私にできることって?
数日前、親と言い合いになりまして。お互いに溜めていたものがあったのです。仕事や日常、そしてお互いの体や心の衰えについて。
その日は聞き合う余裕がなく喧嘩してしまいました。翌日看護師さんに相談してみると、「どこの家庭もそうよ」と言ってくれました。
そっか。親が何度も同じ話をしたり愚痴を言ったり、私のことや自分の将来について悲観的になるのはどこの家庭でも同じなのか、と心が軽くなりました。
昨日、仲直りのハッシュドビーフを作りました。奮発して牛肩ロース120gを買いました。赤ちゃんの頭ほど大きい新玉ねぎと、大ぶりのエリンギも。
私はストレートに謝るのが苦手なのです。「やぁ、お仕事お疲れ様です。ハッシュドビーフ食べる?」とメールを送りました。
しばらく待っていると、
『楽しみにしてる!』
と、返信があり嬉しくなりました。親の帰宅に合わせてハッシュドビーフを作ります。ルーがあれば、フライパンひとつで出来てしまうのが良いですね。作るのが楽です。
早く出来たので、何度か温め直し、玄関前を確認していました。杖の音がするのを待っていたのです。
────がちゃり。
3度目の温め時に玄関に杖がかけられる音がしました。心臓バクバクです。そんな気持ちを知ってか知らずか、入ってきた親が開口一番、
「いいにおい〜♪」
とご機嫌で言ってくれました。
仲直りのハッシュドビーフ。
お米を沢山よそい、ルーをこんもりかけて食べました。牛肉はほろろ、玉ねぎは甘く柔らか、エリンギは食べ応えがあり美味しかったです。
そこから反省会が始まりました。
「この前はごめんね」
やっと言えた!
親も私も、仲直り成功です!
これからは、お互いのことをよく知ろう。愚痴も世間話も、たくさんたくさん聞き合うぞ!
喧嘩した
素直になれない私の気持ち
ハッシュドビーフに籠めて
温めながら待ってる
親の杖の音がするのを待っている
「いいにおい〜♪」
帰ってきた親が言う
米をよそう私は含み笑い
今日はいっぱい食べようね
牛肉ほろろ綻んで
玉ねぎ甘く柔らか笑顔になるね
エリンギぎゅむっと愚痴噛み締めて
短めの反省会
『ごめんね』
やっと言えた言葉
仲直りの味
あの日のハッシュドビーフの味




