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24 乙女の緊急事態

 桃のようなオレンジのような艶やかな果物は、マンゴーという南の島のものらしい。純白の冷たいミルクはココナッツという、これまた南の果物らしく。

 ココナッツミルクに果物や木の実を和えたスイーツを、ミランダは満面の笑みで食べた。


「食べたことのない味がいっぱい……なんて美味しいのでしょう!」


 さらにカシュカからBBQのような串を受け取った。カラフルなフルーツが串刺しになっている。

 ミランダはジューシーなメロンやスイカを頬張った。スカーフを被っているとはいえ、強い日差しで渇く喉を甘い果汁が潤してくれる。


「これも。これも美味しいですわ! ねぇ、ルシアン様!」


 自分が食べた物をルシアンにも知らせるように渡していたが、ルシアンは途中で心配そうにスイーツの山を見渡した。


「ミランダ。お腹は大丈夫なのか?」

「はい。美味しいので、お腹いっぱいでも食べられてしまいます!」


 見当違いの答えに苦笑いするルシアンに、カシュカは温かいお茶を差し出した。


「竜王様もどうぞ。ジャスミン茶で冷えたお腹を温めてくださいね」

「ありがとう」


 兵士たちにもお茶が配られて一息ついている間に、スイーツを完食したミランダの興味は織物屋に移っていた。


「見てください、ルシアン様! あんなに沢山の種類の綺麗な織物が!」


 市場の中でもとりわけ大きな敷地に設営された織物屋には、花畑のように色とりどりの布が広げられていた。どれも美しい模様が施されていて、ミランダは目を輝かせた。


「素敵。これも素敵! ねえルシアン様。この布をエリオさんのお店に持ち込んでクレアさんに仕立ててもらったら、すごく素敵なドレスができると思いませんか」

「ああ。そうだな。好きな布を選んでごらん。持ち帰って仕立てに出そう」

「どの模様にどんなお祈りの意味があるのか、お店の方に伺ってみますわ」


 ミランダは布を体に当てたり、頭に被ったり、ルシアンの肩に掛けてみたりして、店主と相談しながら大量の布を買い込んだ。


 しかし元気に彼方此方と飛び回っていたミランダは、途中からだんだんと足取りが重くなっていた。


「ミランダ? どうしたんだ? 疲れたのか?」

「え、ええ。ちょっと……」


 顔色が悪くなったミランダを心配して、ルシアンは背中を摩った。

 その様子を見てカシュカが駆け寄って来たので、ミランダはカシュカに耳打ちをした。カシュカは頷いてルシアンを見上げた。


「あの、竜王様。奥様はちょっとお手洗いに行かれますので」


 ルシアンは懸念していたお腹の具合の悪さに慌てた。


「大丈夫か!? お腹が痛いのか!?」


「だ、大丈夫ですわ。ちょっと冷たいものを飲みすぎただけで……」


 気丈に笑顔を見せるミランダを、カシュカは優しく誘導した。


「奥様。この市場に一番近いホテルで、綺麗なお化粧室を確保していますのでそちらに行きましょう」

「カシュカさん、助かるわ」


 カシュカに連れられてミランダとルシアン、アルルは近場のホテルに向かった。兵士たちも馬車を移動してホテル前に止まり、二名の兵士が同行した。


 建物は古いが立派なホテルで、ロビーを抜けた奥にお手洗いがあった。ルシアンもアルルも兵士たちもカシュカとミランダの後を付いて行ったが、途中でミランダは振り返った。


「あの、お手洗いの外でお待ちいただけますか? 男性が入ったら他の方が驚いてしまいますので」


 男性陣は我に返って、お手洗いのすぐ近くのベンチに戻った。


 ルシアンが心配そうに振り返ったので、ミランダは「大丈夫」の笑顔で手を振り、カシュカと一緒に化粧室に入った。

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