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4-3 立て札



 ログアウトをして、ベッドで上半身を起こした。



 フレームギアのヘルメットはずす。

「現在のプレイ時間、八時間と十三分です」

 ベッド脇にあるゲーム機械が、今日の俺のプレイ時間を教えてくれた。



 さて、メシだ。



 靴をはいて扉を開ける。

 ホテルの通路を歩いて、いつものように食堂に行った。



 大きな立て札がある。

 そこに人が集まっていた。



 ……またなのか?



 いつも置いていないその立て札を、俺は両腕をくんでじっくり読んだ。

 内容はこのようなものだ。



 十日後の日曜日、海底の宝探しに全員が参加すること。

 参加形式は、チーム、ソロを問わない。

 参加しなかったものは抹殺の対象となる。

 宝を見つけたものには、それを与える。

 海底へのワープゲートは各町村に一つずつ開く。

 (注)このイベントは、ゲームクリアと関係がない。



 俺はそれを読んで、どうしたものかとうなった。



「お兄ちゃん」

 隣にノノが来ていた。

「どうしましたですか?」



 彼女はまだ読んでいないらしい。

 俺は立て札を指さした。



「これ」

「え?」

 ノノが眉をひそめて、文章を読み始める。



「二人とも、こんなところで何をしてるの? って、またなの?」

 遅れてセニャもやってきた。

 立て札に顔を向ける。



「これって、参加しても、宝を探さないことはできるのでしょうか?」

 ノノが人差し指を頬に当てた。



「分からん」

 俺は首を振る。



「まあ、とりあえずご飯にしようよ」

 セニャがそう言って、俺たちはトレーのところに行った。



 それぞれ食べたい主食や副菜をのせて、同じテーブルにつく。



 セニャがフライドポテトをかじってから言った。

「宝探しか。なんか、平和的なイベントね」



「そうでございますね! どんな、お宝が待っているのでしょうか?」

 ノノはワカメと卵のスープをすする。



 俺はひじきサラダをハシでつまんで口に入れた。

「果たして、本当にそうだったら良いんだが」



「どういうこと?」

 セニャが目線をちらりと向ける。



「宝を奪い合って、他のプレイヤーと争いにならなければいいが」



「それは大丈夫ではないでしょうか?」

 ノノがご飯の器を持つ。

「どうしてだ?」

「お兄ちゃん。宝など、他の人にお譲りしてしまえば良いのですよ」

「ま、まあなあ。そういわれればそうだ」



 苦笑する。

 欲のない妹だった。



「僕は他のことが気になるな」

 セニャはスパゲッティサラダをフォークでくるくると巻いた。



「他のこと?」

「うん。海底の宝探しって書いてあったけど。海底って、どうやって行くの?」

「セニャさん。ワープゲートで行くのですよ。って、そう書いてあった気がしますです」

「そうじゃないの、ノノ。海底に行ったとしても、息しなきゃいけないじゃない?」

「あ!」

「確かにな」



 水の中で呼吸をする方法やアイテムなんて、知らない。

 そんな方法があるのだろうか?



「海の中で宝探しなんてしたら、窒息してしまいますです」

 ノノの顔色が暗くなる。



「まあ、大丈夫だろ」

 俺は楽観的に言った。



「どうして?」

 セニャが小声で言って、スパゲッティを口に入れた。



「分かんけど、たぶん何とかなるんじゃないか?」

「お兄ちゃん、たぶんじゃダメでございます」

「そんなこと言われてもな」



 俺は腹を揺らして笑った。

 俺が何か解決の方法を知っているわけでもない。

 それにもう一つ、俺には気になっていることがあった。



「なあ、セニャ、ノノ」

「ん?」

「はい?」

「俺たちって、いま、どのくらい強いんだろう」

「全体と比べてってこと?」

 セニャがオレンジジュースを一口飲む。

「ああ」

「トキ、いま何レベル?」

「22だ」

「うーん、このゲームの一番レベルの高い人がどれくらいなのか、分からないからなあ」

「お兄ちゃんは、強い方なのではないでしょうか?」

「そうなのかなあ」



 俺は野菜コロッケに醤油をかけた。

 半分に割ってハシでつまむ。



「トキにはアレがあるから。負けることなんてないでしょ」

 セニャは余裕そうに言った。



「そうでございますね。セニャさん」



 おたけび、のことだろう。



 女性陣は他人だよりである。

 俺はまた苦笑して、それからはご飯を食べることに集中するのだった。


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