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第93話 クーデターの問題②

こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

先端の切り揃えられた丸太を地中に埋め込むことで作られた壁が目前に広がっている。

きちんと外敵対策は施されているんだな。


そして、同様に丸太を駆使して作られた門の前まで移動する。

両脇に体格の良いゴブリンキング達が立っていた。

おそらく門番だろう。


俺の隣にいたレーアが前に出て、門番達へ話しかける。


『ゴ=レーア及ビニゴ=ディオーン、タダイマ戻ッタ。大事ナイダロウカ?』


『オ、オ帰リナサイマセ、姫並ビニ将軍閣下。本日モ平穏ソノモノデス。遠征ノ程ハ、如何ダッタデショウカ?』


『未ダ遠征中デアル。此度ハ所用ニヨリ一時帰還シタ。詳細ハ軍事機密ノタメ黙秘スル。』


『ハッ!差シ出ガマシイ真似ヲシテシマイ、申シ訳ゴザイマセンデシタ。シテ…後ロノ怪シイ者ハ何者デショウカ?我ラガ同ジ種族デナイヨウニ見エマスガ…』


門番がディオーンに捕われているように見える俺に気づき、レーアに確認を取った。

ここが第1関門だな。

打ち合わせ通りの受け答えで済むと良いのだが…


『此度ノ遠征ノ途デ捕ラエタ者ダ。一時帰還ノ理由デモアル。タダシコレニ関シテモ、軍事機密ノタメ黙秘スル。』


『ナルホド、ソウイウワケデスカ…カシコマリマシタ、ドウゾ中ヘ。』


『スマンナ、詳シイコトニ答エラレズ…』


『イエ、姫ノゴ苦労ニ比ベタラ問題ニナリマセンヨ。』


ふぅ、どうやら第1関門突破だな。


レーアとディオーンという上級権力者のおかげで身体検査などを受けずに済んだ。

ここでまず身体検査、最悪取り調べをされることも考えてはいたので、現状いい調子で進んでいると言えよう。


それにしてもレーアは人望があるようだな。

レーアと話していた時の門番の口角が上がっていたのを俺は見逃さなかった。

一方で鼻が膨らんだりはしてなかったので、異性として接して喜んでいたわけではないようだった。

これなら、レーアが王位についてもあまりゴタゴタが起きずに済みそうだな。



『アノ奥ニミエル岩山へ向ウ。アソコガ王城ダ。』


俺の耳元にそう告げ、行き先を指差すレーア。

うーん、岩山ってあれか?

歩いて行くと数時間はかかる距離にあるぞ。

本当に今日中にクーデター起こせるんだよな?


俺が疑問を投げかけようとした時、少し離れていたディオーンが戻ってきた。

その手には魔物の手綱が握られていた。

象のような巨体をした、脚が6本ある恐竜みたいな感じだ。

そう言えば、侵攻時にも見かけた気がする。


『姫、移動用ノ騎獣ヲ調達シテキマシタ。コチラデ向カウトシマショウ。』


ああ、なるほど。

こいつを足として使うんだな。


侵攻時は余裕なかったからこの魔物の詳細を見てなかったな。

《情報分解》っと。



[シックスレッグス]

  大きな体躯で、6本の脚を持つキョウリュウ型

  の魔物。

  多くの皮下脂肪を持つため、比較的防御力は高

  めで、エネルギーも多く蓄えているため、長時

  間活動できる。

  普段は温厚だが、自身を害さられると狂ったよ

  うに暴れまわり、その巨体で何もかも踏み潰そ

  うとする。



6本の脚があるからシックスレッグスって…

安直なネーミングもいいところだな。


乗り心地は、ふむ、悪くない。

恐竜のような見た目もあって全身鱗に覆われているが、その鱗に硬さはなく、むしろ低反発クッションのように弾力性がある。

癖になってしまいそうだ。

これは、一家に一匹欲しくなるな。


そして、俺をレーアとディオーンが前後で挟む形に乗り、シックスレッグスは岩山を目指して進み始めた。




街中を行く。


うん、街中だと思う。


え、街中だよね?


先ほどからここが街中なのか、不安になってきた。

街というか認識を捨てて、村と思った方がいいかも知れないな。


別に人口が少ないわけではない。

視界の中には常に両手の指で数え切れないほどのゴブリン種がいる。

時折こちらを指差し、何か言ってくるような輩もいるが、それは無視している。


だが、やはりここは村にしか思えない。


建築レベルが低すぎるのだ。

縄文時代の竪穴式住居レベルの建物しかない。

それがこれでもかとずらーっと並んでいる。

全く持って個性がない見た目で。


同じ見た目の住居しかない。

絶対自分の家忘れるだろ。

少なくとも少し離れたところ行ったら、もう迷子になる自信がある。

目印なんて遠くに見える岩山ぐらいしかないもんな。


これは是非とも技術支援をしたいところだ。




少し開けた所に出た。

見渡す限りの平原だ。

畑か?

それにしては畝らしきものも見えないし、ゴブリンの姿も見えない。


「なあ、ここは何なんだ?何かの畑か?」


『畑?ナンダソレハ?』


「おい、まじかよ、畑を知らないのかよ。」


『ウム、知ラン。ソンナモノコノ〈ゴブリニア〉ニハナイ。』


農耕文化がないとは想定外だ。

完全に狩猟頼りということか?

となると技術支援するとなると、抜本的な改革が必要になるのか。

パラダイムシフトを起こさないといけないな。


さて、どうしたものか…


『――イ!オイ!聞イテイルノカ?』


「すまない、少し考え事をしていて聞いていなかった。」


『全クオマエがシテキタ質問デアロウニ!ココハ魔物ヲ飼ウタメノ草原ダ。ココノ草ノ成長ハ早ク1週間モスレバ元通リダカラナ。』


「へえ、この騎獣とかはここで普段は飼育しているのか。」


『騎獣ダケデハナイ。食用ノ魔物ト乳用ノ魔物モイル。』


なるほど、牧畜の文化はあるのか!

言われてみれば、遠くの方にポツポツとそれらしき影が見える。

あれが騎獣なのか食用の魔物なのか乳牛代わりの魔物なのかは分からない。

だが、確かに牧畜は行われているようだ。


個人的にまず気になったのはこの地面に生える草だ。

〈安息の樹園〉でもゆくゆくは牧畜は行いたいと考えている。

下に生えている草はきっとその時に役立つ気がする。



[ラピッド芝]

  生育スピードがかなり早い草。

  一定の長さまでは1週間も掛からずに元通りと

  なり、それ以上になると生育スピードが極端に

  遅くなる。

  草刈りの必要もなく、これ以上なく牧草向け。



《情報分解》したみたけど、かなりの高評価だな。

ラピッド芝とか言わずに、最早牧草という名前になえた方がいいんじゃないか、というレベルだ。


バレないように俺の足元に巻き付いてもらっていたリメにラピッド芝の回収を依頼する。

クーデターのために来たのだが、まさかこんな収穫があるとはな。

嬉しい誤算である。


あとは…


「なあ、食用の魔物と乳用の魔物も見てみたいんだが…」


『ソンナ余裕ハナイ、今ハ作戦行動中ナンダゾ!』


ちっ、流石に無理か。

ここで進路変えたら不自然になるか。

仕方ないまた別の機会にするか…



……なんて思っていた時期も自分にもありました。


『良カッタナ、見タカッタモノガ見レテ。』


ラッキーだな。

まさか進行方向に件の魔物の集団がいたとはな。

今乗っている騎獣とそう違いないほど大きさだ。



[ステラヤマギュウ]

  山のような体躯を持つ、ウシ型の魔物。

  巨体を活かしたタックルが強烈で、小さな山程

  度なら粉砕する。

  ただし基本的に温和であり草食なため、食物連

  鎖の第一消費者の地位を出ない。

  オスは食用、メスは乳用として飼うことも可能

  だが、その体躯にあった膨大な食糧が必要とな

  る。



どこぞの絶滅した海獣とすごい名前が似ている気がするんだが、気のせいか…


そして、食用の魔物も乳用の魔物も同一種であることが判明した。

同一種で済むとはかなり助かる。

別々に分けて飼育する必要がなくなるからな。

繁殖させてその数を増やすことも比較的簡単だろう。


クーデターが成功した暁には何頭か譲渡してもらおうかな。




とても人質とは思えないようなホクホク顔の俺の前に、だんだんと岩山が近づいてきていた。

次回更新日は11/20(金)です。


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