表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/122

第56話 就寝の問題

前話後述の通り、今話から第2部に入ります。

タイトルは現在未定ですので、確定次第報告させていただきます。


こちらは本日2話目です。

前話は12時の更新となります。

未読の方は是非ご覧になってください。

政変からの身内救出作戦も無事完了した。


散々心の中でやってやると息巻いていたんだが、結果としては拍子抜けであった。

襲いかかる騎士や暗殺者の軍団との初めての命を賭けた対人戦闘があると思っていたんだがな。

それでショックを受けながらも、これがこの世界で生きるということだと理解する流れだと思っていた。

残念ながら、その機会は今度ということか。


「ご主人様、ご無事で何よりです。」


着いた瞬間、まるで分かっていたかのようにレインが側まで来て声をかけてきた。

《領域感知》ってどこに転移してくるかまで分かるのか?

後日、オリ爺に聞いたが、そんなことはないと否定された。

謎は深まるばかりだった。


レインの存在は予め伝えていたため、さほど騒ぎになることはなかった。

OXさんの双子妻は話し掛けたそうにウズウズしているようだが、無視だ。

絶対疲れる展開が待っている。


「何事も起こらなくて良かったです。」


そんな俺の側で姫様はニコニコしている。

ダンジョンに潜っていたとはいえ、蝶よ花よと育てられた姫様に凄惨な場面に遭遇させないで済んだと考えるならいいか。


「改めて感謝致します、ジョー様。貴方様のお陰でこの者達を救うことが叶いました。」


「……ふ、ふん!貴様のお陰で我が妻達の無事も確保できた。それには感謝している。魔石を分けてくれたことにもな。」


姫様とOXさんからそれぞれ感謝の言葉が寄せられる。

いやOXさんよ、おっさんのツンデレなぞ需要ないから。

お礼を言うのが恥ずかしいのか、若干顔を赤らめている所がまた芸が細いようでウザい。


個人的には是非アイネとかレインにやってもらいたい。

OXさんがやるぐらいなら、姫様でも可だ。


「いえいえ、礼には及びませんよ。情けは人の為ならず。困っている人を助けるのは当然のことです。」


思いっきり営業スマイルして、テンプレートめいた返答をする。

対価前提で働いたんだから、我ながら白々しいにも程があると思う。


「そうね、坊やいいこと言うわね。」

「その通りよ、世の中助け合いね。」


気付いたら足元に双子姉妹がいた。

同時に話されると何を言ってるのか聞き取れませんよ、奥様方。

そして、さらっと対価を踏み倒そうとしている気がする。

さすが貴族、抜け目ないな。

まあ勿論きっちりと取り立てるが。



「まあもう夜遅いですし、諸々の詳しい話は明日にしましょう。」


日の入りと共に作戦実行したため、もう今は日もどっぷりと沈み星空が広がっている。

申し訳程度に焚き火で灯りを取ってはいるが、とてもこれから何かやろうとする状況ではない。


「……そうですね、こんな暗闇の中作業することは下策もいいところ。対価の件も含め明日話し合いましょう。」


おっ、姫様からフォローが入った。

対価は確約してますから、ご安心くださいという意思表示なんだろう。


さあ明日に備えるために寝ようと家の方に向かおうとした所で待ったがかかった。

まあそうだろうな、正直この展開になることは読めていた。

付き合い数時間ではあるが、無駄に忠誠心の高いOXさんが止めることは理解している。


「……待ってくれ、寝床の件だけは今話させてくれ。」


俺はそれに対して、手で制す。

言わんとしていることは分かっている。

おそらく姫様と子供、場合によっては自分と奥方は家の方で寝させてくれというお願いだろう。

しかも後者も含めるケースになる可能性が高い。

最悪のケースだと家自体明け渡せとでも言ってくるかもしれないが、状況が状況だけに流石にないだろう。


転移する際に野営の際に利用していたという携帯天幕を持ってきた。

幸い子供はOXさんの息子娘2人だけだったが、野営慣れしていない非戦闘職の人数が人数だけに、野営するには心許ない。

騎士9人に対して、妻らしき非戦闘職は5人。

OXさんに対して、非戦闘職の子供2人と少し疑問の残る双子妻。

もし仮に野営することになっていたら、近いうちに誰かがダウンすることになるだろう。


「誰を望んでいるのでしょうか?」


OXさんは一瞬驚きながらも、得心いったと俺に向き合った。


「……姫様と儂の子供、可能なら妻達だ。」


おっ、無理難題も吹っかけるでもなく、自分まで対象から除外したか。

しかも、儂の妻だけでなく妻達と来たもんだ。

この辺りは総合的な判断を下したということかな。


だが、しかしここで問題が発生する。

今現在、俺の家の中で使われていない部屋はアイネの私室も含めて3部屋。

だが、アイネの私室を使われるのはあまりよろしくない。

……こうなったら、出来ることは1つだ。


『もしもしアイネ、今大丈夫か?』


『あらどうしたの?今日は早いわね。


『ああ、少し問題が発生してな。俺も早くアイネとお話と洒落込みたいところなんだがな。』


『ふふっ、分かってるわよ。私の部屋を開放していいかなんでしょ?今はベッド以外ないんだし、使っていいわよ。』


『いや、アイネのベッドに他人が寝るのはいただけない。俺がアイネのベッドで寝させてもらう。』


『構わないわよ。私もジョー以外が寝るのは正直嫌だもの。』


『ありがとう、とりあえず落ち着いたらまた連絡する。』


『ええ、分かったわ。それじゃあまた後でね。』


よしっ、これで間に合うな。

あとはリビングも開放するとして、都合10人の寝るスペース自体は確保できる。


俺の私室を姫様1人を割り当てる。

残りの空いている2部屋に双子妻と子供達を入ってもらう。

もう子供達は1人で寝ることができるらしいが、環境変化によるストレスの緩和を促すために、イースは息子と、ウェスは娘とそれぞれ寝てもらう。

残りの騎士の妻達はリビングで寝ることになる。


「こちらの指示に従ってもらいますが、とりあえず寝るスペースの確保は問題ないです。ただ寝具に関しては簡素なものとなりますので、予めご容赦を。」


「室内で睡眠を確保できるだけありがたい。」


皆にベッドを確保するのは厳しい。

用意しようと思えば、予備で作ってあるベッドもリメの《ストッカー》から出せば問題はない。

しかし、そこまでサービスする意味もない。

これから〈不抜の樹海〉で生きていくことになりそうな者に、この地における最高クラスの物を知ってしまうと上昇志向が失われる。

始めはそこそこのレベルの物でいいだろう。




まず、俺はレインと共に家の中に軽くスペース確保のために模様替えをする。

その過程で、レインのベッドもアイネの私室へと移動させる。

これは姫様の護衛の話をした結果だ。


俺が姫様の寝込みを襲うかもしれないから、騎士の誰かが不寝番に就くという話が出た。

勿論そんなつもりはなかったが、カチンと来たため俺は真っ向から言い返した。


「こんな状況なんだ、お前ら騎士の方が襲うかもしれないだろう。死ぬ前にせめてみたいな感じで襲う可能性も捨てきれまい。ここには法などないのだからな。」


その後はお互いに譲らず、否定し続けた。

善人面した奴に限ってやらかすだの、実はお前ら姫様に秘めたる想いを抱いているだの、若さ故の過ちを起こしそうだの、姫様のあの可愛い顔を見れば騎士の誇りなど塵も同然だの、これでもかと罵倒を交わした。

勿論その側にはレインがいたが、言い合いしていた最中の俺たちからしたら蚊帳の外の存在だった。


いつまでも続くと思われた醜い争いに終止符を打ったのは、他でもないそのレインであった。


「ご主人様はそのようなことなさいません。それに、わたくしがお側でご主人様のことを見張っていますので、わざわざ姫様の護衛なさらずとも結構でございます。」


ここまであまり言葉を発してこなかったレインが大きな声を出したものだから、俺と騎士の貶し合いは驚きのために止まった。


「だいたいわたくしに手を出してもいないのです。もう1ヶ月は一緒にいらっしゃるというのに、こちらは準備できているというのに、何も、何もなさらないのです。それだと言うのに、姫様に襲いかかるなど冗談にもならない冗談ばかり言って…あるはずがないでしょう!」


ここまでキレたレインさんは初めてだよ。

不用意に否定の言葉でも掛けようものなら、即座に斬られてしまいそうな雰囲気まである。

というか、ここまで怒気を孕んだ声を出せたんだ…


俺は騎士達にアイコンタクトをすると、相手も承知したと言わんばかりにアイコンタクトを返してきた。


「「「申し訳ございませんでした!」」」


近年稀に見る綺麗な土下座と共に謝罪した。

どこぞの赤ワインのように、何十年に一度と呼べるレベルの完成度だった。

そして、男とは虚しい生き物なんだということを実感した。



スペース確保の模様替えも終わったので、非戦闘職の者を家の中へと招き入れる。

一応確認も兼ねてOXさんと数人の騎士達にもついてきてもらう。


家の中は土足厳禁だと伝えると、驚いた顔をされた。

しかし、これは自分が住んでいた所の文化ということと、土などの汚れが減って掃除が楽になるということを伝えると納得してもらえた。


トイレの位置を説明したところ、これまた驚かれた。

この時代、少なくともこの大陸では、基本的に排泄物は集積所に集めて肥料にするらしく、家の中にトイレがあることは考えられていなかったとのこと。

貴族でも中世ヨーロッパのようにオマルもどきに用を足した後に使用人が庭に廃棄するシステムを取っていたようだ。


その後、姫様を俺の部屋に通す。

その際にOXさん達による部屋の安全チェックが行われる。

勿論変な仕掛けたなどしているわけないから、問題なく終わる。

そして、ベッドを使うように指示して退室する。


次に、OXさん一家の部屋だ。

こちらは私室よりは狭い部屋が2つとなっている。

しかし、寝る分には問題ないと判断した。

OXさんチェックも問題なくクリアして、いよいよ寝具の話となった。


俺は、またバレないようにリメに合図を出して、毛皮を取り出した。

幸い今は晩春で肌寒くはない。

毛先は長くないものの、ふわふわとした感触の物を選んだ。

毛皮を出した瞬間、また目を見開いたような反応されたが無視だ。

正直今俺が持っているレベルの魔物なんて、ここの初心者マークレベルだ。


リビングに戻った上で、騎士の妻達用に同じ物を用意した。

その際、いくつか毛皮を騎士達にも渡して野営の際に使うことを勧めた。



これでひとまずの寝床問題は解決となった。

このペースで様々な問題が明日以降待っていることを考えると、嫌になる。

だが、乗り掛かった船だ。

俺のスローライフのために解決していかないとな。

次回更新日は明日です。お見逃しなく…


良かったら評価の方よろしくお願い致します。

ブックマーク、感想、レビュー等頂けたら励みになりますので、併せてよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
別作品もどうぞよろしくお願いします!

勇者?聖者?いいえ、時代は『○者』です!
― 新着の感想 ―
[一言] oxの妻の双子は主人公に助けて貰ったくせに礼の一つも言えないどころかなんで偉そうなんだ?他人に説教する前に自分らの態度を直せや。○ズ女ども。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ