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第92話 クーデターの問題①

こちらは本日1話目です。

次話は18時の更新の予定となっております。

執筆の関係で多少遅れて投稿になるかもしれませんので予めご了承下さい。

鬱蒼とした森の中を進む一団。

周囲の警戒は怠らず、細心の注意を払っている。

他でもない俺達〈ゴブリニア〉に向かう集団だ。


無論初めから慎重に動いていたわけではない。


何せ〈安息の樹園〉と〈ゴブリニア〉は直線距離でも200kmはある。

その距離を歩くなり走るなりしたとしても、障害物の多い森の中なのだ、1週間レベルでかかる。


1週間なんて長時間をこのことで費やす気はない。

もう既に暦は10月の上旬のさらに後半なのだ。

1週間もせずに、アイネとのイチャイチャ逢瀬の日が来てしまう。

それまでには何としても戻らなければならん。


昨夜もアイネと念話を交わしていた時も明日から出かけなくてはならないと言った時の声色と言ったら…

気をつけてね、とは言ってくれたものの、そのどこか漂う寂寥感に申し訳なさが募ってしまった。

何が何でも帰らなくてはならない。


そのため、リーアから教えてもらった標的ロクノスの持つ《領域感知》の範囲外まで魔法で高速移動し、そこからは徒歩で向かっているのだ。

これだけで5日分の行程を節約できた。


さあサクッと暗殺してもらって帰らないとな。




「そう言えば、レーア達が来る前に他のハイゴブリンが攻めてきてさ、そいつ爆殺しちゃったんだけど、問題なかった?」


明日の計画に備え、〈ゴブリニア〉までおよそ3時間程度の洞穴の中で夜営することにした。

今は夕食の準備中。

側で作業をしていたレーアに先ほど思い出したことを聞いてみることにした。


今更ながら、レーア達からしたら身内であるハイゴブリンを殺してしまっているのだ。

レーア達と同じ立場だったのなら信頼関係に影響を与えそうだ。


殺意自体はあったが、正直酸素爆弾で死んでしまうとは思っていなかった。

なんて言い訳らしきものを思い浮かべる。

殺してしまったと言う事実には変わりない。


『ソノ将ノ名ハ、何デアッタ?モシカシテダガ、ゴ=トールカ?』


ゴ=トール…

そんなような名前だった気がする。

確か珍しい《雷魔法》持ちだったな。


「……おそらくそれだ。名前は朧げだが、《雷魔法》を持っていたことは覚えている。」


『ウム、ゴ=トールニ間違イナイ。ヤツハ国王派ノ者ダ。ディオーンモヤツニヨッテ、監視サレテイタノダ。ナア、ディオーンヨ?』


レーアが話を振った方に目を向けると、そこには今回の襲撃メンバーの1人のゴ=ディオーンがいた。


『ハッ!アヤツメガ陛下ノ手下トシテ動イテイタオカゲデ全ク持ッテ動ケテオリマセンデシタ。ナカナカ哨戒任務カラ帰ラナクテ、チャンスダト思イマシタガ、マサカジョー殿ニ殺サレテオッタトハ驚キマシタナ。無論、ソノコトヲ歓迎スレドモ非難スルコトハアリマセンナ。』


『トイウワケダ。モシ殺シテシマッタコトヲ気ニ病ンデイルナラ気ニシナクテ良イゾ。ムシロ助カッタト言エヨウ。』


意外にも好感触であった。


殺したのに喜ばれるのって何か変な感じがする。

地球にいた頃には信じられないような考え方だ。

暗殺稼業でも営んでいれば別だったのかもしれんがな。


ちなみにだが、この異世界に来てから殺しに対する忌避感が弱まっていると言うのは事実だ。

このことはアイネに確認したから間違いない。

話を聞くに、世界観の差異を軽減するために世界を渡る者は皆多少考え方がいじられてしまうらしい。

これは神によるとかそういうのではなく、自動的になされてしまうらしく、止めようもないのだとか。



俺達が話をしていると、なかなか準備が終わらないことに腹を立てた2人が奥から出てきた。


「ねえ、まだなの?もういい時間よ。」

「かなり待ったわよ。ちゃんとやることしてよね。」


「ああ、すまない。つい気になったことがあってな。」


「別に食事後でいいでしょうに。ねえ、ウェス。」

「うん、イース。優先順位を理解してないんじゃないかしら。」


「……ごもっともです。」


奥から出てきた2人は、OXさんの双子妻であるイースとウェスだ。

今回は、その2人と俺、リーアとディオーンが実行メンバーである。

目的のために少数精鋭とした。

ちなみにだが、リメも当たり前のようにいる。


その目的というか、今回のすることはどこまでいっても、標的殺しという暗殺に近いものだ。

暗殺という分野に関しては、双子妻は他のメンバーの追随を許さない腕を持っていると考えている。

レベル高めの《暗殺術》なんて持っているんだ、間違いないだろう。


実際、《暗殺術》を持っていることを初めて直接伝えようとした時の動きはそれはもう見事だった。

目が一瞬で獲物を狩るそれになったと思った瞬間、俺の背後にいて首筋にナイフを当ててきたのだからな。

瞬き1つの間でこれだけのことができるのだ。

並外れた暗殺技術を持っていることは証明されている。


ということで2人には、アドバイザー及びサポーターとして今回の件に同行してもらっている。

散々OXさんと離れることにやいやいと苦言を呈されたが、まあそこはOXさん本人に説得してもらった。



夕食後になり、話は明日の計画という本題に入っていく。


「改めて言っておくが、命を奪う行為及び同時並行して行うクーデターに関しては、極力〈安息の樹園〉側のメンバーは関与しない。トドメまで刺してしまうと、必ず将来へ遺恨を残すことになってしまう。俺達はそれは望まないからな。」


『ウム、ソノ点ニツイテハ了解シテイル。本来デアレバ、自国デ解決スベキ問題デアルカラナ。』


〈ゴブリニア〉とは今後とも良好な関係を築きたいと考えている。

そのため、国王暗殺なんて大罪を担うわけにはいかない。

あくまで俺達がするのは暗殺もどき、すなわち無力化の域を出ないようにする。


明らかに〈ゴブリニア〉の方が人手は豊富なのだ。

技術支援なりして、一大農産地になってもらいたい。

まあこればかりは技術レベルを知れないと、如何とも言えないが。


「それで本当にあの作戦で行くの?」

「レインちゃん怒るんじゃないの?」


イースとウェスが俺に確認を取ってくる。

もうこのやり取りは何度かしている。

しかし、何度問われても俺の意思は変わらない。


「いや、計画通りに行う。これが手っ取り早いからな。」


「「でも…」」


「心配しないでくれ、俺はそんな柔じゃない。」


「「そう…」」


「ついでにレインに伝えるのもやめてくれ。頼みます。」


「「それはダメ!教えて欲しいって言われてるもの。」」


ちっ、ダメだったか…

これ絶対帰ったら、レインに報告されて、お説教の流れだな。

いや、多分アイネが知っているだろうから、2人を口止めしたとしても伝わってしまうな。

はあ、諦めよう。


まあ何度も確認したくなるのも分からないでもないからな。

仮に俺もイース達の立場でレインが同じことをするってなったら、間違いなく止める。


ただ俺の場合は【分解】の権能があるからな。

よほどのことがない限りは俺を害することはできない。

だから、俺が矢面に立てば、最小限の被害で済むのだ。


と言っても俺の能力の詳細を知っているのは現状限られているからな。

リメ、オリ爺、レインの3人は確実に知っている。

怪しいのが、ファナとバンダーかな。

あの2人は気づいていてもおかしくはない。


「じゃあ明日の作戦の最終確認をするぞ。」




うーん、朝日が眩しい。

そして、気温も既に高く、真夏日になることは必至。

絶好のクーデター日和だな。


「じゃあよろしく頼む。」


俺は両手を差し出し、レーアとディオーンに縛ってもらう。

そのまま()()()()()()を装い、〈ゴブリニア〉の西門へと向かって行った。

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