第79話 定番の問題②
こちらは本日2話目です。
前話は12時の更新となります。
未読の方は是非ご覧になってください。
「初めまして、俺はじ「や〜ん、可愛い〜。」…へっ?」
俺の華麗な爽やかスマイル挨拶プランが早々に崩壊した。
無理もないだろう。
だって地球のモデル顔負けのスレンダー長身美女エルフに抱きつかれたのだから。
思考が一瞬でぶっ飛んだ。
くっ、俺にはアイネがいるんだ。
そんなまるで森林浴しているかのような安心するような匂いで誘惑してきても屈しないぞ。
……エルフだからこんないい匂いするのかな?
(ふ〜ん、面白い子ね…)
「コホン!ファナ様、ご主人様から離れていただけますか?」
「あ〜、レインちゃんの言ってたご主人様ってこの子〜?めっちゃいいじゃ〜ん。」
「……コホン…それほどでもありません…とりあえず離れていただけますか…」
だんだんと物言いが尻蕾になるレイン。
なるほどね、力関係がハッキリと分かった。
しかし、ドワーフらしき男性は特に反応を示してくれないな。
恋人なんじゃないのか?
なんか憐むような目を向けられているんだが…
「改めまして、俺は丈と申します。この拠点を築いた者で、一応ここのリーダーを務めています。」
礼儀正しい言葉を並べて、礼をする。
私と名乗っても良かったのだが、一人称を後から変えると違和感が生まれそうだから最初から俺と言う。
あと、俺と名乗っても大丈夫そうな感じだし。
「はいは〜い、アタシはサファナ。気軽にファナって呼んでね〜。予め種族も言っておくけど、ハイエルフだよ!ほら、次はダーリンの番。」
「……オレはバンダー。よろしく頼む。」
「もうダーリンったら!ちゃんと種族も言わなきゃじゃな〜い。ダーリンはハイドワーフで〜す。これからよろしくね!」
「「「「…………」」」」
なんか色々とツッコミどころがある。
というかツッコミどころしかない。
普通にファンタジーありがとう展開だと思ってたんだが、予想の斜め上を行かれた。
俺の持っている異世界知識だと、いきなり上位存在だぞ。
もしかしてこれがこの世界では普通なのか?
とにかく俺を含め皆言葉が出ないわ。
いや、近くにいる者同士で何かボソボソと話してるわ。
上手く聞き取れないが…
「……おい、今ハイエルフにハイドワーフって言わなかったか?」
「……まさかのお偉い様だぞ。」
「……サファナにバンダーってどこかで聞いた気がしない?ねえ、イース。」
「……うん、ウェス。"ならざる王女"と"プリンス・チャイルド"よね。」
「……信じらん。」
まあいい、気づいたら俺以外の者達との自己紹介フェィズに移行している。
今のうちに《情報分解》してしまおう。
名前:サファナ=ラ=ログワーツ
種族:ハイエルフ
立場:[中立(様子見)]エリルリエ宗主国第四王女
能力:《ディシーヴァー》
《分析眼》《上位隠蔽》
《気配遮断》Lv5《領域感知》Lv7
《身体操作》Lv6《精霊術》Lv6
《弓術》Lv7《風魔法》Lv9
《魔道具作成》Lv5
《ディシーヴァー》
固有スキル。
恒常的に、自身に対する警戒度を極端に低下さ
せる。
また対象は無意識レベルで自身との戦闘で実力
の半分程度しか出せなくなる。
さらに、《隠蔽》などの隠蔽系統スキルの能力
が向上する。
《分析眼》
《上位鑑定》より高位の鑑定系統スキル。
《隠蔽》および《上位隠蔽》の能力を無効化
し、対象を分析することが可能となる。
また、実力差に応じて、対象の心の内を読み取
ることも可能となる。
《上位隠蔽》
《隠蔽》より高位の隠蔽系統スキル。
《鑑定》の能力を無効化し、他者から分析され
ることを不可能とする。
《弓術》
弓を用いた戦闘を補助するスキル。
《風魔法》
説明省略。
Lv9だと、一通りの超級魔法までが使用可
能。
名前:バンダー=ダグ=ドルガンフル
種族:ハイドワーフ
立場:[中立(無関心)]ドルルーフ国第三王子
能力:《ウエポンスムーサー》
《上位鑑定》《上位隠蔽》
《剛体》Lv6《身体操作》Lv8
《斧術》Lv7《剣術》Lv6
《火魔法》Lv8《土魔法》Lv7
《アイテムボックス》Lv4
《鍛冶聖》《魔道具作成》Lv4
《ウエポンスムーサー》
固有スキル。
自身の装備する武器は、恒常的に性能が落ちな
くなり、切れ味も最高な状態が保たれる。
また、汚れ等も常に弾き、呪いも無効化する。
装備せずとも、手に持つだけで武器が最高の状
態になる。
《上位鑑定》
《鑑定》より高位の鑑定系統スキル。
《隠蔽》の効果を無効化し、対象を分析するこ
とが可能となる。
《剛体》
防御関連の身体能力を向上させるスキル。
《斧術》
斧を用いた戦闘を補助するスキル。
《アイテムボックス》
体内の魔力のみで形成した亜空間に物資を貯蔵
することができるスキル。
Lv8以上で、空間内の時間が停止させ、取り
込んだ時と同じ状態を維持することが可能とな
る。
空間魔法で作成できる収納空間と違い、魔法が
行使できない場でも使用することができる。
貯蔵空間の容量はレベルに比例して増加する。
《鍛冶聖》
《鍛冶》より高位の鍛冶系統スキル。
自身の魔力でのみ稼働する炉を創造し、使用時
に現界させることが可能となる。
鍛冶作品の出来上がりが向上する。
ふむ、強者とはこのことだな。
下手な話、レインより上のステージにいる。
戦闘系スキルが最低でもLv5以上で複数持ちとか馬鹿げていると言っても過言ではないな。
なんと言っても固有スキルが意外と侮れない。
サファナの方は、戦力半減のデバフ付与の能力と言っても相違ない。
サファナ自身の能力を測ることも難しくなるから、実質半減以上になるだろう。
バンダーの方は、圧倒的に長期戦有利になる能力だ。
武器を常に最高の状態で保ち続けるから、数手撃ち合うだけでも差が開いてくる。
剣を合わせたくない相手とはまさに、と言ったところだ。
これなら、十分に〈不抜の樹海〉内でも生きて行けるだろう。
「それで何故ここまで来てくれることになったんですか?」
皆との自己紹介が終わったタイミングで俺は切り出した。
おそらくレイン達は既に聞いたのかも知れない。
だから、後から聞くって選択肢もないわけではない。
しかし、一応はこの拠点のリーダー。
余所者からここでの生活を守るという義務があるのだ。
するとサファナは笑って、タメ口でいいよ、と言いながら言葉を返した。
「ん〜、数で言うと2つかな。レインちゃん達には1つは伝えたよね〜?」
「はい、聞いております。」
「二度手間になるかもしれないが教えてほしい。」
「いいわよ〜。レインちゃん達に言ったのは、とにかく東に行きたかったってことね。」
「東に?」
「……そうだ、東だ。」
それから俺は2人の境遇を教えてもらった。
まあ自分の生き方にケチつけられるのは非常に不愉快だろうな。
全て捨てて離れたくなる気持ちも分からんでもない。
「それでもう1つの方は?」
「ん〜、それはどちらかというとダーリンの方ね。そうよね〜?」
「……ああ、これは俺の意思と思ってくれてもいい。この樹海にある珍しい素材に興味がある。どこまでいっても俺はドワーフ族。鍛冶の素材になりそうなものには本能的に惹かれるんだ。」
「まあアタシも興味あるし、それこそエルフの血なのか自然豊かな場所って和むのよね〜。」
そうか、種族的な話なのか。
もしかしたら元々この世界出身のレイン達には言外で伝わってたのかもしれない。
まあ俺はそんな事情知らないから、この場で聞けて良かったよ。
そして、俺は他の皆にアイコンタクトを取る。
皆も返してくれるが、否定的な感情を宿した者はいなかった。
これで決まりだな。
「よし、そういうことなら歓迎したい。ようこそ、〈安息の樹園〉へ!」
そして、その夜は歓迎会を兼ねた豪勢な食事となった。
エルフってちゃんと肉も食べるんだな。
宴もたけなわ、解散の運びとなり俺は2人を新居へと案内した。
ここは予め日中に建てた、文字通りの建てたてホヤホヤだ。
そして、2人を案内し、俺も家に戻ろうとしたらタイミングであった。
「今日はありがと〜!」
ファナさんが抱きついてきた。
散々ファナと述べと言われたので、そう呼ぶことにした。
あと抱きつきに関しては、歓迎会中も何度か抱きつかれたから、おそらく癖なんだろう。
大人しく抱きつかれることにした。
数分後、抱きしめる力が弱まった。
終わりだと思い、離れようとした瞬間、ファナさんが耳元に口を寄せ呟いた。
「アナタ、この世界の人間じゃないでしょ?」
次回更新日は10/20(火)です。
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