4.ただ一つの存在する記憶
不定期投稿で申し訳ありません。楽しんでください。
あの日も今日のように深い眠りについていた。重いまぶたを開ける。最初に目に映ったのは見たことのない天井だった。何も思い出せない。なんだか頭にポッカリ穴が開いたみたいだ。
「お嬢様‼お目覚めになられましたか。何者かに襲われた後三日三晩眠り続けて、死んだかと思い、どきどきしていました。安心です。今お医者様呼んできますね。」
彼女が昔のマリアである。マリアが部屋を出て行こうとすると、リリアが口を開けた。
「………あの誰ですか?」
目覚めたとき何が何だか分からなかった。思い出そうとすると頭がひどく痛む。
「…………え?」
マリアの顔が一気に青ざめた。静かに時間が進んでいく。実際は数秒ぐらいだったのだろうがその時間は何時間にも感じられた。ロウソクの光に陰が出来て、ゆらゆらと揺れている。その長い沈黙を突き破ったのは扉を開ける音だった。扉の近くには医者と数人が立っている。
「目覚めたかな?」
白衣を着た、医者と思われる人物は優しく聞く。
「ええ。でもここがどこか分からなくて…あと頭が痛いです。」
ほう。と、もじゃもじゃのひげをいじりながら少し考えている。
「ふむ、分かった、少し診察をするね。」
医者と一緒に入ってきた人の中には、マリアと同じように青ざめている人もいる。人数はそこまで多くなかったが、誰一人として覚えている人がいなかった。
「では、診察を始めるね。これが誰の名前か分かるかい?」
そう言ってリリアと書かれた紙を出す。
「……分かりません」
「そうか、これは君の名前だよ。この名前を呼ばれたら君のことだと思いなさい。」
(急に自分の名前だとか言われても……)
「はい。」
「ここにこの羽根ペンで何か文章を書きなさい。」
「………書けました。」
「うん、じゃあ私が何を言っているのか分かるかい?」
「分かります。」
いろいろな質問をされるので正直に答える。
「そうですね、診察の結果、彼女は」
(あぁ、多分私知ってるわ、これ確か)
「記憶喪失です。」
(記憶喪失ね。)
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