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婚約しましょう、王子様!悪役令嬢の私があなたを立派な魔王にして差し上げます!  作者: 春夜くる佳


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魔力検査2 クレア

 私は今、ルシファーと昼食を取っている。教会ではどうなることやらと焦ったが、上手く収まって良かったと安堵している所だ。ルシファーは無言で黙々と食事をしているが、原作であった描写ように、打ちのめされた様子はない。むしろその反対で、なんだかとても機嫌が良さそうだ。


 魔力検査は混乱の嵐だった。ルシファーが闇属性の魔力と大人以上の魔力量を発現させたからだ。


・・・

・・


 良かった、入場は上手く行った。私は同伴者席に座り、ルシファーが最前列に向かった所で安心してふう、と息を吐いた。司祭が始まりの挨拶をしている。


 私がいなかったら、本来国王と王妃は出席さえしていない。クレアが睡眠薬を飲んで一週間も眠り続けた事で、クレアをそこまで追い詰めた婚約について激怒したモレッティ公爵の機嫌を取るため、政務に追われるからだ。その上、モレッティ公爵が婚約を断ったなど、王族にとって不名誉な噂が流出していて、ルシファーは入場のタイミングで酷い言葉を浴びせられていたことだろう。


 それにこの後の魔力検査でルシファーは更に追い討ちをかけられる。検査で明らかになったその膨大な魔力と、教会を飲み込んでしまうほどの闇属性の魔力で、周囲から恐れを抱かれるようになってしまうのだ。この魔力検査は貴族である以上、避けられない。私はこれから起こる事にハラハラとしながら、時が来るのを手に汗を滲ませて待った。


 司祭の挨拶が終わると拍手が鳴り響き、早速魔力検査が開始された。検査は貴族の中で最も位の高い者から順に行われる。ルシファーが名前を呼ばれ、壇上に上がると、祭壇の上にある魔力を測定する水晶に手を翳した。


 パンッ!


 大きな音を立てて、水晶が弾け飛ぶ! ルシファーは水晶の割れた破片で顔を切ったらしく、さっと顔を手で押さえるのが見えた。その瞬間、教会内が暗闇に飲み込まれた! 水晶が割れたことで、ルシファーの魔力が水晶から漏れ出てしまったのだ。


 貴族たちの悲鳴が聞こえてくる。魔王の襲撃か、という誰かの言葉で余計に混乱を生み、席を立とうとする者たちの椅子を引く音が次々と聞こえるが、真っ暗で逃げることも難しい。光が刺して美しく輝いていたステンドグラスがホラー映画のような怖さを醸し出している。司祭は大声でしきりに、

「静粛に!」と叫んでいる。


 新たな水晶が予め用意してあったのか、司祭の頭上に掲げられた水晶がルシファーの魔力を吸い取り、辺りには光が戻った。国王と王妃がいるのも構わず、誰かが

「化物!」と叫んだ。


「ルシファー殿下、闇属性! ま、魔力量、測定不能!」


 司祭が慌てて検査結果を発表すると、事態への収拾を図る為、すぐに次の人の名前が読み上げられた。


 全員の検査が終わり、司祭の締めの言葉の後、退室も貴族の位が高いものから順にする。第一王子であるルシファーは一番最初だ。ルシファーは顔を青ざめさせて私の元に戻ってきた。それにどこか余所余所しい。きっと私を怯えさせないように気を使っているのだ。私は椅子から立ち上がり、ルシファーに思い切って抱きつくことにした。


「素敵……ルシファーの闇の魔力はまるで静寂な夜のよう。安らぎを与えてくださる気配がしましたわ。それにあの魔力量。お強いのね。カッコイイ!」


 これだけ言えば、私が怖がっていないとが伝わるし、自信も持てるだろう。出来るだけ周囲に響き渡るほど大きな声で私はルシファーを褒め称え、抱きしめた。ルシファーは私に抱きつかれてポカンとした顔をしている。私に抱きつかれて行き場を失った腕を宙に浮かせたままであることも窺える。私は小声で、

「抱き返していただけませんの?」と耳打ちした。


 少し体を離してルシファーの顔を窺うと、ルシファーはカッと顔を赤らめた。それでもおずおずと手を回してくれる。きっとルシファーは自分でも自分の魔力に驚いたのだろう。ルシファーの潤んだ瞳が痛々しい。


 私の発言とルシファーが抱擁を交わす様子を見て、教会内の雰囲気がガラッと変わった。先ほどまでヒソヒソとルシファーの魔力について悪態をついていた貴族たちは私とルシファーを取り巻く微笑ましい空気に考えを改めたようだ。


「将来の国王がまだ十歳でこれほどの魔力があるのは素晴らしいな」

「そうね、あの闇属性の魔力なら魔王をも圧倒させるに違いないわ」

「この国の将来も安泰だな」

「お二人の仲も良さそう」

「将来の王妃殿下もクレア様であれば、ルシファー殿下をきっと支えて下さるわ」


 その声を聞いて満足した私はルシファーから体を離して、手を取った。国王と王妃に目で会釈をしてから教会を出て、二人で食事に向かった。


・・

・・・


「ルシファー、顔に傷が……」


 私は食事をしていると、ルシファーの顔に傷がある事に気がついた。水晶の破片で顔を切った時のものだ。ルシファーはテーブルを隔てて向かい側にいるので、私は椅子から立ち上がり、ルシファーに近づいた。ハンカチをポケットから取り出し、ルシファーの顔に押し当てる。


「クレア!」


 私の行いに驚いたルシファーが体を退け反らせた。顔をカッと赤くさせている。マナーが悪くて怒らせてしまったようだ。


「食事中に席を外して、ごめんなさい。でもルシファーの顔に傷があって、痛そうだったから……」

「ク、クレアがそんな事をする必要はない!」


 ルシファーは私がルシファーの顔に当てていたハンカチを私の手から取り上げると、ルシファーは自分で顔を拭った。


 嫌がられてしまった……。私はシュンとしてルシファーにもう一度謝ろうとルシファーの顔を見た。ルシファーは目線を私から逸らし、腕を口元に当てている。そこで私は気がついた。……怒っているんじゃなくて、もしかして照れている?


 今まで手紙も無視し続けてきているので既に嫌われていると思っていた。でもまだ仲直りする余地が残っているかもしれない。私は今がチャンスだとばかりにルシファーをとことん褒めちぎろうと決断した。席に戻ると、私は早速作戦を開始した。


「ルシファー。私、強い人って素敵だと思います」

「なんだ急に」ぶっきらぼうに言い放ち、顔を拭っていたハンカチをルシファーは横に控えていたベルゼに渡す。


「闇属性は魔族と同じだと世間では言われていますが、ルシファーの魔力は心地良いものでした」

「それは……良かった」ルシファーは居心地が悪そうに目を泳がせている。


「ルシファーの黒い髪と黄金の瞳によく似合う魔力に、思わず私はうっとりしてしまいましたわ」私がそういうと、ルシファーは下を向いてしまった。


「……そ、そうか」


 ちょっと調子に乗りすぎたかな、と思っていると、ルシファーは言いづらそうに、苦笑を浮かべながら小声で言った。


「怯えさせて嫌われたかと思ったので、安心した……」

「私がルシファーの事を嫌う? ありえませんわ。私はルシファーの婚約者ですのよ?」


 ルシファーは私の真意を確かめようとしているのか、私をじっと見つめる。私はルシファーのお顔が大好物、じゃなかった。私の好み、ドストライクだ。嘘は言っていない。ルシファーは私が嘘をついていないことが分かったのか、ポツリと呟いた。


「……好きだ」

「はい?」


 ブホッ!


 ルシファーの横でベルゼが吹き出した。誤魔化すようにゴホン、ゴホンと咳払いをしている。ルシファーはベルゼが吹き出した音で我に返り、慌てて説明しだした。


「いや、今のは違う! クレアはその、なんだ、可愛い……じゃなくて! クレアの優しい言葉使いが好きだと言ったんだ」


 グハッ!


 さっきからなぜかベルゼが騒がしい。ベルゼは肩を揺らして何かを我慢しているようだ。ルシファーは口元をピクピクと震わせるベルゼに、ギロッと睨みをきかせて黙らせた。私は二人の様子を気にも止めず、話しかけた。


「私も教会でのルシファーの堂々とした振る舞いに、思わず惚れ惚れとしてしまいましたわ」


 私がそういうと、ルシファーはピタリと動きを止めた。カチャッと小さな音を立ててカトラリーを皿の上に置く。


「……クレア、いい加減に敬語もやめてくれ。耳障りだ」

「えっ!? でも……突然どうしたんですか? 私が何か不快な事を言ってしまいましたか?」

「耳障りだと言ったんだ」


 ルシファーは私の言葉を遮って、有無を言わせない勢いで迫った。私はルシファーがそういうなら、と言われた通りにすることにした。


「……では、二人だけの時は敬語は使わないようにしま、するね」

「二人だけの……っ! ああ、それで良い」


 単純に婚約者の私には親しげに話して欲しいと思って言ってくれたのかもしれない。口下手なのかな、と精神的に大人な私は良いように解釈する事にした。こうして私達の食事はつつがなく終わり、無事魔力検査の日を乗り切った。


 魔力検査の一ヶ月後には婚約発表が待ち構えている。この調子で順調に進むと良いな、と私はステーキを口に放り込んで食事の感想を言った。


「ルシファーと一緒に取る食事はとても楽しいわ」

「それは良かった……」


 ルシファーは顔を赤らめながらも、ぎこちない笑みを浮かべた。

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