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13/225

1-13 衣装



 村の服屋に入る。



 女性店員は笑顔で、服の作成の依頼を受けくれた。



 カウンターの前に、セニャとメイが並ぶ。



「作りたい服はどんな服ですか?」

「あの、青ヤギの毛皮で作れる服が欲しいんですが」

「青ヤギの毛皮ですね! それでしたら、女性ものは、ワンピースかローブ、それか浴衣が良いと思います。上下別の着物も作れますが、その場合毛皮が、2倍の量必要になります」



 セニャとメイは顔を向けあう。



「どうしよう」

「毛皮は40枚しかない」

「そうだよね。トキとサクの分もあるし、僕、ローブにするよ。魔法使いだから」

「じゃあ、私、ワンピース」



 店員はカウンターに両手をそっと置く。



「ワンピースとローブが一つずつですか?」



「はい」

 セニャは頷く。

「それと、男物の服を二つ、作って欲しいですが」

「そちらにいる、男性と、お子さんのものですか?」



 店員は俺とサクに手を向ける。



「はい、そうです」

 セニャが苦笑しつつ答える。



「お子さんじゃんねえやーい」

 サクがいきり立つ。



「同じようなもの」

 メイがぼそりとつぶやいた。



「男性ものは、上下別のものが多いのですが」

「オススメはなんですか?」

「オススメは、ジャケットか浴衣になります」



 セニャがこちらを振り向く。

「二人とも、何にする?」

「オイラ! オイラは革ジャン! とびきりかっけーのを作って!」

「分かった」

 セニャが微笑む。



「じゃあ俺は、浴衣だな」

「いいのね?」

「ああ、頼んだ」



 セニャがカウンターに体を向ける。

「ジャケットと浴衣を一つずつ」

「はい。以上ですか?」

「以上です」

「それでは服が4枚で、青ヤギの毛皮が40枚必要になります。それと、服1つにつき、お値段が、銀貨1枚になります」



「分かりました」

 セニャがメイに顔を向けた。



「さっきの拾った金貨を使おう。そうすれば細かいのに崩せるし」

「分かった」

 メイがカバンの中から金貨を取りだす。

 店員に渡した。



「まいどありがとうございます!」

 店員が引き出しを開けておつりをくれる。



 銀貨6枚が返ってきた。

 セニャがみんなに配る。



「メイ、もう1枚、崩れなかったから、サクの分も持っててね」

「了解」

「トキ、僕、トキの分も、銀貨もう1枚持ってるから」

「それはどういうことだ?」

「持ってるから」

「ま、まあ分かったよ」



 セニャがニヤリと笑う。



 それから。



 店内にすでに運び込んでいた青ヤギの毛皮を、カウンターから手渡す作業をした。

「少々お待ちください」



 毛皮を受け取り終えると、店員は奥の扉をくぐっていった。

 そしてすぐに服を作り終えて出てくる。



「はやっ! 作るのはやっ!」

 サクがずっこけそうになっていた。



 制作時間をすっ飛ばしている。

 このあたりゲームである。



 俺たちは服をもらった。

 みんな服の色が青かった。



 青ヤギの毛皮で作ったのだから当然だった。

 サクの革ジャンは青銅色に光っており、格好良かった。



 俺もそれにすれば良かったと後悔する。



「着替える場所はありますか?」

 セニャが店員にたずねる。



「あちらになります」

 左手で示す。



 その方向には更衣室が二つあった。



「使わせてもらいますね」

「どうぞご自由に」



 俺たちは更衣室に歩いていく。



 セニャが立ち止まり、振り返る。

「女性から着替えるから」

 ビシッと人差し指を立てた。

「覗いちゃだめよ」



「誰が、セニャの汚い裸なんて見るもんか」

 サクがいたずらっぽく笑う。



「だーれーのー、裸が汚いって?」



「ダメ」

 メイがサクの頭にチョップする。



「痛っ、姉ちゃん、今のは正直に言っただけだい」

「そういうこと言っちゃダメ」

「う、うー、分かったよお」



 セニャが苦笑する。

「まあいいわ。それじゃあ、待っててね」



「ああ」

 俺は答えて、更衣室に背中を向けた。



 二人が更衣室に入る。

 カーテンを閉める音がした。



「ニヒヒヒヒッ」

 サクが不気味な笑い声をたてる、

「どうした?」

「トキ兄ちゃん、セニャと姉ちゃんと、どっちの裸がみたい?」



 俺は振り返る。



 ……まさか、のぞくつもりか?



「おいおい、そういうことをしたらダメだ」

「大丈夫だよ。兄ちゃん、オイラ子供だから、そういうことをしても許されるんだ」

「ダメだ」

「にーちゃんだって見たいでしょっ、自分に正直になりなよ」

「正直って言ったってなあ」

「分かったよ。じゃあ、覗きはしないけど、もしもの話、見れるならどっちの裸が見たい?」

「それは……」



 俺は顔を赤くしてうなった。

「まあ、両方見てみたいが」



「ガッテン了解!」

 サクが走り出す。



「お、おいっ、やめろ!」



「南風と桃源郷の術!」

 サクが二つの更衣室のカーテンを開く。



「キャ、キャァァア!」

「えっ?」

 二人の下着姿が露わになる。



 どちらも平民服を脱いだばかりのようで、純白のブラジャーとショーツの格好だった。



 セニャの下着姿。

 どちらも花柄だ。

 彼女は、女性的な肉づきをしている。

 まるまると実った胸に、ぷっくりと大きなお尻をしていた。

 ぷるるんと震えており、甘く熟した果実のようである。



 たぶん、俺の尻より大きいと思う。



 メイの下着姿。

 どちらにも赤いリボンがついていた。

 彼女はほっそりとした体つきをしている。

 腕やふくらはぎがキュッとしまっている。

 体の線が細く、腰は細かった。

 肩が小さく、守ってあげたいような気持ちを起こさせる。



 ……可憐だ。



 二人がカーテンをぴしゃりと閉める。



「ちょっと! 覗かないでって言ったでしょ!?」

 セニャがぷんぷんと怒っている。



「サク、後でおしおき」

 メイの静かな声も、どこか怒りを含んだものだった。



「オイラじゃないやい。カーテンを開けたのはオイラじゃないやい」

 サクが声高に叫ぶ。



「お、おいっ、サク、お前じゃないか!」

「オイラじゃないやい。兄ちゃんだい。オイラじゃないやい。兄ちゃんだい」

「ち、違っ」



 やがて、着替えを終えた二人が更衣室から出てくる。

 二人とも素敵な姿だった。



 セニャは、ファンタジー映画に出てくるヒロインのような魔法使いの出で立ちである。



 メイは、これから彼氏とデートにでも行くようなオシャレなワンピース姿だった。



 二人が俺に近づいてくる。

 似合ってるな。

 その言葉を言う前に、



「最低!」

 セニャが俺にビンタをした。



「失望」

 メイが俺の頭にチョップをする。



「ぬ、濡れ衣だ」

 俺はたたかれた部分を手で押さえた。



「でも、見たんでしょ?」

 セニャが唇をとがらせる。



 確かに見た。



 ここは……謝るしかない。



「ご、ごめん」



「もうっ」

 セニャがそっぽを向く。



 メイが俺の耳元で、

「トキくんにだけですよ」

 小声でささやいた。



 えっ!?



 俺はびっくりして彼女の顔をまじまじと見る。



 メイの頬が朱に染まっていた。

 笑顔である。



 素直に可愛いかった。



 俺は恥ずかしくなって、頭をかく。

「あ、ありがと」



「オイラじゃないやい! オイラじゃないやい!」

 すぐそばでは、サクが自分の頬を両手で挟んで、ふてぶてしい面をしていた。



 それから。



 俺とサクも着替えを済ませる。

 更衣室を出た。



 とは言ってもサクの方は平民服にジャケットを羽織っただけで、更衣室を使う必要はなかった。



「へー、結構似合うのね」

 セニャが俺の浴衣姿に感心していた。



「格好良い」

 メイが小さな拍手をくれた。



「オイラは? オイラは?」

 革ジャンを着たサクがその場で横に一回転する。



「可愛い」

 セニャが口元に手を当てる。



「まあまあ」

 メイが腹に両手をくんだ。



「へっへーん、容姿が上がったぜ!」

 サクは腰に両手を当てて胸をはる。



 実際、青銅色のジャケットは、ずいぶんと見栄えが良かった。

 ちなみに、元々着ていた平民服は、服屋の女性店員に話して下取りしてもらった。

 二束三文にしかならなかった。

 サクは平民服の上にジャケットを着ているので、下取りをしてもらっていない。



 そして。



 新しい衣装を堪能し終えた俺たちは、ログアウトすることにした。



 ステータスボードを見ると、現実はもう夜の八時を過ぎている。



 その際、リアカーをどうすれば良いかという話になった。

 放置すれば、誰かに盗まれる危険性がある。

 みんなでまた大工屋さんに向かった。

 大工屋さんは、預かってくれると言った。

 リアカーを預ける。

 


 また明日の九時にログインする約束をして、俺たちはゲームを終えたのだった。

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