表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/104

40 緊張の夜は再び…

 ルシアンとアルルが湯から上がり、リビングには豪華な夕食が運ばれてきた。

 今日は踊りも演奏もなく落ち着いた食事の席だが、ミランダにとっては心安らぐ時間となった。


 いつも竜王城では対面で食事をするルシアンとの距離も、ピタリと隣にくっついているし、プルートもミランダの膝の上で寛いで寝転がっている。反対側の隣にはアルルがいて、楽しそうに料理を食べている。


 ミランダは心がジンとして、思わず呟いた。


「家族って……いいですね」


 その言葉にアルルがパッと顔を上げて、ルシアンもこちらを向いたので、ミランダは思わぬ注目に赤面した。


「えっと、竜族の……その、竜王城のいつものメンバーというか……」


 口籠るミランダに、ルシアンは応えた。


「うむ。家族で囲む食卓はいいな」

「はい! 僕も家族と食べるご飯が好きです」

「ウム~!」


 続けてアルルとプルートにも援護してもらって、ミランダは嬉しさがこみ上げた。と同時に、涙が溢れていた。


「カシュカさんは……ご家族も拠り所も失って、寂しい思いをしないでしょうか」


 ルシアンはそっとミランダの肩を抱き寄せた。


「大丈夫だ。ガレナ王は熱りが冷めた後、宮殿で引き続きカシュカの面倒を見ると約束してくれた。俺もガレナ王国を訪れて様子を見るし、それにいつだって、こうして家族で旅行できるのだから。ミランダもまたカシュカに会えるぞ」


 ミランダはルシアンを見上げて瞳を輝かせた。


「新婚旅行の次は家族旅行に? 本当ですか?」

「ああ。ミランダが望むなら、ガレナ王国でもどこへでも。いつでも連れていくよ」

「ルシアン様……嬉しいです」


 二人が寄り添うのを横目に、アルルは次なる旅行の希望に舞い上がって、飛んで来たプルートとハイタッチをした。



 ♢♢♢



 穏やかで温かな夕食の時間を終えて。


 ミランダは再び、緊張の夜を迎えていた。


 アルルがプルートを連れて「おやすみなさい」と自分の寝室に向かった後で。ルシアンとミランダはまた、あのムード満点の寝室の入り口に佇んでいるからだ。


 妖しいほどに美しいランプの灯りに、天蓋の透明なベール。散らされた花々とお香の煙……。


 ゴクリ。


 昨晩のルシアンの嵐の如く情熱的なキスと抱擁を思い出して、ミランダは思わず生唾を飲み込んだ。はしたないと恥じ入りつつも、鼓動は躍るように勝手に跳ねている。


 柔らかな月光に包まれた庭に目をやると、昨晩のような風は吹いていなかった。静かな寝室は布擦れの音さえ大きく響く気がして、ミランダはその場で動けないまま硬直していた。


「ミランダ」


 ルシアンの落ち着いたバリトンの呼び声に、ミランダは不自然に勢いのある反応をしてしまう。


「は、はいっっ」

「今日は疲れただろう。ゆっくり休むんだ」


 見上げるとルシアンは優しく微笑んでいて、昨晩のような情熱はそこになかった。


「ル、ルシアン様こそ……お疲れですから、今日はちゃんとベッドでお休みなさってください」


 労いの発言が図らずともベッドに誘う文句になっていて、ミランダは赤面した。


 そんな慌ただしい反応のミランダの手をルシアンは握って、キングサイズのベッドの横に誘導した。

 布団をめくってもらってミランダは素直にベッドに上がると、ルシアンはそっと布団を掛けてくれる。

 ミランダは不安になってルシアンの寝衣の袖を摘んだ。このままリビングに行ってしまいそうな雰囲気だ。


「あ、あの、ベッドでちゃんと……」

「ミランダの隣で眠ってもいいか?」

「えっ、も、勿論です!」


 上擦った大声の返事と同時に、ミランダの鼓動はまた躍り出していた。

第2巻発売を記念して、毎日更新中!あと10話で完結です!

「生贄にされた私を花嫁が来た!と竜王様が勘違いしています」2巻電子書籍をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] いよいよ、あと10話ですか!(ちょっと、寂しい気も··) でも、毎話ドキドキしながら見てます。 ラストスパート、無理せず完走してくださいね〜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ