20.張り合い
「王宮からで出て行くとき、その話、してる人いた!」
「お嬢様、それは本当ですか?」
「うん。絶対聞いた。」
話は記憶喪失後、王宮を出て行くところまで遡る。
◇◆◇
「はぁ、どうしてこんなことに…………」
リリアは手に大量の荷物を持ち、溜め息を付く。昨日打たれた頬はまだ痛む。
「なぁ、国王様の娘、長女のリリア嬢が記憶喪失なったって話……………」
(ん?リリア?それって確か、私の名前だったはず。)
ドアの奥から聞こえる噂話、に耳を傾けてみる。
「あー、聞いた聞いた。リリア様も不憫だよな…………」
「なー。まさか、自分がサリスの実験台にされるなんて思ってなかっただろうな。」
どうやら話しているのは、男の二人組らしい。
「おまっ、誰が聞いてるか分かんねぇんだから、安易にその話するなよ…………」
「ははは。大丈夫だって。誰も聞いちゃいないさ。」
(すいません、私、めっちゃくちゃ聞いてます…………)
そんな罪悪感を覚えていると、段々と冷静になってきた。
(待って、私なんかの実験台にされたの!?怖いんだけど………)
◆◇◆
「ていう事があって…………」
「リリア?」
「え、なに…………!?」
振り向くと両手でほっぺを伸ばされた。
「そう言うことは、早く言わなくちゃいけないんだよ?」
「ほ、ほめんなひゃい。」
「まぁとにかく、これで、なんとか手探り状態は回避できたね。」
ほっとしていると、ベルの音がした。
「あれ、こんな時間にお客さん?今日のお店はもう閉店したし、薬屋じゃなくて私達に用かな…………」
「私が出てきますね。」
「ありがとう、マリア。」
マリアが部屋から出ていって、カクとレオ、リリアの三人になったとき、レオが口を開いた。
「いやぁ、大変だね。しょうがない。こっちも協力するか。カクの、彼女の為だしな。」
「あ、ありがとうございます。かっ、彼女…………」
(そのワードを聞くとカクの付き合っている再確認みたいで恥ずかしくなってくる。)
「なんか改めて言われると、緊張するね………?」
ふとカクを見ると、カクは顔を真っ赤にしている。
「へあっ………カ、カク?」
「え!?あ、ごめんごめん!その、恥ずかしくて…………」
気まずくなって、目を逸らす。
「ひゅーひゅーお熱いねぇ。」
「う、うるせぇ………」
「でもーあんまり、ダラダラしてると取っちゃうよ?」
その瞬間カクの雰囲気が変わる。
「は?」
「ひえっ。冗談だよ、冗談。俺、婚約者居るし………………」
(婚約者…………気になる。)
「へぇ。どんな婚約者さん何ですか?」
「え、えっと、スシャルって言って、かわいくて、歌がとっても上手で、たまにスシャルの歌聞いたりするんだけど、きれいな声でさぁ。まさに天使みたいな…………」
レオの頬が桜色に染まる。こいつベタ惚れじゃねぇか。といった感じでカクが若干引いている。
「へぇ。今度話してみたいです!」
「いいな!あ、でもリリアより可愛いから、嫉妬しちゃうかも。」
「へぇー!」
その時、カクがリリアを抱きしめてきた。
「!?……………カク?!」
「リリアの方が可愛いし。リリアはスシャルより百倍は、すごいから。」
「ほ~う、スシャルに張り合おうというのかい?」
この言い合いは、マリアが帰ってくるまで続いた。
その間ずっと抱きしめられていて、ちょっとだけ嬉しいリリアであった。
いつか、レオとスシャルの短編も出したいです。
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