28.過去
そろそろ終わります!!
最後まで楽しんでください!
夢を見た。
昔。記憶喪失になる前の夢。
◇◆◇
「リリア。この人は将来あなたの婚約者になる人よ。」
「こんやくしゃ?」
王宮の綺麗に手入れされている庭で、幼い頃のリリアとリリアの母が居た。リリアが不安な瞳を向けていた先に居たのは、
「こんにちは。リパーチア国から来た、イエラド・ウル・カクです。」
幼い頃のカクだった。
「ほらリリア、ちゃんとご挨拶。」
「こ、こんにちは、スノウ・クロック国のスノウ・クロック・リリアです。」
緊張でムスッとしているリリアを見て、幼い頃のカクはどうすれば良いか分からず困っている。それを見ていたリリアの母、ジェリアは二人きりで庭を散歩してみたらどうだろうかと提案した。カクは「分かりました」と言って、リリアの手を握った。
「一緒に行こう!!」
「!う、うん、」
戸惑いがちではあったがリリアは照れた様子で手を握り返した。
「!ゴホッ、ハッ……うっ」
二人が遠くに行くのを見送ったジェリアはその場で苦しそうに咳き込み始めた。それを見た侍女は急いで駆け寄りジェリアの背中をさすりながら、近くのベンチに座らせた。
◆◇◆
「ねぇねぇ。リリアちゃんはお花好き?」
「う、うん。好き。」
「良かった!僕、お花の冠を持ってきたんだ!!って、うわぁ!し、しおれちゃってる…………ご、ごめん。リリアちゃん」
「ぷっ、あははっ、へんなのっ、でも、とっても、すてきだと、思う。」
そういってニコニコとしているリリアを見てカクは放心状態になった。
「あ………ごめん笑われて、いやだったよね、」
「いや、違くて、なんか、かわいいなって」
「!?かわっ、そ、そうかな?」
二人は耳まで真っ赤になりながら黙ってしまったが、リリアが口を開いた。
「よ、良かった。もっとこわい人かと思った、」
「そう?安心して貰ったなら良かった。それに、ずっと楽しみにしてた。僕の婚約者はどんな人なんだろうって。」
カクと話すうちにリリアの表情はどんどん明るくなっていった。
「わ、私も同じ事思ってた!じゃあ、両思いだね!」
「りょっ!?意味が違う気がするけど、僕もそうなら嬉しいな。」
二人は笑い合いながら庭の花園を歩いて行った。
◇◆◇
時は流れ、三年後、リリアはカクの部屋にお邪魔していた。
「やっぱりこっちの王宮は大きいね。」
「そうか?俺は毎日見てるからそんな感じしないけど。」
「ふーん。カク。暇だね」
「おう、そうだな。どうした?急に。」
そう言って笑うカクを見て、リリアは頬を膨らませて言った。
「違くて!キ、キスしたいの!!」
「え゛っ、あ、そういう……良いよ。おいで。」
「もう気付いてよ………」
こうやってキスしている所を、マリアとスピンが見ていることをふたりは知らない。と、その時ノックをして、部屋に入ってきた人物が居た。
「失礼します、こんにちは。カクさん。」
声をかけられカクは、「こんにちは」と返しペコッと礼をした。
「パトラ?こんな所まで来て、どうかしたの?パトラは今日、リパーチア国への用はないはずだけど……」
「うん。そうなんだけど、お姉ちゃんに会いたくなっちゃって!」
「そっか。お母さんとお父さんは?」
「えっと、内緒で来たから、私一人………」
その言葉を聞いてリリアはびっくりした。本来、国王の娘が一人で出掛けるなどあってはならないのだ。
「えぇ!?ちょっとダメでしょ?ほら帰るよ!ごめんなさい、カク。また来るから!」
「全然大丈夫だよ。あ、良かったら馬車で送ろうか?」
「良いの?そうしてくれると嬉しいな。」
その日はそのまま帰った。
パトラもその時までは良かった。変わったのは。お母様が亡くなったと報告が来るまでは。
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