1-13 衣装
村の服屋に入る。
女性店員は笑顔で、服の作成の依頼を受けくれた。
カウンターの前に、セニャとメイが並ぶ。
「作りたい服はどんな服ですか?」
「あの、青ヤギの毛皮で作れる服が欲しいんですが」
「青ヤギの毛皮ですね! それでしたら、女性ものは、ワンピースかローブ、それか浴衣が良いと思います。上下別の着物も作れますが、その場合毛皮が、2倍の量必要になります」
セニャとメイは顔を向けあう。
「どうしよう」
「毛皮は40枚しかない」
「そうだよね。トキとサクの分もあるし、僕、ローブにするよ。魔法使いだから」
「じゃあ、私、ワンピース」
店員はカウンターに両手をそっと置く。
「ワンピースとローブが一つずつですか?」
「はい」
セニャは頷く。
「それと、男物の服を二つ、作って欲しいですが」
「そちらにいる、男性と、お子さんのものですか?」
店員は俺とサクに手を向ける。
「はい、そうです」
セニャが苦笑しつつ答える。
「お子さんじゃんねえやーい」
サクがいきり立つ。
「同じようなもの」
メイがぼそりとつぶやいた。
「男性ものは、上下別のものが多いのですが」
「オススメはなんですか?」
「オススメは、ジャケットか浴衣になります」
セニャがこちらを振り向く。
「二人とも、何にする?」
「オイラ! オイラは革ジャン! とびきりかっけーのを作って!」
「分かった」
セニャが微笑む。
「じゃあ俺は、浴衣だな」
「いいのね?」
「ああ、頼んだ」
セニャがカウンターに体を向ける。
「ジャケットと浴衣を一つずつ」
「はい。以上ですか?」
「以上です」
「それでは服が4枚で、青ヤギの毛皮が40枚必要になります。それと、服1つにつき、お値段が、銀貨1枚になります」
「分かりました」
セニャがメイに顔を向けた。
「さっきの拾った金貨を使おう。そうすれば細かいのに崩せるし」
「分かった」
メイがカバンの中から金貨を取りだす。
店員に渡した。
「まいどありがとうございます!」
店員が引き出しを開けておつりをくれる。
銀貨6枚が返ってきた。
セニャがみんなに配る。
「メイ、もう1枚、崩れなかったから、サクの分も持っててね」
「了解」
「トキ、僕、トキの分も、銀貨もう1枚持ってるから」
「それはどういうことだ?」
「持ってるから」
「ま、まあ分かったよ」
セニャがニヤリと笑う。
それから。
店内にすでに運び込んでいた青ヤギの毛皮を、カウンターから手渡す作業をした。
「少々お待ちください」
毛皮を受け取り終えると、店員は奥の扉をくぐっていった。
そしてすぐに服を作り終えて出てくる。
「はやっ! 作るのはやっ!」
サクがずっこけそうになっていた。
制作時間をすっ飛ばしている。
このあたりゲームである。
俺たちは服をもらった。
みんな服の色が青かった。
青ヤギの毛皮で作ったのだから当然だった。
サクの革ジャンは青銅色に光っており、格好良かった。
俺もそれにすれば良かったと後悔する。
「着替える場所はありますか?」
セニャが店員にたずねる。
「あちらになります」
左手で示す。
その方向には更衣室が二つあった。
「使わせてもらいますね」
「どうぞご自由に」
俺たちは更衣室に歩いていく。
セニャが立ち止まり、振り返る。
「女性から着替えるから」
ビシッと人差し指を立てた。
「覗いちゃだめよ」
「誰が、セニャの汚い裸なんて見るもんか」
サクがいたずらっぽく笑う。
「だーれーのー、裸が汚いって?」
「ダメ」
メイがサクの頭にチョップする。
「痛っ、姉ちゃん、今のは正直に言っただけだい」
「そういうこと言っちゃダメ」
「う、うー、分かったよお」
セニャが苦笑する。
「まあいいわ。それじゃあ、待っててね」
「ああ」
俺は答えて、更衣室に背中を向けた。
二人が更衣室に入る。
カーテンを閉める音がした。
「ニヒヒヒヒッ」
サクが不気味な笑い声をたてる、
「どうした?」
「トキ兄ちゃん、セニャと姉ちゃんと、どっちの裸がみたい?」
俺は振り返る。
……まさか、のぞくつもりか?
「おいおい、そういうことをしたらダメだ」
「大丈夫だよ。兄ちゃん、オイラ子供だから、そういうことをしても許されるんだ」
「ダメだ」
「にーちゃんだって見たいでしょっ、自分に正直になりなよ」
「正直って言ったってなあ」
「分かったよ。じゃあ、覗きはしないけど、もしもの話、見れるならどっちの裸が見たい?」
「それは……」
俺は顔を赤くしてうなった。
「まあ、両方見てみたいが」
「ガッテン了解!」
サクが走り出す。
「お、おいっ、やめろ!」
「南風と桃源郷の術!」
サクが二つの更衣室のカーテンを開く。
「キャ、キャァァア!」
「えっ?」
二人の下着姿が露わになる。
どちらも平民服を脱いだばかりのようで、純白のブラジャーとショーツの格好だった。
セニャの下着姿。
どちらも花柄だ。
彼女は、女性的な肉づきをしている。
まるまると実った胸に、ぷっくりと大きなお尻をしていた。
ぷるるんと震えており、甘く熟した果実のようである。
たぶん、俺の尻より大きいと思う。
メイの下着姿。
どちらにも赤いリボンがついていた。
彼女はほっそりとした体つきをしている。
腕やふくらはぎがキュッとしまっている。
体の線が細く、腰は細かった。
肩が小さく、守ってあげたいような気持ちを起こさせる。
……可憐だ。
二人がカーテンをぴしゃりと閉める。
「ちょっと! 覗かないでって言ったでしょ!?」
セニャがぷんぷんと怒っている。
「サク、後でおしおき」
メイの静かな声も、どこか怒りを含んだものだった。
「オイラじゃないやい。カーテンを開けたのはオイラじゃないやい」
サクが声高に叫ぶ。
「お、おいっ、サク、お前じゃないか!」
「オイラじゃないやい。兄ちゃんだい。オイラじゃないやい。兄ちゃんだい」
「ち、違っ」
やがて、着替えを終えた二人が更衣室から出てくる。
二人とも素敵な姿だった。
セニャは、ファンタジー映画に出てくるヒロインのような魔法使いの出で立ちである。
メイは、これから彼氏とデートにでも行くようなオシャレなワンピース姿だった。
二人が俺に近づいてくる。
似合ってるな。
その言葉を言う前に、
「最低!」
セニャが俺にビンタをした。
「失望」
メイが俺の頭にチョップをする。
「ぬ、濡れ衣だ」
俺はたたかれた部分を手で押さえた。
「でも、見たんでしょ?」
セニャが唇をとがらせる。
確かに見た。
ここは……謝るしかない。
「ご、ごめん」
「もうっ」
セニャがそっぽを向く。
メイが俺の耳元で、
「トキくんにだけですよ」
小声でささやいた。
えっ!?
俺はびっくりして彼女の顔をまじまじと見る。
メイの頬が朱に染まっていた。
笑顔である。
素直に可愛いかった。
俺は恥ずかしくなって、頭をかく。
「あ、ありがと」
「オイラじゃないやい! オイラじゃないやい!」
すぐそばでは、サクが自分の頬を両手で挟んで、ふてぶてしい面をしていた。
それから。
俺とサクも着替えを済ませる。
更衣室を出た。
とは言ってもサクの方は平民服にジャケットを羽織っただけで、更衣室を使う必要はなかった。
「へー、結構似合うのね」
セニャが俺の浴衣姿に感心していた。
「格好良い」
メイが小さな拍手をくれた。
「オイラは? オイラは?」
革ジャンを着たサクがその場で横に一回転する。
「可愛い」
セニャが口元に手を当てる。
「まあまあ」
メイが腹に両手をくんだ。
「へっへーん、容姿が上がったぜ!」
サクは腰に両手を当てて胸をはる。
実際、青銅色のジャケットは、ずいぶんと見栄えが良かった。
ちなみに、元々着ていた平民服は、服屋の女性店員に話して下取りしてもらった。
二束三文にしかならなかった。
サクは平民服の上にジャケットを着ているので、下取りをしてもらっていない。
そして。
新しい衣装を堪能し終えた俺たちは、ログアウトすることにした。
ステータスボードを見ると、現実はもう夜の八時を過ぎている。
その際、リアカーをどうすれば良いかという話になった。
放置すれば、誰かに盗まれる危険性がある。
みんなでまた大工屋さんに向かった。
大工屋さんは、預かってくれると言った。
リアカーを預ける。
また明日の九時にログインする約束をして、俺たちはゲームを終えたのだった。




