1-4 ホテルの食堂
ゲームから現実に帰るとベッドに寝ていた。
当然だった。
このベッドでゲームを始めたんだから、ログアウトすればここに戻ってくる。
おそるおそるフレームギアのヘルメットをはずす。
……はずしていいんだよな?
「現在のプレイ時間、三時間七分です」
びっくりした。
ベッドの隣にあるゲーム機器から音声があった。
今日の俺のプレイ時間を告げたらしい。
顔を向けるとデジタル時計のような数字が並んでおり、0307と表示されている。
今夜は八時間をプレイする必要がないはずだ。
俺はベッドに腰かけて靴をはき、立ち上がって部屋を出た。
……腹が空いた。
食堂はどこだろうと廊下に視線をさまよませる。
少し離れたところに白い看板が出ていた。
そこまで歩いて行ってのぞき込む。
食堂はこの先を左に折れてすぐの部屋であるということだった。
食堂は空いていた。
なるほどな、夕食時はすでに過ぎている。
このホテルのプレイヤーたちはもう食事を済ませたということか。
それでもちらほらと人がいて、テーブルで食事を摂っている光景がある。
こうして現実に戻ってくると、いつもの自分の生活は、もう無いのだということを実感させられた。
室内には他にも人がいる。
運営の人間と言えばいいのか?
黒のサングラスの男や給仕の女性がいて、俺たちを見張るように、そこらかしこに立っていた。
食事はセルフサービスのようだ。
俺はオボンを持つ。
その上に皿とハシを載せて、そしてご飯とサラダと飲み物だけを選んで取る。
サラダにドレッシングをかけて、誰も座っていないテーブルについた。
他にオカズが無かったわけじゃない。
むしろ肉料理なんかは大好物だ。
だけど。
肉を食べなければ胃に負担がかからない。
俺の体質のせいなんだろうな。
味気ない食事をした方が、次の日は体調が良いんだ。
サラダをオカズにご飯を食べ終えて、席を立つ。
汚れた食器をどうしたら良いかと考えていた。
そこで近くに立っている給仕さんに声をかけることにした。
「あの、食器はどうすれば?」
「テーブルに置いておいてください」
「あ、はい」
まだ聞きたいことがあった。
「……あの、お風呂は?」
「地下一階にあります。エレベーターを使ってください。着替えもお風呂場にあります」
「そうなんですか。あ、あと、寝る場所は、自分が、ゲームをした部屋でいいんですか?」
「はい」
給仕さんは愛想と言ったものを全く見せない。
「ありがとうございました」
俺はそう言って頭を垂れる。
そして力ない足取りで、エレベーターを探して向かったのだった。
本当はエレベーターの場所も聞けば良かったのだが、気後れしてしまった。




