まろやか色の風
喘息のせいで外に出られなくなってしまいました。かといって家もしばらく換気しておらず。この際なので、窓を一つ開けました。
空気変わりました。
まろやかな風が部屋の中に侵入して来ます。なぜだか喉がスッとしたのです。
(これ、やっぱりハウスダストか何かか!?)
陽性後に気管支が狭まりホコリたちに敏感な喉に成ってしまったのだとしたら……、
半分自業自得だぞ……!
これから大変だ。清潔を保つのが何より大変なのに。
でも、換気された部屋で、ベッドに座りゆっくり本を読む時間も、悪くないね。病気でも何でも、ホッとする時間は少なからずある。
祈ってばかりでは苦しくつらい。病人も支える人たちも、周囲の人たちも。
だから医療は発達したのだろうな。
医療は、科学と祈りとホッとする時間への執念が籠められた技術なのだろうな、と。温かいココアを飲みながら思う。
病人には病人の生き方がある。その中で楽しみを見つけるのも良いな。どんな生き方がこれから待っているのだろう。
後悔はしない。今までの私を否定することになるからね。
十年以上封印されてた寝室
換気で入れ替わる心のカビ
風がまろやか色だ
そっとやってきて、
「何読んでるの?」
と訊いてくる
敢えて答えはしない
風は入れ替わり立ち代わり部屋を駆け回る
思い出す
爺ちゃん家に預けられた時の
学校のチャイムの音を
やること無いからでんぐり返ししてた
毎回行くとコンビーフが隠されている
いつも同じ、押し入れの1段目の中……、
思い出に本の内容が押されてしまった
そろそろ窓を閉めよう
首が凝ってきた
リビングのココアをこくりと
望んだわけじゃないけど
こういう生き方も有りなんだ




