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2-11 魔人の死地



 泉を泳いでいる亀をノノが呼び寄せた。

「セバスチャン、行きますよー」

「グワー」

 亀がこちらへ来る。



 地面に上がり、ノノの足をよじ登った。

「あはっ、くすぐったいです」

 背中に吸着する。



 それから、みんなで帰還水晶を使った。

 町に戻る。



 ゲーム内は夜が来ていた。



 みんなで道具屋へ行く。

 帰還水晶を買い足した。

 これから、魔人の死地へ出発である。



 町の草原方面の出口へ向かっていた。

 ふと、知った人物が反対側から歩いてくる。



 ……リリアだ。



 ノノ以外の全員が顔をしかめた。

 ノノはリリアのことを知らない。



「無視しよう」

 俺が小声で呼びかけた。

 みんなが頷く。



 俺たちは交差し、リリアは通り過ぎていく。

「ふう」

 俺は安堵の息をついた。



 しかし、

「おい、あんたら!」

 リリアが振り返って呼び止めた。



 俺たちは立ち止まる。

 振り返る。



 セニャとメイが前に出た。

「何ですか?」

 セニャのトゲのある声。続けて、

「リリアさん。もう僕たちに関わらないで欲しいんですけど」

 続けて追い打ちをかけるように、

「と言うか、早くお金払ってくださいよ」

 セニャは臭いものを見る目つきだった。



 今度はメイがたずねる

「何の用?」



 リリアはきっぱりとした声で言った。

「あんたたちに、金を払いたいんだ」

「じゃあ今すぐください」

 セニャが右手を伸ばす。



 リリアは儚いような、物かなしい表情だ。

「今夜の6時!」

 声を張る。

「この町の広場に来てくれ」



「また僕たちを、罠にはめるんですか?」

 セニャは怪しんでいる。



「また、レッドリーパー?」

 メイが首を振った。

「私たち、行かない」



「信じなくても良い」

 リリアは元気のない声で言って、背中を向けた。

「来たくなけりゃ、来なくても良い」

 歩き出す。



 俺たちは顔を見合わせていた。

「どうせ罠でしょ」

 セニャが吐き捨てる。



「うん」

 メイが頷く。



 しかし、

 二人の表情には迷いがあった。



「みんな! 絶対行っちゃダメだ!」

 サクが両手を開いた。

「また、あの赤い連中が来るよ!」



「赤い連中って、何でございますか?」

 ノノは、頭にクエスチョンマークを浮かべている。



「道すがら話すよ」

 俺は言った。



 みんなでまた歩きだす。



 町の外へ出た。

 ランタンをセニャが持ち、メイが広げる地図に明かりを照らす。



 俺たちは南に、正確には南南東に向かった。



 道すがら。



 メイがぽつりとこぼした。

「リリア、本当に払うのかも」



 セニャが口を曲げる。

「えー! そんなことないよ」

 続けて、

「メイは、どうしてそう思うの?」

「リリアの、雰囲気」

「雰囲気で分かるの?」

「何となく、そう思っただけ」



 サクが口を開いた。

「ないよそんなの。絶対ない!」

 両手を握って、力強く言う。

「オイラ、行かないのが安全だと思う」

「確かに、そう」

 メイが頷いた。



 その後方では、俺とノノが並んで歩いている。

 俺はノノに、レッドリーパーの事や、これまでに起きた事件を語って聞かせた。

「と、言うことなんだ」



 ノノは表情を険しくする。

 彼女にしては珍しい顔つきだった。

「レッドリーパー、それとリリアという女に、レンという男、許せません!」

「レンはもう死んだけどな」

「それは、よろしゅうございました」

 ノノが毒を吐いた。

 これも珍しい。



 俺は前を向いたまま言った。

「だから、最初の村の、プートゲールには、出来る限り近づかない方が良い」

「了解いたしました。レッドリーパーのアジトがあるのでは、近づけません」

 コクコクと頷く。



 それから。



 みんなで魔人の死地へたどりつく。



 荒廃した大地が広がっていた。

 黒っぽい地面。

 ところどころでは、動物が朽ちた骨が転がっている。

 漂っている匂いは少しくさい。

 薄気味が悪い場所だった。



 大地の真ん中に、千切れた巨人の腕が、横たわっていた。

 頭部や腹部、足は近くにない。

 離れたところにあるのかもしれなかった。

 魔人の死地という名前の場所である。

 この腕が、魔人の死体の、その腕なのだろうか?



「よ、よーしみんな、狩りを始めるわよ!」

 セニャが号令をかける。

 ちょっと不安そうな顔だ。



 みんなが、背中や腰にたずさえている武器、盾を持った。

 狩りが始まる。



 出現するモンスターは、グール、カーストゾンビ、キメラウルフ、キメラゴブリン、ポイズンスライムと言ったものだ。



 俺たち以外にも狩りをしているプレイヤーがいた。

 仲間同士でタッグを組み、モンスターを倒している。

 1人で戦っている者はいない。



「ファイアーボール」

 近くに来ていたカーストゾンビに向かって、セニャが炎のかたまりをぶつける。

 モンスターはゴウゴウと燃え盛った。

 燃えながら、歩いて来る。



「このやろっ」

 サクが矢を撃った。

 カーストゾンビの頭に刺さる。

 だが、まだ倒れない。



 メイが前に出た。

「トキくん!」

「あいよ!」

 俺とメイが並ぶ。



 カーストゾンビの右こぶしをメイが盾で押し返す。

 よろけたモンスターに俺が斬りかかる。

 二人でその行動を何回か繰り返した。

 カーストゾンビが地面に崩れる。

 赤い光になった。



「ここのモンスター、タフだなあ」

 俺はみんなに聞こえるように言った。



「面白い」

 メイが笑っている。

 好戦的な女子である。



 ……頼もしいな。



「ぼ、僕の魔法で、一撃で仕留められないなんて!」

 セニャが悔しそうに言った。



「ノ、ノノカは!? どうすれば?」

 彼女はあたふたとしていた。



「ノノ! オイラのそばに!」

 サクが呼びかける。

「サク、了解いたしました」

 弓使いが2人並ぶ。



「みんな、ゆっくり狩ろう」

 俺は柔らかい声で言った。



 みんなが同意の声をあげた。


今夜はここまでになります。明日から2シーンずつの投稿になります。

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