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202/225

9-21 ギルド戦終了



 みんなでアジト裏の地面に戻って来る。



 首に赤い首輪をつけたまま、人間の姿のセニャがいた。



「「セニャ!」」

 俺とメイが名前を呼ぶ。



「みんな、ごめんね! 僕、すっごく迷惑かけちゃった」

 彼女がすまなそうな顔をして頭を垂れる。



「セニャさーん! お帰りなさいですー!」

 ノノが抱き着いて行った。



 セニャがノノの体を抱く。

「ご、ごめんごめん、ノノ。本当にごめんね!」

「もう犬になったりしたらダメでございますよー」

「もうならないよ! 心配かけちゃったね」

 ノノがすんと鼻をすする。

「いっぱい心配したですよお」



「セニャ姉ちゃんはおしっこしまくりだったぜ?」

 サクが頭の後ろに両手をくんで笑う。

 その頭に姉がチョップを落とす。

「痛っ、パワハラだ」

「そういうこと言わない」



「よお、セニャ。犬から戻れたみたいだな」

 リリアがほっとしたように言った。

「うん、カナを倒してくれたみたいだね。本当、ありがとー!」



「良かった」

「本当に良かった」

 みんなが口々に良かったとつぶやく。



 俺は口を開いた。

「みんな、感極まっているところ悪いが、三回戦目が残っている。気をひきしめていこう」



 喋ったところで、カバンの中からファーンと音がした。

 電話がかかってきている。



「トキ、電話だね」

 セニャがノノの頭をさすりながら言った。



「みんな、ちょっと待っていてくれ」

 俺はそう言ってカバンを開き、振動している通信水晶を両手に持つ。

「使用」

「あ、もしもし、オトギだけど。トキぴょん?」

「ああ、もしもし、どうした?」

「野良猫ちゃんは、決勝戦進出?」

「ああ、そうなったぞ」

「もしかして、テツピコを倒したの!?」



 オトギの驚いたような声。

 俺は嬉しくなって笑みを浮かべた。



「ああ、倒したぞ」

「すごいじゃん! トキぴょん大金星! ナイスナイス!」

「ありがとう」

「あ、じゃあ俺っち決勝は棄権して、決勝は味方の陣地のオブジェ壊しとくよ! 俺っちたちも決勝進出を決めたんだけど」

「え?」



 どうやら次の試合相手はおとぎの国のようだ。

 俺は眉をひそめた。続けて言う。



「いいのか?」

「うん、いいよいいよ。トキぴょんにはこの間助けてもらったし、テツピコを倒してくれたし! それに2位でもアイテムもらえるし、1位は譲るよ」

「そうか!」



 俺はみんなの顔を見回した。

 メンバーが嬉しそうに顔を明るくしている。



「それじゃあね。優勝おめでとう、トキぴょん」

「ああ。オトギたちも、準優勝おめでとう」

「あざっす。それじゃあまた電話するね。バイビー、トキぴょん」

「ああ、じゃあな」



 通信がきれる。

 俺は水晶をカバンに戻してから発表した。



「みんな、俺たちは優勝だ」



「「おー!」」



 みんなが感嘆の声を上げた。



「あっという間だった」

 メイがぷくっと笑いをこぼす。



「僕、次は頑張ろうと思っていたのになー」

 セニャが残念そうに言う。



「どんなアイテムがもらえるんだろ! オイラ、楽しみだぜい」

 サクが両手をグーにして振った。



 セニャから体を離したノノが両手を腿に当てる。

「きっと良いアイテムでございますよ? サク」



「っしゃー、これでギルド戦は終わりね」

 キナが右腕の肘を引いた。



「なんか、最後はあっけなかったすね」

 ユズが前髪をかきあげる。



「最後、は、不戦勝、でしたね」

 ミユが微笑した。



「あたしは、アイテムが手に入ればそれでいいや」

 リリアが両腕を胸にくむ。



「敵は吾輩に恐れをなしたか!」

 サツイがタバコに火をつける。

 シュボッ。



「いやサツイ違うから」

 セニャが指をさした。



 ふと、キルが俺のそばによってきた。

 弱ったような顔だ。



「なあ、トキ」

「どうした?」

「後で、話せるか?」



 ……ん?

 どうしたのだろうか。



「ああ、いいぞ。少し後からでも良いか?」

「ああ、頼む」



 離れていく。



 そしてそれから。

 第三回戦の時間になると、俺たちはまた烈風の地にワープした。

 試合開始から一分ほど経過したところで、勝利を告げる機械的な音声が起こる。

 おとぎの国は本当に棄権してくれたようだった。



 またアジト裏に戻って来る。



 各々の自分の足元に、アイテムが置いてあった。

 今回のギルド戦の優勝賞品である。

 俺はその赤い本を拾う。



 アビリティの書 アタックラブシールド



 ……ふむ。



 どんな効果のアビリティだろうか、後で検証しなければいけない。

 俺はステータスボードを出して、習得をした。



 みんながもらえたアイテムは、アビリティの書に限らず、スキル書だったり、装備品だったりもした。



 気になったのは、メイがルビーのイヤリングをもらっていたことである。

 早速耳に装着している。

 素敵な笑みを浮かべていた。



 可愛いなあ。



 後で詳しく効果を聞いてみるとしよう。



 その後、セニャとメイが町に行ってケーキを買ってきてくれた。

 アジトの建物に入り、みんなでそれを食べながらコーヒーを飲む。



 セニャが口を開く。

「えー、改めまして、みんな、今回は僕がいなくて本当にごめん! ご迷惑をおかけしました!」



 メイが首を振った。

「いい」



 サクが朗らかに笑う。

「人間に復活できたし、もう大丈夫だぜ。セニャ姉ちゃん」



 ノノが目じりを指でぬぐっていた。

「本当に良かったです」



 キルが声を張る。

「問題なし!」



 キナがコーヒーをすする。

「戻れて良かったわ」



 ユズがモンブランの欠片をフォークで口に運ぶ。

「セニャ姉さん、お帰りす」



 ミユが両手を膝につけた。

「最後、は、セニャ、さんが、決め、ました、から、セニャ、さん、気に、せずに」



 リリアは右手の肘をテーブルにつけて、頬に手のひらを置いた。

「良かったなー、本当に」



 サツイが禁煙パイプをくわえている。

 どうやら室内では禁煙パイプにするようだった。

「結果オーライであーる」



 俺は言った。

「お帰りセニャ」



「うん!」

 彼女が元気に頷く。



 俺はみんなを見回した。

「それじゃあみんな、コーヒーカップを持ってくれ」



 みんなが右手にカップを持った。



「野良猫の住処の優勝に、カンパイ!」

「「カンパイ!」」



 みんなが笑顔を浮かべた。



 俺たちはケーキを食べた後、アジト前で記念撮影をした。



 いまは3時半。



 みんなで狩りには行かず、残り時間は自由行動ということにした。

 ほとんどのみんながアジトにいて、休憩をしたり雑談に花を咲かせたりしている。

 俺も椅子に座ってメイと話していた。



 そばにキルが近づいてくる。

 彼が右手を上げる。



「よお、トキ」

「あ、キル、話があるんだったよな」



 俺は左隣の空いている椅子を勧める。

 ノノの席である。彼女はサクとどこかに行ったようだった。

 キルが腰を下ろす。



「それでなんだが」

「ああ、どうした?」



 キルが頭をテーブルにつけた。



「ど、どうした?」

 俺はびっくりする。



「トキ、頼む! 俺を、強くしてくれ!」

 彼が顔を上げる。



 俺は苦笑した。

「強くって言ってもなあ」



「頼むトキ」

 俺の右隣に座っているメイが会話に加わった。

「修業すれば?」



 セニャも歩いてきた、

 キルの隣に腰かける。

「トキお願い、考えてあげて。キル弱いのよ。今回のギルド戦だって、死にそうになっていたし……」



「マジか! そうだなあ……」

 俺は顔をしかめる。

 顎に手を当てた。続けて、

「とりあえず、ステータスを見せてもらえるか?」



「ああ」

 キルはステータスボードとつぶやき、画面を出す。



 俺たちはそれを覗き込んだ。



 名前  キル

 レベル 58

 HP  430

 攻撃力 838

 防御力 136

 素早さ 58

 魔法攻撃力 0

 魔法防御力 116

 会心率    3%

 会心ダメージ 1、5倍

 スキル   信号弾 火炎放射 悪魔ミサイルLV2 スキルスタングレネードLV3

カオスティックバレットLV4 ギガンティックバレット 催涙弾 ディジーズバレット

 アビリティ 恋心LV7 背水の陣(盾)LV1



 それを見て、俺は両腕を組み、目をつむった。

 考えこむ。

 キルはステータスとスキルの方向性がバラバラだ。

 強攻撃狙いなのか、持続ダメージ狙いなのかが分からない。



「私分からない」

 メイが首を振る。

 良いアイディアが浮かばないようだ。



「僕も分からない」

 セニャも同意見のようだった。



 俺は閃いた。

「キル、トキメキガチャで、残高はいくら残ってる?」



「えーっと」

 キルはトキメキガチャの欄をタップする。

 右上に表示されている金額は50万円だった。



「よし」

 俺はほっと息をついた。

「どうした?」

 キルが顔を向ける。

「確か、ガチャの直接購入に、ステータスポイントリセット券があるはずだ。キル、それを買って使ってくれ」

「そんなのあるのか?」



 言いながら直接購入をタップして、ページをはぐっていく。

 ステータスポイントリセット券のページにたどりついた。

 値段、30万円。



「たけーなおい!」

「買ってくれ」

「わ、分かった。でも、どんなステ振りにするんだ?」

 俺は笑った。

「お楽しみだ」

「そ、そうか。分かったよ。買うぜ」



 キルがステータポイントスリセット券を買った。



 俺はセニャに話しかける。

「セニャ」

「なに?」

「お前はさ」

 俺は半笑いになった。続けて、

「トキメキガチャの残高、いくら残ってるんだ?」

「え? 僕はステータスポイントをリセットしないよ?」

「そりゃあそうだが、キルはお前の彼氏なわけだ」

 俺はくっくと笑う。続けて言う。

「キルにスキル書を買ってやれ」



「え、え、えーっ!」



 キルがセニャに顔を向けた。

「セニャ、頼む」

 両手ひらを合わせて拝む。



「う、う、うぅー!」

 セニャはひとしきりうなり、あきらめたように肩を落とした。

「分かったわよ!」



「よし」

 俺は言って、みんなの顔を見回す。

「それじゃあトキメキガチャで、キャノンのクラスに使えそうな、売っているスキルを探そう」



「了解」

 メイがぷくっと頬を膨らませて笑った。



「分かったわよもうー」

 セニャがステータスボードを出す。続けて、

「トキとメイも、キルに何かおごって!」



「えーっ!」

 メイが不満そうな声を出す。

「俺がおごるよ。メイちゃんは良い」

「いいの?」

 メイが恐縮したような顔になる。

「ああ」

「みんな、すまんごめん、ありがとう」

 キルがすまなさそうに言った。



 結局、セニャはスキル書を4つ、俺は装備品の靴を一つ買うことになった。



 セニャが顔を落として言った。

「僕、破産だわ」

 スキル書4冊で240万円した。

 セニャは彼氏を強くするために泣く泣くおごったのだった。



 ちなみに靴は180万円である。

 俺も肩ががくーんときた。



 キルがセルデンベルグの店に行き、ステータスポイントリセット券とスキル書と靴をもらって戻って来る。

 また椅子に座る。



 ステータスポイントのリセットをし、改めて振り直した。

 スキル書も習得してもらい、4つ覚えた。



 さらに今回ギルド戦優勝でもらったオシャレな黒いハット帽と、俺が買ってあげたこれも黒い靴を装備する。

 それらにはアビリティも不随されていた。

 キルの新しいステータスである。



 名前  キル

 レベル 58

 HP  330

 攻撃力 398

 防御力 216

 素早さ 732

 魔法攻撃力 0

 魔法防御力 116

 会心率    3%

 会心ダメージ 1、5倍

 スキル   信号弾 火炎放射 悪魔ミサイルLV2 スキルスタングレネードLV3

カオスティックバレットLV4 ギガンティックバレット 催涙弾 ディジーズバレット バーンバレット エレクトリックショックバレット  フリージングバレット ブラッドペインバレット

 アビリティ 恋心LV7 背水の陣(盾)LV1 クールタイム削減LV2 スタートダッシュLV1 ローリングインビジブルLV1



「こ、これで、本当に大丈夫なのか? 俺、攻撃力下がっちまったけど」

 キルが不安そうに聞いた。



「たぶん?」

 俺は苦笑する。



 これでキルは4つの持続ダメージスキルを覚えたことになる。

 ディジーズバレット(病気)、バーンバレット(燃焼)、エレクトリックショックバレット(感電)、ブラッドペインバレット(血液異常)である。



 さらに敵の行動を妨害するデバフが4つある。

 カオスティックバレット(混乱、暗闇、ミニマム)、ギガンティックバレット(横転)、催涙弾(名前のままの効果だ)、フリージングバレット(敵の足を凍り付かせる範囲攻撃)である。



 キルが完全なデバッファーになってしまった。

 クールタイム削減も覚えたので(素早さを上げると誰でも習得するようだ)、デバフ攻撃を乱射できること間違いなしだ。

 加えて、今までより格段に速く動けるはずである。

 これでキルの方向性は決まった。

 セニャとメイもにやにやと笑った。



「と、とと、とりあえず、みんなありがとう。これでやってみるわー」

 キルはそう言ってステータスボードを閉じたのだった。


こんにちは、ひろくです。ブックマークを1ついただきました。嬉しいです。励みになります。ありがとう。これからも頑張ります!

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