表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/104

05 怪鳥の巨大卵

 ガタン、バタンと一日中、竜王は片付けに励んでいました。キッチンが広くなって、応接間も何とかスペースができてきたようです。


 埃だらけの部屋をふたりで掃除すると、竜王はテーブルに本を広げました。


「文字は読めるのか?」


 竜王の質問に僕はキョトンとしました。


「読めるし、書けますよ。何なら外国語も少しできますよ」

「えっ? お前……小さいのに凄いな」

「僕は公爵家で天才児と言われてましたからね。文章を記憶するのが得意なんです」


 僕が暗唱(あんしょう)した竜の物語を外国語で聞かせると、竜王は感心しました。


「じゃあ、別の科目にするか」

「?」


 どうやら竜王は教師のように僕の面倒を見ないといけないと思っているようで、無気力な青白い顔をしつつも授業をしてくれました。



「ふわーっ! わぁーい!」


 僕は竜に乗っています! 飛行の授業です!

 はしゃぐ僕を竜王は後ろからしっかりと捕まえて、竜の手綱(たずな)を持っています。青い竜は滑らかに空を滑って、森を自由に飛びまわりました。

 緑の森が、岩場の崖が、そこを流れ落ちる滝が、次から次へと景色を変えて、僕は空の飛行に夢中になりました。


「まずは飛ぶ事に慣れるんだ……と言いたかったが、もう楽しんでいるみたいだな」


 竜王は僕が(おび)えるかと思っていたようです。


「僕はずっと、竜に乗ってみたかったんです! 僕も竜を運転したい!」

「まだダメだ。竜と意思疎通(いしそつう)ができなければ、危ないからな」


 アルルは言われてみて、竜王が持っている手綱はただの命綱として利用していると気づきました。


「ルシアン様は、どうやって竜をコントロールしてるんですか?」

「右へ行け、上昇しろと、脳内で指令を出すのだ」

「テレパシーってこと!?」

「竜族の(ツノ)はそのためにある」


 僕の角は公爵家にいた頃、皆を悲しませた原因だったけど、本当は竜族にとって大切な器官なのだと知って嬉しくなりました。いいえ、それどころか誇らしい気持ちです。何より、竜王とお揃いの物が僕にも付いてるなんて……。僕が振り返って笑顔で竜王を見ると、竜王も笑っていました。


「あっ! あれを見てください! 大きな鳥の巣です」

「ああ。あれは怪鳥の巣だ。人が近寄れない崖の壁に作る」

「行ってみましょうよ! 卵があるかも!」

「バカだな。親鳥に見つかったら、竜といえどもただでは済まないぞ」

「見つからなければいいのですね?」


 僕は竜王を驚かせようと、透明になってみせました。


「うわ!?」


 竜王は突然消えた僕が竜から落下したと思ったのか、予想以上に驚いて、竜ごと数メートル急下降しました。


「わわわ! 僕はここにいます! 落ちてませんよ!」

「お、お前、透明になれるのか!?」

「はい。生まれつきの特技です。それに、透明にできるのは僕だけじゃありません」


 竜も竜王も透明にすると、竜王は動揺して飛行が乱れました。


「凄い能力を持っているな!」


 竜王の素直なリアクションと褒め言葉に、僕はご満悦になりました。


 竜も僕たちも透明のまま崖の巣に近づくと、大きな巣の中には大きな卵が3つあって、僕はスリルと好奇心で興奮しました。竜が竜王のテレパシーに従っているのか、器用に卵を一個手に取ると、素早く巣から離れて高速で逃げ飛びました。


 僕はこんなにハラハラしたのは生まれて初めてで、声を押さえたまま内心で歓声を上げました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ