第59話 成人の問題
こちらは本日1話目です。
次話は18時の更新となります。
夕飯は昼のお返しとばかりに、俺が腕を振るって作った。
ふっふっふ、地球で女性の心を掴むにはお洒落な感じの料理がいいんだぜ。
それはきっとSNSとか映えがない異世界でも同じ法則が成り立つはず。
実際アイネとレインからは高評価を貰った実績がある。
ということでアイネとの初めてのお家デートの時に作った料理を提供しよう。
絶妙な火加減のお肉にたっぷりと特製果実ソースを添えてしまう。
勿論あれ以降も何度か作ったため、ソースのクオリティーも格段に上がっている。
野郎共に塊肉を出しておけばオールオッケーだろう。
質より量を重んじるのは、若い男性共通の認識だ。
案の定、女性陣からは絶大な指示をいただいた。
男性陣からも満足したとの評価を得た。
意外だったのは、OXさん。
いつものツンデレはなく、素直に美味かったという言葉を贈られた。
どうしたのだろう、変な物でも拾い食いしたのかな?
勿論そんなこと言うと、プッツンされるのは自明の理なので、心の中に留めておく。
一瞬凄い勢いで顔を見られたが、気のせいだろう。
食後のひとときをリビングのソファーで過ごす。
平和な日々を送っている感じがする。
まったりライフ最高だな。
「どうしたのですか?ジョーお兄様。」
今声を掛けてきたのは、OXさんと双子妻の片割れのウェスさんとの間に生まれた娘のルテアである。
年齢は俺の4つ下と辛うじて同世代といえる。
本当にOXさんの子供なのか疑問になるレベルの可愛さだ。
比較的早い段階で御飯時に会話を交わすようになり、懐いてくれた。
今日の日中の働きと夕飯のクオリティーをきっかけに兄と慕っていいかと聞かれて、許可を出す前に押し切られた。
ずっと兄が欲しかったなんて言われたら、拒否するなんて無理だったよ。
別に嫌なわけじゃないが、なんだか寒気がするんだ。
そう言えば、千景は元気に暮らしているのかな?
……心配だな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その時のどこかの国の第三王女
「ん、お兄ちゃんがあたしの心配してくれている気がする。ううん、絶対してくれている。」
予感じゃない、確定事項だ。
「早くどこにいるか見つけないとな。まあ居場所が分かっても、まだまだ会いに行くことはできないんだけどね。あーあ、早く会いたい。余計な虫が付いてそうで嫌だな。いや、これはきっと付いているな。嫌な感じがしちゃったんだもん。会ったらまずお兄ちゃんの身辺整理しないと!邪魔なものはちゃんと全部燃えるゴミに出さないとね。多分めぐりお姉ちゃんもいるだろうね。いや、まだあたし同様に会えてなさそうだな。そういうところ融通が効かないというか、奪われちゃう運命にあるんだろうね。日本にいた頃も結局他の女にお兄ちゃん取られてたもんね。今回もきっと奪われてるんだよ、きっと。可哀想だから、髪の毛1本ぐらいなら分けてあげてもいいかな。残りのお兄ちゃんを構成する物はあたしの物。これは決定。運命によって定められた宿命。だってそうじゃなきゃ地球とこの世界で一生お別れバイバイだったもの。けど、ちゃんと同じ世界に来れた。これが運命じゃなきゃなんだっていうの?あーあ、早くお兄ちゃんとあたしの結ばれるという運命の邪魔をする路肩の石を退けてしまわないとな。だって…」
セーエ=ヴィルデイッドこと千景の独り言は闇夜にいつまでも溶けていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
やはり寒気が止まらない。
これは風呂に入ってじっくりと温まらないとな。
「大丈夫ですか?お兄様?お顔が優れないようですが…」
「あ、ああ、大丈夫だよ。早くお風呂入りたいって思ってさ。」
いかんいかん、心配させてしまったようだ。
そんなに顔色が悪く見えていたのか。
まさか、異世界来て初めての風邪を引いてしまったのか?
あとで、風邪に効く果物食べておこう。
「へっ、そんな貧弱な身体じゃあ姉貴を守れないな。姉貴もそんな奴と話してないで、俺と遊ぼう!」
別方向から声が飛んできたので、振り返ると男の子がいた。
勿論誰なのかは知っている。
OXさんと双子妻のもう一方のイースさんとの間に生まれた息子のポアロだ。
これまた俺の4つ下と、ルテアと同い年なのだ。
ルテア同様OXさんの子供か疑問抱くレベルの美少年具合だ。
なんと生まれた日も時間も限りなく一緒という双子妻がミラクルを起こしたため、側から見るとただの双子にしか見えない。
一応ルテアの方がミリ単位レベルで早く生まれたらしく、ルテアが姉でポアロが弟らしい。
そして、俺は確信した。
こいつは、お姉ちゃん大好きのシスコンだ。
分からなくもないぞ、その気持ち。
俺も姉じゃなくて妹だが結構愛でていたぞ。
なんだか、分かり合える気がする。
しかし、俺は目の敵にされてしまっているらしく、ルテアが俺に懐くほどポアロに嫌われるというスパイラルに陥っている。
まあそのうち解消されることを願っている。
「そう言えば、何歳で成人するんだ?」
ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
日本だと昔は元服や裳着で10代であったが、昨今の法律上では20歳だった。
世界的に見ると、早いところで15歳、多いところは18〜21歳だった。
この世界ではどうなっているのだろう。
「お兄様、本当にご存知ないのですか?」
「お前知らないのかよ、それはどうかと思うぞ?」
うっ、年下に教養のなさを指摘されると如何とも形容し難い気持ちになるな。
だが知らないものは知らないのだ。
無い袖は振れないのと一緒。
「……いや、俺の住んでいた所はここから途方もなく遠い地だったから、この辺りと文化が違うんだよね。だから教えて欲し…」
「お任せください、お兄様。ルテアに答えられることでしたら、何でもお答えします。」
食い気味に、そして鼻息荒めにルテアが教えてくれることになった。
「一般的に貴族も平民も問わずに15歳になる年の最初の日に皆一人前の大人であると認識されます。その時点より結婚することが可能となります。あとはまあ能力を分析する魔道具を使えるようになり、自分の能力を知ることができるようになります。それまではいくら金を払おうが、その魔道具を使うことはできません。」
15歳なのか。
まあこの世界は1年が16ヶ月あるから、地球換算で1年で4ヶ月余計に歳を取る。
こちらの世界での3年が、地球での4年になる。
そう考えると、こちらの世界での15歳というのは、地球における20歳と変わりない。
ということは、日本とあまり変わりないのか。
けど、結婚可能年齢に関しては遅めなんだね。
ちなみにルテア達は来年らしい。
年齢差的に見ればその通りか。
そして聞くに、例外もあるらしい。
その例外が貴族で、両親のどちらかが当主であり、その両親が戦争などで亡くなった場合、特例的に成人扱いされる。
貴族の当主は成人である必要があるからだそうだ。
今までの例だと、わずか2歳で成人扱いされたというケースもあったみたいだ。
「それにしても15歳にならないと自分の能力が分からないんだね。」
「はい、だからルテアはまだ知らないのです。」
《鑑定》系スキルで見ればいいのにって思ったら、それはできないとのこと。
子供の間は能力が使えない代わりに、《鑑定》系スキルなどの自身に介入される系統のスキル全般をを自動的に弾くようになっているらしい。
後にアイネに確認してみたが、どうやら事実らしい。
『子供の保護のために措置よ。能力が分かったら、すぐに戦争とかに駆り出されちゃうじゃない?それを防ぐためよ。』
「結婚も成人しないとできないだな。」
「え、ええ、そうですのよ。貴族では、予め婚約する風習があり、成人した日の翌日に大々的に結婚を発表します。」
やはり婚約制度は存在するのか。
政略結婚が常の貴族社会において相手を見つけるのは重要だからな。
成人としてから探すとなると苦労するのであろう。
「……あれ?そうなると、ルテアも婚約してた人いたの?」
ボン、と音がしそうなほど急速に顔を赤らめるルテア。
トマトといい勝負できるレベルの赤さだ。
「姉貴にそういうのは早いんだよ。まだまだ俺と一緒にいるんだからな。他の軟弱な野郎に譲るわけないだろう!」
静かだったポアロの咄嗟の介入。
どうやらルテアはまだ婚約者はいなかったようだな。
理由も想像ついた。
間違いなく、シスコンのポアロが原因だと。
「……い、いいのです。確かにルテアに婚約した方はいませんでした。けど、それで良かったのです…だって…今は…様だから…」
後半はほとんど聞き取れなかった。
難聴ではないが、流石にモゴモゴされると分からない。
「そ、そうか。」
なんとも言えない雰囲気が漂ったため、微妙な返ししか出来なかった。
そして、何度か当たり障りのないやり取りをしていたら風呂の順番になった。
その後、気配を消していたレインに見られていたらしく、こんとんとお説教される羽目になった。
また、女心の講義の時間だ。
今日だけで2回だよ。
そう言えば、この世界の就学システムってどうなってるんだろう。
また明日にでも聞いてみよう。
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