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15/225

1-15 過ぎる日々、と、ステータスの確認



 翌日。



 俺たちは村の大工屋の前にログインをして、輪になっていた。



 セニャが両手を開いてしゃべる。

「ねえ、烈風の地のボス討伐まで、あと9日しかないけど、どうする?」



「オイラが一撃でボスをやっつけってやるって! 心配すんな」

 サクは胸をでんと張る。



 セニャは笑いに体を揺すりながら、

「サクは頼もしいわね」



「あったりまえだい! オイラはこのギルドのエースだぞ?」



 俺はあごに手をつける。

「とにかく、狩りをして、みんなのレベルを上げるしかないな」



「そう」

 メイが頷く。



 セニャが思案顔をする。

「そうよね。それでなんだけど、今日からみんなで、山の上の洞窟にこもることにしましょう」



「洞窟?」

 メイが疑問が向ける。



「うん。この村の山の上に、僕とトキしか知らない洞窟があるの。あそこなら、狩場を独占できるわ」



「行こう」

 メイがやる気をたぎらせて、両手を握る。



「ランタンが必要だな」

 俺は右手を軽く上げた。



「うんうん、洞窟だからね。それじゃあみんなで、道具屋に買い込みに行きましょう。ランタン以外にも、ポーションとか、帰還水晶をいっぱい買わないと」



「オイラは! おやつが欲しいな!」



 メイがサクの肩にそっと手を置く。

「ピクニックじゃない」



「えー! おやつぅ」

 サクが顔をしかめている。



 俺たちは大工屋に預けてあったリアカーを返してもらう。

 また俺が引くことになった。



「それじゃあ、行きましょう」

 セニャを先頭に歩き出した。



 それから俺たちは道具屋に行った。

 必要な道具を買い込み、カバンに入りきらないものはリアカーの荷台に乗せる。

 そして村を出て、洞窟に向かったのだった。



 山道で、ビッグスパイダーが出現した。

 一匹ずつ落ち着いて倒せば、脅威ではなかった。

 それに今はメイとサクがいる。



 4人でかかれば、安全に山を登ることが出来た。



 道はセニャが覚えていた。



 洞窟にたどり着き、俺はリアカーの持ち手を置く。

 さすがに洞窟内にリアカーを運ぶのは困難だった。



「リアカーはここに置きましょう」



「そうだな」

 俺は頷く。



「え? だけどさ、誰かに盗られたらどうするの!?」

 サクが唇をすぼめる。



 メイがサクの頭に優しく手をのせた。

「大丈夫。誰も来ない」

「そうかなあ? 通りかかる人もいると思うけど」



 俺たちは顔を見合わせる。



「盗られたときは、あきらめるしかないわね」

 セニャが両腕を胸にくむ。

「だって持っていけないもの」



「仕方ないか」

 俺は頷く。



「うん」



「えー! もったいないよ」

 サクが弱った顔をする。



「じゃあサク、一人でリアカーを見張ってる?」

「えー! やだよ。オイラ一人じゃ、モンスターが来たらさすがに死ぬって」

「サクはエースじゃないの?」

「エ、エースだけどさあ。一人じゃ無理だよ」

「ふーん。じゃあ、一緒に行きましょ?」

「仕方ないなあ! バイバイッ、リアカーとアイテム!」



 サクは踏ん切りがついたようだ。



 リアカーに手を振っている、



「それじゃあ、行くわよ。どんなモンスターが出るか分からないから、みんな、気を付けてね」

「おう」

「うん」

「がってん! 承知の助!」



 俺がランタンにマッチを入れて火をつけた。

 それを持って先頭に立とうとする。

 後ろから肩を掴まれて立ち止まる。



 振り返った。



「ん? メイ、どうした?」

「私が先頭」

「いや、いいって。俺が……」

「ダメ」

「なんで?」

「私、盾だから」

「ま、まあそういうのなら」



 俺たちのやり取りをセニャが眉をひそめて見つめていた。



 メイに先頭をゆずり、彼女が先に洞窟へ侵入する。

 彼女は剣と盾を持っているため、ランタンを持てない。

 俺はすぐ後ろから道を照らした。



 昨日来た時にあった地面に落ちている鎧やローブ、壁に刺さっている剣はそのままだった。



 洞窟の奥からカタカタと音がする。



 メイが立ち止まる。

「何か来る」



 俺がランタンの明かりを照らすと、ガイコツのモンスターがこちらへ向かってきている。



 スケルトンだ。



「ランタンを置くぞ」



 置いて、戦闘態勢に入る。



 スケルトンの右こぶしをメイが盾で防ぐ。

 よろけたモンスターを俺が包丁で叩くように切る。



 後ろからはサクの弓矢と、セニャのファイアーボールが飛来する。



 スケルトンはすぐに力尽きて倒れた。



「なんだ、弱いじゃない」

 セニャが両手を腰に当てて息をついた。



「ふん! オイラの弓矢のおかげだな!」

 サクはふんぞりがえっている。



「先に進む」

 メイが歩き出す。



「ゆっくり進んでくれ」

 俺はランタンを持った。



 洞窟に出るモンスターは、スケルトン、スケルトンソルジャー、ゾンビ、一つ目小僧と言った、アンデット系のモンスターばかりだった。



 ひらけたところを見つけて、そこにランタンを置く。



 そこで俺たちは、飽きても疲れても狩りを続けた。



 ある時、スケルトンソルジャーがボーンソードという剣を落とした。



 俺がそれを装備することになり、包丁とはやっとのことでお別れとなった。



 洞窟にこもって狩りをしながら、一週間の日々が過ぎていく。



 ボス討伐の日まであと二日だった。



 俺たちはレベルが上がり、みんなで確認しあった。 



 みんなのステータスはこんなふうなものである。



 名前  トキト

 レベル 9

 HP  75

 攻撃力 17

 防御力 14

 素早さ 116

 魔法攻撃力 0

 魔法防御力 5

 会心率    2、5%

 会心ダメージ 1、1倍

 スキル   おたけび

 アビリティ なし



 もちろん素早さにステータスポイントを全振りしている。

 ちなみに防御力が高いのは、非表示にしている装備のせいだ。

 この一週間の間で、洞窟と村を行き来して、みんなの分そろえたのだ。

 攻撃力も、ボーンソードのおかげで通常値より4上がっている。



 次はセニャである。



 名前  セリハ

 レベル 7

 HP  43

 攻撃力 3

 防御力 12

 素早さ 9

 魔法攻撃力 123

 魔法防御力 28

 会心率    2、5%

 会心ダメージ 1、1倍

 スキル   ファイアーボール アイスランス ヒール キュアポイズン ヘイスト

 アビリティ 恋心LV1



 セニャは新しいスキルを二つ覚えた。

 アイスランスとキュアポイズンである。

 俺とは違ってレベルが上がるごとに魔法を覚えるようだ。

 さらに恋心と言うアビリティも覚えていた。



「セニャ、お前、誰かに恋してるの?」

 俺が突っ込んで訊くと、

「う、うるさぁぁい! 見るんじゃない! トキの、えっちっちー」

 ステータスボードをすぐにしまった。



 次はメイである。



 名前  メイコ

 レベル 11

 HP  201

 攻撃力 8

 防御力 20

 素早さ 5

 魔法攻撃力 0

 魔法防御力 14

 会心率    2、3%

 会心ダメージ 1、1倍

 スキル   ドレインスラッシュ 

 アビリティ 恋心LV1



 メイはHPがべらぼーに高い。

 ステータスポイントをHPに全振りしているからだった。

 そしてスキル、ドレインスラッシュをはじめから覚えている。

 洞窟の狩りをしている時に何度もそのスキルを見る機会があった。

 それを使うと5秒間の間、攻撃時に敵のHPを吸い取ることが出来る。

 そしてセニャと同じく、アビリティに恋心というものを覚えていた。



 セニャがギクッとしてたずねる。

「メイも、恋心、覚えてるね」

「うん。覚えた」

「だ、誰かに恋をしているの」

「……うん」

「え? だ、誰?」

「内緒」

 メイは首を振った。



 相手は教えてくれないようだ。

 それにしても、恋心というアビリティはどんな効果があるのだろうか?



 次はサクである。



 名前  サク

 レベル 7

 HP  47

 攻撃力 8

 防御力 12

 素早さ 20

 魔法攻撃力 6

 魔法防御力 6

 会心率    12、5%

 会心ダメージ 1、2倍

 スキル  落とし穴

 アビリティ なし



 サクは会心率にステータスポイントを全振りしていた。

 会心が出ると攻撃力は、サクの場合なら1.2倍になる。

 その上、敵の防御力を貫通できる。

 セニャの魔法ほどではないが、サクはギルドで2番目に与えるダメージが高いのだった。



「へっへーん、どうだ! オイラのステータスは。参ったか!」

「うんうん、参った」

 セニャはサクが可愛くて仕方ないようで、彼がしゃべるといつもニコニコする。

「惚れんなよな!」

「それは、無いかな」

「嘘でも惚れるって言え!」

「惚れる惚れる」

「へっへー」



 サクが鼻の頭をかいた。



 以上である。



 その日、俺たちはランタンの油を買いに村へ戻っていた。

 リアカーはワープができないので、洞窟前に置いてきている。



 広場を歩いていた時のことだ。



 事件は起こった。


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