第77話 勧誘の問題②
すみません、投稿遅れてしまいました!
こちらは本日2話目です。
前話は12時の更新となります。
未読の方は是非ご覧になってください。
◇頭グルグル王女・フィアナの視点
サファナ様の後について、店の奥へと入って行きます。
サファナ――目の前にいるエルフの女性はそう名乗りました。
しかも、ただのエルフではなく、ハイエルフであると。
私も王族出身なので、他国の王家に関する講義を王宮勤めの教師役から習ったことがあります。
そのため、その名前は聞いたことがありました。
サファナ=ラ=ログワーツ。
〈ヴィンスターズ帝国〉より西にあるという、エルフにより統治された国〈エリルリエ宗主国〉現宗主ラ家の4番目の娘。
この国は、ハイエルフを輩出している3家ーーラ家、ル家、ロ家ーーによって国のトップである宗主の立場を持ち回りで即位しています。
そのため、明確な王家というものは存在していません。
今は宗主の娘ではありますが、次代になればその地位ではなくなってしまいます。
なので厳密には王女ではありません。
しかし対応はそれ相応のものが求められるため、対外的に分類は王女とされています。
そして、サファナ様はその中でも特異な存在です。
エルフは他種族に靡くことが滅多にないプライドが高い種族であるはずなのです。
しかし、彼女はどの種族でも対等に接しようとし、それ故に他種族からは尊敬を、そして同種族からは侮蔑を受けていました。
その結果ついた渾名が"ならざる王女"。
エルフであってエルフではないことを為すことを揶揄されたのです。
そんな彼女は数年前、それこそ私が生まれるかどうかの時期から行方を晦ましたと聞いていました。
まさか、この場で会うことになるとは思いませんでした。
「ダーリン、いる〜?今平気〜?」
気づくと目的地であろう部屋についていました。
様々な道具が地面に転がっています。
始めてみましたが、火を宿した炉らしきものもありますね。
……ここは工房というものでしょうか?
すると、部屋の奥から私と変わらないぐらいの黒い影が現れました。
身長的に子供の可能性が高そうですね。
しかし、私の予想は大きく裏切られることとなりました。
「……お前か。」
「や〜ん、ダーリンったら恥ずかしがっちゃって〜。」
現れたのは紛れもなく、大人の男性でした。
彫りの深い顔に、整えられた美しい髭。
そして、私の腕2本分はありそうな程太い腕。
おそらく、今見えている腕だけでなく全身が鍛え上げられているのでしょう。
しかし、身長はやはり私と変わらないか、少し低いぐらい。
そう、目の前に現れたのドワーフでした。
――ドワーフ。
鍛治の神と炎の恵を享受し、物作りに腕を振るう種族。
鍛治技術はまさに世界の最高峰に位置し、ドワーフの生み出した物を所持することは一種のステータスになっています。
エルフ同様に、生まれながらにして《鍛治》スキルを保有しております。
そして、そのスキルレベルが3になることが成人したとみなされる2つの条件の内の1つです。
身体的特徴は、小柄な身体に似合わない鍛え上げられた肉体。
その中でも鍛治で最も酷使する腕の太さはまるで別の生物かのようです。
そして特異な点と言えば。高い鼻と髭。
ヒューマンの倍ほどの大きさを持つ鼻と、無骨な印象を与える長く伸びた多量の髭。
髭の毛量とその長さが一定のラインを超えることも、ドワーフにおける成人条件の1つです。
目の前に現れたのドワーフの方で間違いありません。
ただ、ドワーフであると確信しているはずなのに、どこか違和感が否めません。
私ヒューマンと変わらないほどの大きさの鼻と、短くも美しく整えられた髭も何も問題ないはずなのに…
「お久しぶりですね。バンダーさん。お元気でしたか?」
「……ああ、レインか。久しぶりだな。」
どうやらサファナ様同様にレインさんのお知り合いのようです。
「用件に入る前に先に連れの者達を紹介させていただきます。こちら「王女のフィアナちゃんと、その従者のワーネさんだって〜。」…です。」
「……ほう。」
サファナ様にかなり軽い感じで紹介されてしまいました。
それに対して、一言発しただけで終わってしまいました。
無口な方なのでしょうか?
「相変わらずね〜。それでダーリンがダーリン!バンダーって言うの。カッコいいでしょ〜?」
「はぁ…説明が足りてませんね。本名は、バンダー=ダグ=ドルガンフルです。」
こちらの方の名前も聞いた覚えが…
あっ、思い出しました!
サファナ様の故郷の〈エリルリエ宗主国〉の側にある〈ドルルーフ国〉の第三王子の名前と一緒です。
この国でも〈エリルリエ宗主国〉同様に普通のドワーフが王族になれることはありません。
つまり、バンダー様はドワーフではなくハイドワーフということです。
それにしても先ほどから受けている違和感が拭えませんね。
首の辺りまで出かかっているのですが…
「はっ…ま、まさか?」
「あら、フィアナちゃん博識ね〜。そうよ、ダーリンは王子様なのよ。しかも、アタシの〜。」
サファナ様が〈エリルリエ宗主国〉で変わり者扱いされていたとしたら、〈ドルルーフ国〉で変わり者であったのはバンダー様です。
ドワーフ種であるはずなのに、ヒューマンのような大きさの鼻。
そして問題なのは、あればあるほど良いとされる髭はきちんと手入れされていて気にならないレベルであるという点です。
高い鍛治技術を誇りながらも、髭の条件を達成することはなく、成人する権利を得ていないドワーフ。
それで同族からつけられた渾名は、"プリンス・チャイルド"。
凄いお二人が揃っています。
しかし、なぜお二人が一緒に?
しかし、なぜこのような場所に?
聞いてみたい、そう思ってしまいました。
「あ、あのー、なぜお二人がご一緒にいるのですか?」
「ん〜。簡単に言うと、価値観の不一致ってやつかな?あ〜勿論ダーリンとのじゃないよ。アタシ、自分の性格的に他の皆とあまり分かり合えなくてね。もうこんな国出てってやるって、飛び出したのよ〜。そしたら、運命的に同じように国を飛び出してきたダーリンと出会ってね。そのまま一緒に逃げてきちゃったの。テヘッ。」
「……髭を伸ばすという不衛生な文化が性に合わなかった。偶然ファナと出会ってそれから行動を共にしてる。」
「あ〜、ダーリンたら誤魔化しちゃって〜。偶然じゃなくて運命でしょ〜?」
「……ふん。」
あっ、バンダー様が顔を背けられてしまいました。
よく見ると頬がほんのり赤いです。
恥ずかしかったのでしょう。
「ま〜出会った後はまず帝国内を転々と移動しててね。同じところに留まりたくても、追手がしつこかったのよ〜。そしたら、我慢の限界が来て、ここに逃げてきたの。」
帝国というと、やはり〈ヴィンスターズ帝国〉でしょう。
かなり広大な土地なので隠れる場所には困らないと思ったのですが、それほどの追手に追われていたのでしょうか?
「……幸い金には困っておらん。自分の趣味ついでにこの店を開いた。」
「ダーリンったら人付き合いが面倒とか言って、わざとこんな外観にしたのよ〜。分かる奴だけ手に入れてくれればいいって。」
「わたくしとお店の噂を聞いた時は探しました。まさかこの外観とは思わず、来るのに2、3日費やしましたよ。」
なるほど、この店の謎も解けました。
万人に向けた店舗ではなかったのですね。
大多数の人は入る気が起こらず、尻込みしてしまいそうです。
私も何も知らなかったら入らなかったでしょう。
その後もいくつか聞きたいことを解消し、いよいよ本題に入ることになりました。
「一応ちゃんと聞くけど、本題ってなに?」
会話が途切れたタイミングでサファナ様か切り出して来ました。
時間的にも戻ろないといけない頃合いです。
「単刀直入に言いますと、技術要員としてわたくし達の所へ来てもらえますか?」
「……ほう。」
バンダー様の目の色が変わりました。
まるで値踏みしているようです。
一方のサファナ様はニコニコと微笑んでいます。
「……ファナは内容を聞いたのか?」
「いいえ。けど、分かったのよ。」
「……そうか、《分析眼》か。」
「ええ。少なくとも悪い話ではないわよ。」
「……なるほど。」
バンダー様はそう言うと考え込むかのように黙り込みました。
そして、その場を静寂が支配します。
誰も何も発することなく、時間が過ぎていきます。
少しの黙考後、バンダー様が口を開きました。
「……いいだろう、その提案乗ってやろう。」
「「はっ?」」
思わず口から驚きの言葉が出てしまいました。
もう1人分声が聞こえたので、見てみるとワーネが口を押さえていました。
「い、いいんですか?まだ私達は何も言っていませんが…」
「……いや、いい。少なくともここより東へ行けるんだろう?おい、レイン、目的地はどこだ?」
「〈不抜の樹海〉でございます。」
「ヘぇ〜。」
「……ほう。」
お二人の目の色が変わりました。
先ほどまでのバンダー様の値踏みするような目から様変わりし、そこには期待感が宿っていました。
普通は〈不抜の樹海〉と聞くと、尻込みしてしまうはずですのに…
やはり変わり者と呼ばれておられるからでしょうか?
「……嘘じゃねえんだな?」
「はい、そちらでご主人様がお待ちです。」
「まあ!レインったら、ついに主人決めたのね!」
「はい、わたくしには勿体ないお方です。」
「今度詳しい経緯教えてね〜。」
「はい、機会がありましたら。」
「……それはとりあえず置いておけ。〈不抜の樹海〉か…楽しみだな。」
「ええ、そうね。きっとアタシ達が会ったことのないような素材もあるわよ〜。」
「……夢があるな。楽しみだ。」
ジョー様、どうやら無事に目的が達成できそうです。
次回更新日は10/18(日)です。
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