45 新生竜王と約束
離宮を出て、竜族一行は宮殿の広間に案内された。
ミランダはガレナ王と別れの挨拶をするのだと思っていたが、広間に到着して開いた扉の奥を見て、目を見開いた。
そこには、カシュカが大人たちに囲まれて立っていた。
出会った頃と違って男の子の格好をして、凛としている。ハッキリとした目鼻立ちの可愛い女の子は、美少年へと変化していた。
「竜王様! このたびは慈悲深い恩赦をありがとうございました!」
カシュカは深々と礼をして、そのまま頭を下げ続けている。
ミランダは思わず駆け寄った。
「カシュカさん! お怪我はもう大丈夫なのですか!?」
あれだけの大怪我を負っていたカシュカは包帯もしていなかった。
「はい。竜王様の治癒のおかげで……信じられないことに、ほんの数日で傷跡までなくなりました。今は痛みも何もありません」
ミランダは安堵すると同時に、改めて竜王の血の効力に驚いた。シダのように大金を払ってまで求める意味を思い知らされる。
カシュカは礼の姿勢のまま、ミランダを見上げた。
「奥様には大変なご迷惑をお掛けしました。僕は誘拐なんて大それたた罪を犯してしまって……どうかお許しください」
震えて謝るカシュカの肩に触れて、ミランダは身体を起こさせた。
「大丈夫。私は傷ひとつ負っていませんから。カシュカさんが置かれていた状況を理解していますよ」
「僕は……反体制組織の私欲に染まった思想をすべて信じ込んで……何も知らずに愚かでした」
涙を流すカシュカの背中をミランダは親身に摩っていたが、ルシアンが間に割って入り、カシュカは慌てて見上げた。
「りゅ、竜王様」
「子どもは何も知らないのが当たり前だ。これから学ぶのだからな。お前には罰として俺の面倒を見てもらう。俺が王国を訪ねる時、必ず元気な姿を見せるのだ。いいな?」
傲慢な口ぶりだが内容はまるで親戚のお兄さんのようで、カシュカは何度も頷きながら号泣していた。
カシュカの後ろで傍観していたガレナ王は咳払いをして前に出た。
「カシュカよ。こうして新生竜王が我が国と友好を結んだからには、隣国も侵略を諦めるだろう。このように周辺国に大々的に知らせるからの」
ガレナ王が誇らしげに翳した御布令の紙を、ミランダとアルルは凝視した。
新生竜王がガレナ王と友好を結んで握手している絵が大きく描かれているが、竜王が巨大な黒竜として描かれているのだ。
「えっ、りゅ、竜王様が竜になってますが……」
思わず指摘したミランダに、ルシアンは呆れて答えた。
「竜王はいつだって巨大な竜として描かれる。その方がインパクトがあるからな」
ミランダの出身国であるベリル王国の教科書にも、このような怪物のような竜の姿で竜王が描かれていた理由がわかった。本人に会ったことがなければ、誰もが竜王は恐ろしい竜であると信じてしまうだろう。
アルルは子どもらしい素直な感想を漏らした。
「すっごい目つきが悪くて、歯がいっぱいあるのが怖いですねぇ」
確かに、竜の森のどの竜よりも凶悪な顔だった。
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