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バレたら火炙り!?宮廷魔法師とエスパー少女の『偽魔法』師弟生活!  作者: 天海二色
第一章 宮廷魔法師クラウディオ、クロししょーになる
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第二話 まともな奴が一人もいねぇっ!

 次に応接室に入ってきた弟子候補は、カブスボタンとかタイリングとか指輪とかに宝石くっつけた、何かごてごて着飾った少年だった。

 いかにも成り金って感じだな。


「アルノー・デュ・ヴァンです! 僕は魔道具商会の跡継ぎでして! 正直、僕自身の魔力はあまりないのですが、魔道具で魔法師にも負けない魔法を扱えます!」

「へぇ、魔道具か」


 俺はそんなに魔道具に詳しくないが、興味はある。足りない所を道具で補う、ってのは可能性の幅を広げられるってことだからな。

 魔法研究のテーマにも使えそうだし、商会とパイプが繋がるのもいい。ちょっと話を聞いてみるか。


「魔道具は持ってきてるか? 実際に使ってるとこ、見てみてぇんだけど」

「はい! ではまずこちらのステッキなんですが、ファイア・ランプが使えます!」

「おぉ、便利だな」

「次にこちらのポットはウォーター・シャワーを出せます!」

「出先でも水を確保できると」

「この扇子はウィンドウ・ブレスが! この土人形はミニ・ゴーレムが! この孫の手はサンダー・ショックが!」

「……ちょっ、待て待て! どんだけ魔道具持ち込んでんだ!」


 しかも全部、生活魔法の類だ。俺の仕事はエルデラン王国の防衛だし、魔法研究もそれ関連だ。だから戦闘に使えないものを出されても困る。

 が、俺が止めても、成り金少年は鞄の中から次から次へと魔道具を出してくる。何でだよ。


「この中の一つでも気に入るものがあればと思いまして!」

「手土産のつもりだったのか? 悪いが俺は生活系の魔道具を使う予定は……」

「宮廷魔法師さまに使って頂ければ商会の名が広がりますし! 是非お一つどうですか!」

「広告目的かよ! 帰れっ!!」


 成り金少年を追い出した後、俺はテーブルに置いていたコップの水を一気に飲み干した。

 叫んで焼けた喉は潤ったが、苛立ちは全く収まらねぇ。


(面接ってこの調子で続くのか? 勘弁して欲しいんだが?)


 次に応接室に入ってきたのは眼鏡をかけたおかっぱ頭の、ええと、学級委員長だっけか? 理屈屋タイプを指して言うやつ。そんな肩書きが似合いそうな女だった。

 彼女は名乗るよりも先に、大臣に向かってぺこりと頭を下げる。


「グレゴリー大臣、ご無沙汰しております。父がいつもお世話になっております」

「おぉ、よく来たな」

「何だ、知り合いか?」


 俺が大臣に訊ねると、眼鏡の女は片眉を潜め、露骨に不機嫌な表情を浮かべた。

 そんで、あからさま呆れた様子で口を開く。


「私は魔法省研究局の局長の娘です。そんな事も知らないなんて……」

「はぁ? 局長の娘ったって、魔法省の人間じゃないなら部外者だろ」

「これ、クラウディオ」

「……はぁ、まぁいいです」


 そこで眼鏡の女は持っていたハンドバッグを開けると、そこから一枚の書類を取り出してテーブルの上に置いた。

 契約書だ。そこには俺と師弟関係を結ぶにあたっての規約とか、俺に支払う報酬金とかが書かれている。が、それだけに留まらず、俺の研究内容への口出しや行動の制限、定期報告の義務なんて項目も並んでいる。

 これじゃ「監視させろ」って言ってるようなもんだ。


「ここにサインを。貴方が宮廷魔法師に相応しい人間か、弟子として見定めてあげます」

「……あ? 見定めてあげます?」


 俺は指先で紙っぺらをトンと突き、女をじろりと睨む。


「お前、何様のつもりだ」

「何様って、私は魔法省研究局局長の……っ!」

「知らないのなら教えてやる。俺はここにおわす魔法省トップ、グレゴリー大臣の直属の部下。つまり魔法省ナンバーツーだ。お前の父親より、上の立場なんだよ」


 そんな事も知らないなんて。

 って、俺が付け加えると、彼女は顔を真っ赤にして唇を噛んだ。

 だが眼鏡の奥の目は、なお俺をじっと見据えてくる。反省するでもなく、引くでもなく。ただ、認めないとでも言いたげな目だ。


「……貴方のような粗暴な人物が、本当に国防を担えるのか。王国の為にも私は、」

「見定めてあげる? そりゃありがてぇ。じゃあ俺からも、見定めた結果教えてやるよ。――不合格だ。帰れ」


 そのまま畳み掛けるように合否を突き付ければ、彼女は言葉を失い、しばらく立ち尽くしていた。

 だが最後には契約書を乱暴に引っ込めると、唇を噛んだまま部屋を出て行く。


(高尚ぶった言い回ししてたが、本音は俺の粗探しして宮廷から追い出したいってだけだろ。露骨なんだよ)


 その後も、弟子候補との面接は続く。

 『宮廷魔法師の弟子』っていう肩書き欲しさで来た資産家の三男坊とか、『平民と手を取り合って魔法に打ち込む、慈愛に満ちた私』を演出したいだけの公爵令嬢とか、俺の研究費をちょろまかしたいのが見え見えの魔法学者とか……。

 全員面接をして、全員帰らせて、俺は頭を抱える。

 ――まともな奴が一人もいねぇっ!


「もっとこう……謙虚で、普通で、ちゃんと話せる奴いねえのか!?」

「みな貴族か中流階級の子息だからのう。プライドが高いのじゃ」

「くそっ! あいつら俺がスラム出だからって舐めてんだ。大臣、もっと下流の平民を紹介しろよ! 魔法省や学園を探せば、一人ぐらいいるだろ!?」

「残念じゃが、魔力を持っている者のほとんどは貴族でな。あとは中流階級にちらほらおる程度で、おぬしの望む平民はおらん」

「ちきしょーーっ!!」


 応接室に俺の絶叫が虚しくこだまする。

 だが大臣は追い討ちをかけるように、「俺が弟子を取るまで弟子候補を用意し続ける」、って言ってきやがった。何十人だろうと何百人だろうと、ってな。

 俺に人脈の力を見せ付けようって魂胆か? 実践で学ばせてくれるなんてお優しいな、クソが!


 こうなりゃ、自力で弟子を見付けてやる!!

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