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22 爽やかに照れる朝

 太陽が昇ると、あれだけムード満点に盛られた宮も、爽やかな明るい朝を迎えた。

 嵐の夜とはうって変わって穏やかに鳥が囀り、若葉が朝露で輝いている。


「おはようございまーす!」

「ウムー!」


 アルルとプルートが元気にリビングに入って来ると、ルシアンは既に起きていてお茶を飲んでいた。


「ルシアン様。お早い朝ですね」

「うむ。おはよう」

「昨晩は凄い嵐でした! プルートが怯えちゃって……あれ?」


 アルルはルシアンの顔を覗き込んだ。


「ルシアン様? 目が赤いですが……もしかして寝不足ですか?」

「ああ。その……観光が楽しみで眠れなかった」

「あはは! 子どもみたいです!」


 侍女たちもニコニコと笑う中、ミランダが起きて来た。


「お、おはようございます!」


 慌てた様子で髪が跳ねたままなので、湯番の侍女たちが浴室に案内した。


「朝の入浴は如何ですか? 果物の香りの湯をご用意していますよ」

「嬉しいわ。ありがとうございます」


 ミランダが盗み見るようにルシアンを窺うと、ルシアンもこちらに向けて照れたような笑顔を見せた。

 秘密を共有しているみたいにドキドキして、ミランダは何もなかった夜がかえって二人の関係を深めたような気がした。



 朝食を終えると、カシュカが観光の準備をしてくれた。

 地図を広げてミランダとアルルのリクエストを汲みながら、観光の予定を立ててくれる。


「僕、市場に行ってみたいです! ガレナ王国の市場には各地の職人や商人が集まって、掘り出し物がいっぱいあるって!」


 アルルは本を取り出して断言した。


「〝異国の竜の物語〟にも書いてありました!」


 ミランダも手を挙げて賛同した。


「それに珍しい食べ物の屋台も集まっているって書いてあったわ!」


 カシュカは地図を指しながら頷いた。


「私もお勧めしようと思ってました! 城下町の市場はガレナ王国の名物ですからね。竜王様はどこか見たい場所はありますか?」


 カシュカの質問にルシアンは首を振った。


「いや。俺は花嫁とアルルが楽しければ何でもいい」


 カシュカは侍女が持ってきた美しい縁取りの刺繍が施されたスカーフをルシアンに渡した。


「こちらのスカーフをご利用ください。ガレナの日中の日差しはとても強いので」


 言われた通り頭から被ると自然とルシアンの角は隠れて、刺繍に綾取られた端整な顔は高貴な雰囲気を醸し出していた。


 アルルもスカーフを被りながら、本の挿絵を開いてルシアンに見せた。


「ルシアン様! ますます本の主人公にそっくりです」


 ミランダも鮮やかな色のスカーフを受け取って被った。

 アルルの言う通り、本当に物語の登場人物になった気持ちになって、ワクワクが大きくなっていた。



 竜族一行は離宮の前で待つ馬車に向かったが、そこには黄金の塊のような豪華な馬車が待ち、その周りを武装した兵士たちが護衛していた。あまりの絢爛さにミランダは仰け反った。


「まるで王族のお出かけだわ」


 カシュカは胸を張って馬車へ誘導した。


「ガレナ王から丁重におもてなしするよう、仰せつかっております!」


 馬車には竜族一行と通訳のカシュカが同乗して出発した。

 城下町を走る馬車の中で、カシュカは丁寧に歴史的建築物を説明してくれる。


 アルルは膝の上で本を開いて、照らし合わせながら町を眺めた。


「挿絵と同じです! ほら! ガレナ王国がモデルというより、そのままですよね」


 ミランダも興味深く見比べた。


「本当ね。作者の人はガレナの町で暮らしながら物語を書いたのかしら」


 カシュカは誇らしげに頷いた。


「ガレナの神話に基づいて書かれていますし、きっとガレナ王国の国民に違いありません。神話に描かれたガレナの地に眠る竜も本当にいるはずです!」


 昨日ルシアンに否定された神話を、カシュカは諦めずに信じているようだ。ミランダもそうであってほしいと願いながら何度も頷いた。

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