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悪女なのでヒロインのふりをして、夫と不倫します!!  作者: 夕立悠理


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20 あなたなら

 ーーユーリンのお店の前についた。

 窓から見える限りでは、今日もユーリンのお店は、人気がないように見える。

(……その方が、ゆっくりできて好都合ではあるけれど)


「あれ、エステルちゃん?」


 窓の近くで様子を伺っていると、扉が開けられた。

 出てきたのは、もちろんユーリンだ。


「今日も来てくれたんだ! もしかして、僕の料理のファンになっちゃった?」


 嬉しそうに笑ったユーリンは、どうぞと私を店内に入れてくれた。


「いやぁ、嬉しいな! 今日もお客さんが全く来なくてさぁ、僕ってば商才ないのかもとショックだったんだよねー」


 そう言いながら、一番広い席に通される。

「あなたの料理はとても美味しいわ」

「でしょ? 僕ってば、料理の天才だからね」


 ユーリンが得意げに頷く。

 実際、昨日食べた料理も美味しかった。

 それなのに、ここまでお客さんがいないのはーー。

(……でも、たしかに商才はないのかも)


 店内の雰囲気も悪くなく、価格も釣り上げすぎているわけでもなく、店主が特別くせがあるふうでもない。


 料理の腕も素晴らしい。


 それでも、食べてもらえなければ、そのおいしさも知られるはずもない。

(もっと宣伝に力を入れれば、お客さんが増えそうなのに……もったいないわ)


「今日は、何にする?」


 見せてくれたメニューを眺めていると、気になるものを見つけた。


「この、『激辛!痺れる辛さにめろめろメニュー!勇姿を恋人に見せよう!!』……なんて、昨日までなかった、わよね?」


 私が記憶する限りでは、魚のソテーとか、鶏肉のシチュー煮込みだとか、一般的なメニューしかなかった。


「おおっ! ……さすが、エステルちゃん。お目が高いなぁ!!」


 ユーリンはキラキラと目を輝かせて、ずいっと身を乗り出した。

「そうだよ、これは今日からの新メニュー。僕のお店が人気がないのは遊び心がないからかなと思ってさ」

「ーーいえ、宣伝不足だと思うわ」


(そうなの、面白い試みね)


「……え? 宣伝?」

「!!」


(思ったことと言うべきことが反対になってしまったわ)


「あの、ごめんなさい。失礼なことを……」

「いや、ううん。ーーたしかにエステルちゃんの言う通りかも」


 うーんと首を傾げ、ユーリンは勝手に私の向かいの椅子に座った。

「でも、宣伝って難しいよねぇ。客引きでさえ、来てくれたのはエステルちゃんだけだし……」


 僕みたいな美男子でもだめなわけだもんなぁ……とぼやきながら、頬杖をつく。


 たしかに、ユーリンの顔は一般的に見て整っている。少しクセのある銀の髪にアーモンド型の新緑の瞳。


(……もちろん、私にとってはジークハルト殿下が一番で唯一だけどーー)


「あ、そうか! そうだよ!!」


 ユーリンは急に立ち上がり、私を見つめた。


「美男子でもだめなら、美少女ならいけるかも!」

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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