13.予想外のお客様
ちょっと、まだ付き合ってもないですが、甘めです。
楽しんでください!
お店の休憩時間十一時頃、恋心を自覚したリリアは頭の中で、反省会を開いている最中だった。
(はぁーーーーなんだか昨日は疲れた、たくさんカクの前で泣いちゃったし。あぁーー呼び捨ても慣れてないぃ。思い返すと、めっちゃ恥ずかしい事してない!?令嬢として恥ずべき行為だったっ……うぅ……………)
思い出すだけで顔はどんどん赤くなっていく。目の前には薬屋の精算書が散りばめられている。椅子から立って頭をぶんぶんと振る。近くにいたマリアは、溜め息を付いている。
「お嬢様、何回立ち上がるんですか。これで二十四回目ですよ。」
「ごめんなさいね、ねぇマリアは好きな人とかいる?」
「ブフォッ!?…………はい?」
リリアが椅子に座り直した所でマリアは飲みかけていた紅茶を吹き出した。なお、顔は真っ赤である。一瞬驚いたリリアだったが、ニヤリと笑った。
「いやちょっと、気になってね、で。お相手は誰なの?」
「トア・スピンです。」
「へー。カク様の従者様でしたっけ?もう付き合ってるの?」
マリアは嫌々ながらも、話してくれた。
「お嬢様、喋り方タメ口になってますよ。……………はい。もう付き合ってますね。」
「どんな所が好きなんですか?」
「そうですね、まず、優しいところ。カッコいいとこ、あとは一途ですし、…………」
三十分後……
「あとちょっとヤンデレな所、表情豊かな所も好きですね。あとは」
「マリア、ストップ!もう分かったから。一回止めてちょうだい。」
「えーーあと、百個はありますのに、」
マリアは思いっきり頬を膨らませている。
(どうしましょう、いつものマリアと違う、なんか可愛い。恋ってこんなに変わるものなのね。お話はすぐ終わらせる予定だったのに、てかマリアの愛が想像以上に重そう、これを受け止めきれるどころか上回ってるスピン様って、一体、まあとにかく)
次から絶対に恋の話は振らないことにしたリリアであった。マリアは膨れっ面を戻してふと、こちらを見る。
「で。何か恋のお悩みですか?」
「げふぉっ!…………えっと。」
今度はリリアが口に含んでいた紅茶を吹き出した。掃除は自分でやってくださいね的な目をマリアは向ける。あなたもさっき同じ事やってたじゃない、的な目を向き返す。
「昨日の件から、ちょっとだけカクのことが気になって、」
「お、良いじゃないですか。もうすでに呼び捨てですし。このままグイグイ行っちゃいましょうよ。」
「そ、そんなことできる訳ないでしょ!?」
赤面のまま、少しだけ叫ぶと同時に店のベルが鳴った。
「あ、やばお客さん来ちゃった。ちょっと行ってくるわ。」
「行ってらっしゃいませ。」
一階が薬屋、二回が寝室やキッチンとなっているこの住宅で、階段を急いで降りる。
「はーい、いらっしゃいませ。ってカク!?」
そこにいたのは紛れもない、さっきの話題の中心人物イエラド・ウル・カクであった。カクはこちらに手を振っている。
「こんにちはリリア。暇だったので来ちゃいました。猫用の風邪薬は、ありますか?うちの猫が吐いてしまって。」
カクも呼び捨てになれていないらしく少し頬を染める。
「大変ですね、いま取ってきますね。でも、動物のお医者様に貰った薬の方が効くと思いますけど。」
「えっと、急用で来れなくなったらしくて、」
カクの態度が急によそよそしくなった。
(いやいやだとしても、もっと近くにあるでしょ薬屋なんて、隣の国まで来ることなんてあります?)
「そういえば、今マリアと恋バナをしてたんですよ。」
「へーーちなみに誰のことについて話してたんですか?」
カクにどす黒いオーラが出る。
「ひえっ。は、恥ずかしくて言えないです。」
(流石にカクの事を話してたですなんて、口が裂けても言えないっ!)
「そ、そうですか、うぅ」
どす黒いオーラが消えて、カクの顔が青くなってくる。
「!?カク、顔が青いけど大丈夫?猫ちゃんの風邪が移ってしまったんではないでしょうか、熱は」
同時にリリアはカクのおでこに自分のおでこを当てる。
「だいじょぶ、熱はないっ!?リリア!?」
「確かに熱はないですね。あれ、今度は顔が真っ赤ですよ!?ほんとにだいじょうぶですか!?」
「いやほんとに大丈夫だから。ちょっとビックリしただけで、」
(ん?何でビックリしたんでしょうか。特になにも、・・・あっ、お、おおおで、ここにこっつんこしちゃったからでしょうか?あああ顔があんなに近くに、)
意識し出すと恥ずかしさが止まらない。
「すす、すいません。いつも熱を計るときはここ、こうなので。」
「い、いえいいんです。そろそろ帰りますね。」
扉が閉まりカランカランとベルが鳴る。リリアは顔が赤いまま五分ほどそこに立ち尽くしていた。
おでここっつんって、やったことないんですが、本当に熱があるか分かるんでしょうか?
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