しい空気を醸し出しているように思えるわね。
(渚)
隣国ときな臭いっていう話は、この国の隣りの国だって聞いたけど……
(椿)
しかし、不吉な噂が聞こえてくるわね。
(渚)
えっ?隣りの国と更に隣りの国との間がきな臭いって話以外に?
(椿)
不穏な空気を感じます。
(渚)
どんな感じ?
(椿)
この国に来てから、体力が徐々に衰えてきた感じがしない?
(渚)
いや別に?すこぶる元気だけど……
(椿)
いえ、この国では、衰弱しているように思うわ。
(渚)
姉さんだけ感じて、ボクは感じない。
何故だろう?
(椿)
"不老"のスキルは私には無いみたいね。
(渚)
いや、同じように15年経ってるんですよ?
美魔女ですか。
今"鑑定"します。
【鑑定】
ほら、やっぱり姉さんにも"不老"スキルはあるよ?
しかも常時作動中。
(椿)
"不老"スキルがある事は分かったけど、この国では常時作動しないようだよ?
(渚)
"鑑定"では常時作動中ですよ?
(椿)
常時作動中とされているけど、身体の衰えは感じ続けているわ。
(渚)
なんでだろう?とりあえず、この国を出ましょうか。
(椿)
そうしましょう。
椿と渚は、元の国に戻った。
(渚)
どうです?姉さん。
(椿)
この国に戻ってきて、ようやく不調の症状が消えたわ。
(渚)
転移したこの国から出るなという事かもしれないね。
(椿)
そうかもね、この国に戻ってきた途端に良くなったからね。
(渚)
転移者、すなわちこの世界からしたら"異物"だから、活動範囲が制限されているのかもしれないね。
(椿)
異世界に来て、故郷とは違う土地で得た"不老"スキル。
だから得た土地でしか作動しなくなるのかもね。
(渚)
なるほどね。
でも、ボクには影響が無かったのが不思議だ。
(椿)
そうね。
でも私はあの国では"不老"スキルは作動停止するようね。
(渚)
いや、作動してたから、絶賛作動中だったから。
(椿)
渚、"不老"スキルはあの国では作動停止して、不調の原因になっていだが、渚は全然平気だったよね。
(渚)
だから、絶賛作動中だったって。
逆になぜ不調になったが不思議だよ。
(椿)
私が作動停止になったのは、私が異物として扱われたからかもしれない……
(渚)
それならボクも異物だよ。
それに何度も言うけど、姉さんの"不老"スキルは作動してたからね。
(椿)
"不老"スキルが不調だったのは、異世界からの来訪者として排斥されたかもしれない。
だから、私自身が原因かも。
(渚)
じゃあ、同じ異世界からの来訪者だけど、ボクは排斥されなかったと?
(椿)
あの国では、"不老"スキルが作動してても、無効だったかもしれない。
(渚)
よく分からん。
(椿)
異世界からの来訪者である私自身が原因だったとしても?
(渚)
同じ来訪者だけど、扱いが違うと?
(椿)
私が来訪者だから、排斥されたからとすれば。
(渚)
いずれボクも排斥されると。
(椿)
いえ、それは私自身の問題でしょう?
(渚)
ボクは来訪者として扱われてない?
(椿)
で、私は異物として扱われたからかもしれない。
(渚)
なんでだろ?
(椿)
原因は不明で、分からない事だらけです。
(渚)
なら、無理して他の国に行かずに、この国に居ましょう。
(椿)
そうねぇ、"不老"スキルが作動するこの国に身をおけば良いわね。
この国で生活しようと思うけど、何か反対意見はあるかな?
(渚)
全く無いよ。
この国で楽しく過ごそうよ。
(椿)
なら、そうしましょう。
こうして椿と渚は、この国で楽しく過ごすのであった。
(椿)
やはりこの国でのみ作動だね。
(渚)
うーん、やっぱりそんな感じだね。
(椿)
じゃ、この国で居ると、この先安泰だね。
(渚)
そうだね。
(椿)
なら、将来の事を考えて、この際結婚するのはどう?
(渚)
そうだね……えっ?結婚!
(椿)
この国で過ごすのは良い事だけど、将来の事を考えると問題となるのはこの国で子孫を残す事ができるかどうかよ。
(渚)
ま、まぁそうだけど……ボクで良いの?
(椿)
将来の事を考える上で、問題になるのは子孫繁栄。
相手として弟みたいな渚を選ぶ事にしたんだけど。
(渚)
そっか……ありがとう、なら結婚して。
椿と渚はこの国で暮らし、子孫繁栄を願い結婚をした。
(渚)
姉さん♡
(椿)
ふふふっ♡
椿と渚は仲睦まじく過ごしていた。
数年後、長男が生まれる。
しかし、十数年後のある日、椿に急激な変化が起こる。
突然として老化が始まったのだ。
急速に老化していった自分に戸惑う椿。
急に老い始めた自分を目の当たりにした椿は困惑するも、真実を見極める決心をした。
原因を究明する事に挑んだ椿は、自己鑑定により真実を知り、深い後悔に打ちひしがれた。
子孫繁栄を成す為に結ばれてから十数年、椿は種族属性が変質している事が分かった。
(渚)
種族属性が変わり、異世界からの来訪者と認められなくなったから、"不老"スキルが無効になったと……
自己鑑定の結果は不吉なものだった。
(渚)
なら、ボクもそうなる時が来るんじゃない?
残りの人生、幸せに暮らそうよ。
急速に老化していき、このままでは早晩、死に至る事を悟った椿は、最大の失敗について反省をした。
(渚)
大丈夫、ボクの魔法に"若返り"というのがあった。
老衰で亡くなる前にしか使えないけど、それを使えば最盛期の状態まで若返らせる事が出来る。
だから心配しないで、必ず若返らせるから。
椿は最期を前に、今更ながら後悔が押し寄せてきていたが……
(渚)
じゃ、若返らせるね。
【リジュヴェネイト】
最期を前にした椿に、渚の魔法が炸裂し、"リジュヴェネイト"の効果で椿は"不老"の肉体を取り戻した。
椿は後悔の念から解き放たれる。
最期の時に至ったところで、渚の魔法で奇跡が起こった。
(渚)
これからもよろしくね。
もっと幸せになろうね、姉さん。
そして渚と椿は末永く幸せに暮らしていくのであった。