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地球から地球に転生した男 〜黒銀のミストリオン〜   作者: 大志目マサオ
序章 転生
1/11

第一話 事故。転生。地球?

読んでいただければただただ幸いです。

 得てして人間は思いもよらない選択をすることがある。みんなも何かしら見たことや聞いたことぐらいはあるだろう。

 え、まさかこの人が?あの人があんなことするなんて意外だ…なんてことが、そしてその大半が選択した本人にとっても意外だったに違いない。きっとそうに違いない。そうでなければ思いもよらないなんていう言葉はきっと使われなかったに違いない。そしてこれは韻を踏もうという訳ではない。俺はラッパーじゃない。はい。


 さあ、という訳でだ。まず早速結論から言わせてもらおう。俺は死ぬ。と


 そう、間違いなく死ぬ。うん、最早死ぬのはいい、良しとしよう。トラックに思い切り轢かれてしまったんだ。そりゃ死ぬだろう。

 代わり映えのしない生活にはウンザリしていたし。趣味や娯楽に関してはこの2021年の現代日本は本当に素晴らしく捨て難いことこの上無いが、まあ同時に働く上ではこの社会に一種の諦念のような気持ちも抱いていた。

いや、正確には社会に、ではないのだろう。自分という人間に、が正解だ。

大体社会がどうのと言える程社会の仕組みは知らないし。

第一デカいもんにならなんでも責任をおっ被せときゃいいのが心の守り方だ。

 何をやってもうまくいかず、長続きせず、出来ないことに内心で言い訳をし、自分に落ち度は無いと信じ込む精神的防衛機構を作り上げていた。

名付けてメンタルガードシステムだ。そのままだ。

 そんな風にしてないといけないぐらい脆弱な人間だったんだ。

だが、今回はきちんとシステムを発動出来なかった。自己防衛本能よ何処へ行った。


 この世界の何処で誰が死のうが知ったこっちゃないぐらいに思っていた。だが、人間目の前の出来事にはやはり反応、反射してしまうものだ。いや、ものだと知った。

 車道に飛び出した男の子に対して、咄嗟に身体が反応してしまった。男の子を歩道に投げ、俺はそのまま車道に…まったく自分という人間がわからん。

 何故こんなことに…あらぬ方向に指や腕、足が曲がり、大量の血が出ている。自分を中心に路上はものすごい血の量だ。悲惨極まりない。周囲もあれは助からないと確信したような眼差しに見える。邪推だろうか……

 助けた男の子の方はといえば、無傷とはいかないが死にはしないだろう。血は多少出ているが擦り傷程度に見える。まあ助かるだろう。俺に比べればなんてことはない、軽傷のようだ。


 降って湧いたような善意だが…いや、善意かどうかもわからんが、まさに命をかけて救ったんだ、あの子が助かって無意味にならなかったなら良かったとしておこう。


 ……それにしても終わりは呆気ないものだ。思い返せばだらしないというか、しがない人生だった…実家に34になっても住み続け、自営といえば聞こえはいいが好き勝手に働き、稼ごうと思えばそれなりに出来たのに、普通に暮らしていく程度で満足し、出不精、体たらくが災いして、のらりくらりで彼女も約8年いなかった。次に女性とお近付きになったらDTの如く初々しく付き合えたに違いない。いや、そんなオッサンはキモいか、いや誰がオッサンだ。

 それと友人は僅かにいたが、まあ向こうからすれば付き合いの悪いヤツってのが俺の評価だろう。俺ならこんなヤツはそう評価する。


 そんな男の顛末にしちゃあ上出来に違いない。一応若い生命を救ったんだ。家族には迷惑ばかりかけたが、優しい家族だ。泣いて悲しんではくれるだろう。さすがにお別れぐらいは言いたかったが、人生なんてものは終わる時は一瞬だ。老衰や大病でベッドの上でもない限り、失う側からすればある日突然、なんの前触れもなしに、ってのが世の常だろう。


 ……ていうかもうぼちぼち身体中痛いというか、少し冷静になり始めてもうそんなん通り越してアドレナリンの効果切れてきてるから、早く死んで無になるなり、次の人生即座にオギャアでお願いします。







 あ、最後にマ○クのポテト食いたかったなぁ……あとシェイクも……







「まったくなっがい前置きね。はい、であなたは…あぁ、転生の人ね。久しぶりだわ。」


 俺はバッと上体を起こした。


「……………………ん?傷が無い?」


 いや、つうかここどこよ。前置きってなによ。よく見りゃ界○様のヤツじゃんここ、宇宙空間ぽい所に小さな惑星?いやアレよかもうちょい広いか、それにデカい宝石みたいなヤツと鏡いっぱい浮いてるし……それと……白いテーブル、イスには……女の人?


「どこって…場所なんかどうでもいいのよ。あなたは転生するの」

「はい…あのぉ…えっとぉ…………………………はい?」


 なんだ突然、このピンク髪の古代の神話をモチーフとした絵画の神様連中御用達ローブ1枚豊満ボディーギャルは


「ピンクギャルって…なにあんたの時代っぽくチョ~草はえるんですけど~!とか、映え~!映え~!って言えばいいワケ?だからあ~な~た!」


 なにこの人?めちゃくちゃディスってるでしょ。テンションついてけないわ。


「え……と、申しますと?」


「は?なんかあんたイラッとするわねぇ。わざと言ったに決まってんでしょ?察しもノリも悪い上に見た目も45点ぐらいだし、普通に考えてわかるでしょ?」


 いや普通にはわからないだろ。


「ったくみんな大好き転生よ転生!」


 そしてこの顔をしたり顔というに違いない。フフンッと笑いながらの腕組みだ。キリッ!ドヤッ!ていうやつだ。どういうテンションだこの女。

 ……ていうか待て、ちょっと待て、は?何点満点中の45点だよピンクBBAコラ。気使ってギャルっつったんだよ。ビミョーなお年頃っぽいお姉さんにはそういう風に言うもんだろ。


「ピ、ピピピ……ピンクBBA……ですってぇ……!?」


 てか急にめちゃくちゃ口悪いし……まあ、なんだ、まあ…うん、確かに?25超えてからわ~?ぁあ~モテ具合も?すこぶる調子悪いけどさ~?ちょ~っと太っちゃったしぃ?見た目のことはさぁ……言わない約束じゃん?


「あんた誰にモノ言ってんのかわかってんの!?」

「え!あ!ていうか待って!なんで聞こえてんの⁉」

[こ、れ、で、わ、か、る、か、し、ら~!?]

「え、なんでなんでなんで!?頭にピンクBBAの声が!」

「お前マジでやったろけ!?神相手だぞ神!尊き女神様になんちゅう口の利き方しとんじゃコラ!」


いやいや神ってなんだよ、それにテンプレだろこんなん、これでも早く理解した方だろ、いちいち目くじらたてんなよ、カワイイお顔にシ……ワが……ん……あれ……息が……く、苦しい……!


 自称女神の瞳がピンク色に輝いている。


「カワイイで止めとけ、天ぷらとかマジで意味わからんし、お前転生させんのやめんぞ?あん?不死属性のgkbrにでもしてやろうか?」

「いや、あの……はい、すいません。それだけは勘弁してください。自分が間違ってました。あと天ぷらではありません。」


 怖すぎんだろ。gkbrだけはダメだって……


「ったく、天ぷらっつっただろテメェ……ふぅ……クソが……はい。黙って従っていれば良いのです。人間に調子を合わせるのは疲れます。天ぷらは本当に意味がわかりませんが、お決まりの、です。わかりますね?」


 クソっつったよな今、女神様口悪すぎないか?あとだからテンプレな?もうその俺も頭痛が痛い的なこと言って悪いんだけど、つまりそのお決まりのやつってことなんだわ。


 ――ギロリ。再び瞳が光り出す。


「はい!すいません!私は愚か者です!えっと、女神様に従う忠実な下僕です!」


 選手宣誓よろしく、俺は左手を胸に、右手を天高く突き上げ宣言した。もう一度スリーパーホールドピンキーアイは勘弁だ。


「ったく文句あんなら死んでまで人助けなんかすんなやメンドクセェ…思いつきで死んだのかテメェは、システム上来なきゃいけねぇんだからこっちの身にもなれやこのスカポンタンが!マジでイラつく……はぁ……いかんいかん……調子狂うわコイツ……まあ、ふん、よろしい。さ、それでご希望は?剣と魔法の世界でチートつけ放題、魔王にでも勇者にでも勝手になりやがれっ!て、感じだけど?」


【これも仕事よ。さっさと終わらしてネ○○リで続き観るんだから。もうあのドラマも最終シーズンなのに、本当に良いところでこれよ。頑張れ私!】


「いえ、魔王も勇者も絶対に嫌です!チートも最初から最強はつまらないのでやりすぎなのは無しで大丈夫です!」

「へぇ~なかなか珍しいわね。別に最強で良くない?天下に並ぶ者無し!みたいな?つーかならどうすんのよ?」


 口調の変化乱調すぎない?情緒不安定なの?


「――あんたもう一度よ、もう一度礼を欠いたら事故の瞬間を永久ループさせるわ」


いややめて!神じゃなくて悪魔なんじゃねぇか!


「悪……魔……?」

「いやいやいやいや!なんも言ってません!本当です!本当に本当です!」


 俺は即座に土下座した。直感がぼちぼちヤバいと言っている。


「はぁ……なんなのよあんた。ナメプ?てか長い、無駄な話が長すぎてツラい、早く帰りたいのに……もういいわ、それで?何が望みなの?さっさと終わらせたいんだけど?」


 確かに埒が明かない。困惑していたとは言え少々茶番が過ぎたようだ。話を進めよう。


「はい、ではまずいくつまでなら大丈夫でしょうか?」


「んなもん何個でもいいわよ。無理なもんは言ってあげるから思いつく限り言ってみなさい。」


 何個でもいいんだ。てか女神様めちゃくちゃダルそうじゃん。あ、嘘です。


「は!では、まず容姿は中の上、顔面ドアップでもツラくないぐらいで、身長は178cm、体重73kgで筋肉質、特に転生先で差別とかの問題が無ければ日系の顔立ち、というかこの45点顔を75点ぐらいに引き上げる感じで…あ、あと絶対に体毛は薄め、いや無くてもいいです。そんで体臭はバラの香り、あ、これも無ければ無いでいいです。それと…あとはそうだな、カワイイ幼馴染とぉ……えっと、あとは……」


まだまだ出る筈だ。考えろ俺。こういうのは最初が肝心なんだ。


「ち、ちょっと待ちなさい!そういう細か~い感じなの?」

「いやいや女神様も人が悪いですねぇ…さっき何個でもいいって言ったじゃないですか、それともこういうのは無理なんですか?」


【いちいちカンに触る言い方ね。最高神の力をナメてんの?】


「……全然無理じゃないわよ。容姿の方は遺伝の問題もあるから限度はあるけど、なるべく近づけるわ。あ、あと幼馴染は無理よ。あんた以外の他人を弄るのは一応ルール違反なの。あくまで弄るのはあんた個人のことだけ、まあ金持ちで血筋も良くしてあげるわ。幼馴染はたまたまいたらラッキーぐらいに思っとくことね」


 意外にちゃんと制約は設けてあるんだな。


「あ、はい、ではあとは……もしやスキルの類とかは存在しますか?」

「はいはいあるわよ~なんでもどうぞ~」

「それは素晴らしい!では、言語関係とマップは最初からください。異空間収納的なやつも。あとはなんでも習得できるよう体術、剣術や魔法の才能を盛りだくさんで!」


【この男、友達少ないのは納得ね。まず図々しい。最初から全然強いわよそれ。願いが細かいし鬱陶しいし。あと髭が汚い。大体そこまでスキル付けたらもういくつ付けようが変わんないでしょ。アホなのかしら?

こうなったら一番楽勝で手っ取り早いやつにしとくか。まとめてブチ込めば万事解決よ】


 女神様は何やらテーブルの上に乗っかったパソコンみたいなフォルムの宝石の塊を、まるでタッチパネルでも操作するかのような動きを繰り広げている。さながらタブレット式端末のようだ。


「あーはいはい、ちょっと待ちなさい……え~っと……基本はこれで……良し、と。もういいわね。あとはテキトーにパパッとやっとくわね~」


 それにしてもテキトーにパパッとねぇ…いえ!さすがです!


「ありがとうございます。ところで女神様、今なんか失礼なこと考えてませんでしたか?」

「そ、そんな訳ないでしょ~!このテッラ様がそんな凡俗な人間みたいなこと考える訳ないじゃな~い!」


【人間のクセに鋭いわね意外と、こういうところもかなりのマイナスポイントよ】


「……まあ良いですが、お名前はテッラ様というのですね」

「ちょ~っと待って~……よし、終わった!これでいいわ。ええ、そうよ。特別にテッラ様と呼ばせてあげるから感謝しなさい。さて、それでもうすぐ転生させるけど心の準備はいいかしら?」


 え、もう?女神様はものの数分でタブレットもどきの操作を終えて早くも帰りたそうだ。


「はい……あ、最後に一つ、良いでしょうか?」


「もう……なによ、早くしてくれない?早く帰りたいのよこっちは」


 なんやかんやひと悶着あったが、この女神様に世話になったは事実だしな。向こうにとっては仕事かも知れないけど、俺にはこの上無い幸運だ。


「……またいつかテッラ様にお会いできますでしょうか?」


「え、会う?……ん~こっちからなら無制限に~とはいかないけど干渉ぐらいはできるわよ。交信はできるけど、まあ直接会うのは無理って感じになるでしょうね」


 何か含む言い方だな。まあいいか。


「では、テッラ様の気が向いた時で構いません。またお話しする機会をください」


 いや待て、良くないな。含みの部分聞いといた方がいいか、感謝とそれは別の……


「殊勝ね!!」


 完全に遮断された。そんなに帰りたいのか、何をそんな…


「いいわ!たまに連絡してあげる。最初にちょこ~っと痛い思いするかも知れないけどね……まあ次の人生はもう少し命を大事に生きなさいよ?」


 え、痛いの?それはイヤだな。痛いのとくすぐったいのだけはやってないんだよな。


「はい、ありがとうございます。次はもう少しだけ自分を大事にして頑張ってみようと思います!」


 身体が淡い光に包まれ始めた。優しく、暖かい光だ。

 と、いかんいかん、一番大事なことを聞かなくては


「あの、そういえばテッラ様、僕はどこへ転生するのでしょうか?」

「あら、言ってなかったかしら、まあその辺は色々と複雑な事情があって……」


 それは消える寸前、転生の光は終盤思ったより騒々しく全ては聞き取れなかったが最後の方は聞こえた。


「あんたがま……そう……るか……いの地球よ!じゃあまたね~!』


 え、は?え、地球なの⁉ええええええ!どういうことおおおおおおおお!!


 俺は光に吸い込まれた。


 吸い込まれる寸前、最後に見たピンク髪のギャル女神様はひと仕事終えたと言わんばかりに満面の笑みであった。


 その笑顔は正に女神のソレだった。


初っ端からギャグ回ですね。

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