23.資料
文字多めです!
楽しんでください!!
「家に住まない?」
「………へ?」
その言葉を理解するのに、三十秒程かっかった。
「カクの、………家…………に?」
「うん。えっとね?順を追って説明すると、」
カクはこういった。
記憶喪失前、もしあのまま結婚してたら、今日が王宮に住み始める日だったこと。部屋などは準備してあること。とても楽しみにしていたこと。
「だから、もし良かったら、」
「ご、ごめんなさい!」
答えははっきりしていた。決まっていたからこそ、ちゃんと言わなければ申し訳ないと思ったから。
「い、嫌だった?それならごめ……………」
「嫌ではないです!でも………ふぅー…………私は薬屋をやっていますよね。」
「へぇ?あ、うん、そうだね?」
なぜその話になるのか分からなかったカクは、反射的にそう答える。
「確かに、あの薬屋は、国王から命令されて始めたことですが、今は…………」
「今は?」
「そ、その…………愛着?とやらが、沸いちゃって……ローレさん。それにカクも、お客様は、大切にしたくて、だから、カクと住むのが嫌じゃないですし、む、むしろ嬉しいんですけど…………」
リリアの顔がじわじわと赤くなっていくのを、ボーッと見ていたカクも、我に返って赤くなってくる。
「薬屋を、続けたいです!!」
(やっぱり、こんな我が儘、だ、駄目かな)
緊張して下を向いてしまう。そんなリリアに返ってきた返答は優しい声だった。
「いいよ。」
「へっ、ほ、ほんと?」
見上げて最初に見たのは、微笑んでいるカクの顔だった。
「それに、また体温測ってもらいたいし。」
「いちいちそれを、掘り出さないで!?………それに、こっつんってするぐらい、い、いつでも出来るし。」
カクはポカンとしている。自分が言ったことに気付いたリリアは顔を真っ赤かにした。
「あ、いや、ちが」
「本当?」
「え…………う、んまぁ、本当。」
そう答えると、カクはリリアに顔を近づけた。聞こえる心臓の音はどっちなのか。それは、どちらにも分からなかった。見つめ合っていると、カクが口を開いた。
「じゃあ、キスしてもいい?」
「!?……………いい、よ…………」
次の瞬間、唇と唇が重なった。と、その時、陰から声が聞こえた。
「これこれ。真昼からイチャイチャすな。」
「「!?」」
出てきたのは、レオだった。
「おまっ、なんでここに、」
「うぅ、見られてた……」
(わ、私はなんてことを…………)
「ほれ。ローレさんが、サリス製薬のこと調べてたら、怪しい情報が、バンバン出てきたぞ。」
「えっ!?ど、どんなことが…………」
渡されたのは、数枚の書類だった。そこに書かれていたことに、びっくりして、思わず口に手を当てた。
【〈薬品情報〉
実験薬 milfa
効果 記憶喪失
実験マウス 成功
実験段階 昇級 承認 】
「えぇ…………これは、」
「リリアはこれの、人体実験にされたっぽいな。」
「あぁ。でもやっぱ、短期間でこんだけ調べるとか、ローレさんすげぇな。」
震えが止まらなかった手を、カクが握りしめてくれた。
「大丈夫。俺がいるから。」
「……………うん。ありがとう。」
(あ、そういえば、うちの薬屋って今月の予算、八千円。来月もやばくて、今月は、日曜日も開くから、定休日は水曜日だけ。で、今日は、水曜日で、定休日のうちに薬草の採取に行かなくちゃいけないから、)
「あーーーーっ!忘れてた!!」
「うわぁ!ど、どした急にだいじょぶか?」
リリアは大事なことに気が付いた。
「や、やや」
「や?」
「今日、薬草とるの忘れてた!」
レオとカクはなんだ、そんなことかと、顔に書いてあるが、リリアにとっては、大事態である。
「薬草の採取に行かなければ、飢え死にします!!」
二人は驚きながら、急いで、薬草畑に向かう、リリアについて行った。
次回!薬草畑に行く!
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