1-21 おすわり
大広間にいる全員が、犬のようにおすわりをした。
両腕や全身が縛られている、セニャ、メイ、リリア、サクはできなかった。
3秒後、効果は切れる。
これが、おたけびLV2の効果だった。
人やモンスターに命令をすることで、言うことを聞かせることができる。
効果時間は3秒。
クールタイムは、アビリティ・クールタイム削減のおかげで減少している。40秒だ。
効果範囲は10メートルほど。
命令できる言葉はひらがな5文字まで。
直接的な死につながる命令は、相手が聞いてくれない。
以上が、おたけびLV2の効果の検証結果だ。
人に効くかどうかを検証するために、知らないプレイヤーに手伝ってもらった。
その際、銀貨1枚を支払ったのは、ここだけの話にしてほしい。
目の前でおすわりをしてしまったレンが立ち上がる。
「く、くさ!?」
「おっと動くなよ」
俺は怒りを押し殺して冷静に言った。
はったりを続ける。
「俺がその気になれば、ここにいるレッドリーパーの全員を、殺すことだってできるんだぜ?」
レンには真実に聞こえているだろう。
彼はへりくだるように表情をやわらげた。
「そ、そう怒るなよ。へっへ、分かったよ。女とガキは返す。いま、ロープをほどくからさぁ、草ぁ」
レンがセニャの背後に回る。
持っているダガーでロープを切るのかと思いきや、彼女の首筋に刃をつきつけた。
「次にスキル使いそうになったら、セリハを殺す! 草!」
俺は焦る心をぐっとこらえた。
「言葉の方が早いぞ? 試してみるか?」
挑発的に言い放つ。
レンの顔が脂汗でダラダラになる。
「く、草。待てよ。俺たちをここで殺したところで、レッドリーパーのメンバーはゲーム内にまだまだいるんだ。いつでもお前らをつけ狙って、お前たちを殺すことになるだろうなあ」
今度は俺が冷や汗をかく番だった。
……ひるむな。
「別に良いと言ったら?」
「草ぁ、まあ待てよ、勝負しよう」
「勝負?」
眉をひそめる俺。
「あぁ、明後日に開かれる、ボス討伐イベント。烈風の地だっけか? 俺らとお前ら、ボスを倒したほうが勝ちだ」
「勝つとどうなるんだ?」
「レッドリーパーが、お前らをつけ狙うのをやめてやるよ。草ぁ」
くっ……。
ここは。
俺はしぶしぶ頷いた。
「いいだろう」
「草、決まりだ。女とガキを解放してやる。おいっ、お前ら!」
「「ヘ、ヘイ」」
赤のローブの若い連中が、セニャ、メイ、サクのロープを刃物で切って自由にする。
「トキ!」
セニャが駆け寄ってきて、俺の腕を握った。
その背中に手を置く。
「悪い、待たせたな」
「本当だよ。ひっどいことされたんだから、僕たち」
目尻から涙がこぼれている。
すぐそばでは、メイとサクが抱き合っていた。
「姉ちゃぁぁぁぁん!」
「もう大丈夫」
俺はレンに言った。
「みんなの持ち物を返せ」
「分かってるよ、草! おい、お前ら!」
「「ヘ、ヘイ」」
若い連中が大広間を出て行く。
そして違う部屋からだろうか、みんなのカバンと武器、盾を持ってきた。
俺たちは受け取る。
それから、慎重に大広間を出た。
レンたちは立ち尽くすだけで、何もしてこなかった。
ちなみにリリアは両腕を縛られたままだが、知ったことではない。
助ける気はなかった。




