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婚約しましょう、王子様!悪役令嬢の私があなたを立派な魔王にして差し上げます!  作者: 春夜くる佳


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ルシファーは言いたい2

 ベルゼが入ってきた事で肝心な言葉をまた言い逃してしまった。なあに、問題ない。ここから魔族の国に行くには一ヶ月、そこから魔王城までさらに半月、合計で一ヶ月半はかかる。いくらでもチャンスは巡ってくるだろう。


 寝ても起きても、一ヶ月半の間は毎日クレアと一緒にいられるのだから。クレアと初めてのりょこ……重要な任務だ。


「そうと決まったら時間がない。国王陛下を説得してくる」

「ルシファー……ありがとう、これが全部終わったら、その……あ、これ死亡フラグだわ」


 クレアは俺には分からない言葉を口走ると、キュッと口をつぐんだ。俺はクレアの言葉を聞いて、心臓が掴まれたような感覚に陥った。今、クレアは何を言いかけたのだろう。俺はクレアが言おうとしていた言葉は、俺が言いたかったことと同じだろうかと思った瞬間、クレアを想う気持ちが溢れ出すのを感じた。


 正式に初めて会った時も、てっきりアダムのことが好きだと思っていたのに、俺を見て婚約を承諾してくれた時のことを思い出す。


 もっと幼い頃に一緒に鬼ごっこをしたのを思い出したのかと期待したが、そうでもなさそうだったので、なぜ婚約を承諾してくれたのだろうと疑問だった。それでも一般的に美男子とされている金髪碧眼のアダムより、顔だけでも俺のことを気に入ってくれたのかと思ったら、少しだけ嬉しかった。


 アダムとのお茶会で漆黒の髪に黄金の目が素敵だと言っているのを聞いた時は胸が跳ね上がった。直接アダムに会っても、俺が良いと言ってくれたのだ。それを聞いて俺はどれだけ嬉しかったことか。


 闇属性だろうと構わずクレアは俺の側にいてくれた。俺の魔力測定があった時だって、本当はクレアだって驚いたことだろう。自分の婚約者が魔族と同じ、闇属性だと知って俺のことが怖くなったはずだ。それなのに、クレアは俺に抱きついた上、俺を褒めたのだ。


 今でも俺はクレアがあの時言った言葉を覚えている。


「素敵……ルシファーの闇の魔力はまるで静寂な夜のよう。安らぎを与えてくださる気配がしましたわ。それにあの魔力量。お強いのね。カッコイイ!」


 クレアはあの言葉がどれほど俺を喜ばせ、どれほど俺が救われた気持ちになったのかをクレアは知らない。


 他の貴族が俺に対して見せるおぞましいものを見る目や心ない言葉を浴びせる声もクレアを思えばすぐに心が軽くなった。皆が皆、クレアのように俺の闇属性の魔力を良しとしていない。王宮で俺とのすれ違い様に、見知らぬ貴族から『闇属性の国王なんて聞いたことがない』と言われたこともある。


 でも俺は気にしなかった。クレアさえ俺を認めてくれていれば、それで良い。クレアが隣にいてくれるなら、国王の座だっていらない。俺にはクレアさえいれば良い。辛い時にいつも思い浮かぶのはクレアの顔だった。


 魔力測定の後は厳しい教育係に闇属性は分からないとサジを投げられ、一人で魔力操作の訓練を行うことになった。最初は教育施設で学ぼうかと思ったのだが、クレアもあまり行っていない教育施設に行った所で時間の無駄だと判断し自室で練習することにしたのだ。自分なりに試行錯誤していたその時も、窓の外から見えるクレアの努力する、ひたむきな姿に元気付けられた。


 闇属性の魔力は扱いを間違えると、発動者をも飲み込んで、辺りを闇一帯にしてしまうことがある。俺は自分の魔力の恐ろしさに怯えながら、いつも自分の部屋で密かに魔力操作を行なっていた。


 何度も発動させ、闇に飲まれそうになって中断する度に術が跳ね返り、俺は血反吐を吐いて、外皮をズタズタに裂かれて床に転がった。剣を振えば無意識に漏れ出した闇魔法が剣を飲み込み、慌てて中断すれば剣が破壊されてその破片で傷を負った。


 毎日孤独と体の痛みに打ちのめされそうになっていた時、口から血を流しながらふっと窓の外を見た時のことだ。騎士団の訓練場を見ると、クレアが騎士ダニエルと走っていて、足をつまづかせて転けてしまったことがあった。


 肘と膝を擦り剥き、血が出ているのが見えた。顔も擦りむいたようで、手で顔を押さえていた。まだ八歳の女の子だ。泣くかと思ってハラハラしながら様子を窺っていたら、クレアはキッと強く地面を睨みつけ、凛々しい顔をして立ち上がり、平然とした顔でまた走り始めた。


 クレアも頑張っている。俺も強くなりたい。そう思った時には口から出ていた血を拭って、もう体もボロボロなのに、また魔力操作を行っていた。


 俺の体調を心配する優しいクレア。クレアだって騎士団での訓練や淑女教育だってあるだろうに、俺の前ではいつもニコニコ笑っている。俺だけに時折見せるへにゃっとした笑顔も、魔導塔で食事も忘れて本を読み漁って魔力を伸ばす努力をしているクレアも全部大好きだ。


 クレアの事を何も知らず、無邪気に鬼ごっこをしていたあの頃のクレアより、今目の前にいるクレアが愛しい。


 ベルゼがいようと構わない。チャンスは思ったよりすぐに巡ってきたようだ。あれこれセリフ悩んでいたのが嘘かのように、俺の口からずっと言いたかった言葉が滑り出た。


「帰ったら結婚式を挙げよう。愛している」


 俺がそう言うと、クレアは一瞬驚いた顔を見せた。俺がクレアの返事を待っていると、クレアは目を潤ませ、へにゃっとした笑顔を浮かべた。


「私も愛してるわ、ルシファー」


 クレアのその声でその場にいたベルゼとクレアの侍女メイデンが静かに部屋の外に出る気配がした。


 クレアの目から涙が溢れそうだと思ったら、自然と手が伸びていた。我慢が効かなくなり、相手の許しがないのにそうするのは失礼だと分かっていても、クレアを抱き寄せる手を止められなかった。


 俺は片手をクレアの腰に手を回し、クレアの後頭部をもう片方の手でそっと包み込んだ。俺の胸にクレアが顔を疼くめていたので、クレアの頭の上に顎を乗せてみたら、とても幸せな気分になった。目を閉じてクレアの温もりを堪能していると、クレアが鼻声で呟いた。


「……ルシファーの服が濡れちゃう」

「構わない。クレアの涙なら大歓迎だ」


 俺の胸元でクレアが「もう、ルシファーったら……」と言って顔を上げたその時、クレアの目から涙が零れ落ちた。少し屈めばクレアの口に届くと思ったら意識が飛びかけた。俺は誤魔化すように、涙が伝っていった頬にそっと口づけを落とした。


 俺の行為に一瞬驚いた顔をしたクレアが背伸びをしたかと思うと、俺の頬に柔らかい唇が当たった。


「あ、口紅が……」


 そう言ってクレアが恥ずかしそうに俺の頬に手を伸ばし拭おうとしたので、思わず俺はその手を掴んだ。このままで良い。一週間は顔を洗わないでおこう。いや、それは流石に引かれるな、と一人で想像して苦笑を浮かべた。


 指を絡めると、クレアが顔を赤らめて下を向いてしまったので、クレアの顔が見たくて腰を屈めると、クレアと目がパチっと合った。潤んだ瞳には俺だけが映っている。


 吸い寄せられるようにそのままクレアの唇に口づけすると、クレアは小さく声を上げた。


「んっ……」


 一度唇に触れると、俺はせきを切ったようにクレアを求めた。このまま押し倒してしまいたいという衝動に駆られながら、何度も角度を変えながら、吐息まじりに唇を重ね合う。クレアにもっと触れたい。クレアのドレスを脱がせて柔らかい肌に体を埋めたい。


「んんっ……ルシファー……」

「ハァ……クレア……愛してる」


 美しいクレア。愛しいクレア。俺だけのクレア。


 俺は心の中で、絶対クレアを幸せにするとこの時に改めて誓った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 40/40 ・愛ですね愛。愛を感じます [気になる点] 静寂な夜っていい表現ですね。オシャレ [一言] キャー! やっちゃったー! うわーぁい
2021/01/22 19:45 退会済み
管理
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