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悪女なのでヒロインのふりをして、夫と不倫します!!  作者: 夕立悠理


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13 嫉妬心



 ーーユーリンのお店に着いた。

 扉を開けると、ユーリンと目があう。

「いらっしゃいませ」

 ユーリンは穏やかに微笑むと、礼をした。

「2名様ですね」

 ユーリンが案内してくれたのは、窓際の大きなテーブル席だった。

 花が飾られた花瓶もある、とってもいい席だ。


(でも、今日も……お客さんは私たちだけみたい)


 昨日食べた料理も美味しかった。

 それなのになぜか、ほかに客は見られない。


(まあ、そのほうが、ゆっくり話せるからいいわね)


「ご注文は、何になさいますか?」



 ユーリンが運んでくれたメニューから料理を選んだ後、雑談する。


「エステル、君はこのお店によく来るのか?」

 ジークハルト殿下は金の瞳を細めて、こちらを見つめている。

 なんと答えるのが正解だろうか。

 3番街の「エステル」ならこのお店に何度も通っていても不思議ではないけれど。


「いえ、実は2回目なのです」

 正直にそう言って、微笑む。

 なぜならーー。

(嘘をつかなくていいことは、つきたくないわ)


 ただでさえ、この姿そのものが偽りなのだ。

 ずっと、嘘をつき続けるのは、疲れるし、ボロがでる。

 それに……。

(エステルなら、きっと、そう言うわ)


 主人公たるエステルが私と同じ境遇になるのは、全くもってあり得ないけれど。

 もし、エステルなら、必要ない嘘はつかない。


「そうなのか、いい店だな」

 ジークハルト殿下が、花瓶の花を見て微笑む。

 今日は、紫の花が生けられていた。


「はい。初めてきた時に気に入って、ぜひハルト様と一緒にと思ったのです」

 初めてきたのは、昨日、ということは伏せておく。


「! ……そうなのか」

 ジークハルト殿下は、少し照れたように目を逸らした。

(……あぁ。どうしてーー)


 こんな言葉、エステルじゃなくても、あなたなら言われ慣れているでしょうに。

(それなのに、どうして……)


 なぜ、ジークハルト殿下はこんなにも、さまざまな表情をエステルの前で見せるのだろう。

「……」


 醜い嫉妬心が湧き上がり、思わず、口元を手で抑える。

「エステル?」

「!」

 ジークハルト殿下が、不思議そうに私を見つめた。

(……そうだわ。それでいいのよ)


 今や、私がエステルだ。

 本物エステルがどこにいるのかわからないけれど。

 今のジークハルト殿下にとっての「エステル」は私なのだから。


「いいえ! ……実は少し寝不足で」

 これは、本当だ。

 ジークハルト殿下とのデートについて考えていたら、あまりよく眠れなかった。

「ああ、そうだったんだな」

「はい」

(ここで、エステルならーー)

「ーー楽しみだったので」

 そう言って、はにかむ。


「!!」


 ジークハルト殿下の目が見開かれた。

「……そうか」

 頷くと、ジークハルト殿下はゆっくりと微笑む。

「実は、私も……今日を楽しみにしていたんだ」

(どうして……ハンカチを拾ったお礼をするだけの初対面の女なのに)


 本来の私とジークハルト殿下との間には、初夜もなければ、会話もない。


 理由は、仕事が忙しいからだ。

 ーーでも。

(そんな忙しい仕事を片付けて、エステルには会いに来るのね)


 

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