第50話 姫様現る①
こちらは本日2話目です。
前話は12時の更新となります。
未読の方は是非ご覧になってください。
姫様だと?
俺は声を上げたそのフードの人物を見る。
よくよく考えると、声が高かった上に身長を低い。
うむ、女性という線も十分に考えられたな。
とりあえず確認を兼ねて返事してみるか。
「ほお、姫様とね。それはそれは大層なご身分で。」
いかんな、感じ悪い対応になってしまった。
まるでこちらが悪役ではないか。
まあでも事実を述べているとは限らないからな。
あっ、《情報分解》使うの忘れてた!
確認確認っと。
名前:フィアナ=イルミス=レンテンド
種族:ヒューマン
立場:[中立(友好)]レンテンド王国第五王女
能力:《囲い守られるモノ》
《鑑定》《隠蔽》《王威》Lv2
《コア魔術大全・中級》
《囲い守られるモノ》
固有スキル。
自身を保護する者の身体能力を最大100倍にす
る。
複数人が保護者となる場合、身体能力の増加率
は合計で100倍になるように分割される。
その際の数値は、自身で指定することも可能。
保護者は自ら保護者になることを認める必要が
あり、自身の生命危機以外でスキル保持者を負
傷させることはできなくなる。
《王威》
自身を視界に入れた相手に対して、威圧するス
キル。
威圧された対象は固有スキル及びスキルの使用
が不可となる。
また、対象の行動速度を制限する。
威圧可能な対象の強さはレベルに比例して増加
する。
《コア魔術大全・中級》
基本的な無属性魔法と、火・水・風・土の中級
魔法以下の魔法を全て使用することができる。
おいおいおい、想像以上にガチモンの姫様だわ。
スキル構成が完全に支配者としての構成という感じだ。
「まあそんなフードも被ってて姫様と言われても信じる要素なんてないね。」
「おい貴様、口を慎め!」
隊長格の豚が声を荒げる。
それに対して、姫様(仮)というフードの人物は右手を上げ静止させる。
「分かりました、フードを取らせていただきます。その上でどうかお話の場を設けていただきたく…」
ふむ、どうやら最も道理が分かっているのはこいつなのかもな。
このままだと埒も開かないから、その提案に乗ってみるか。
「それでいいぞ、フードを取ってみてくれ。」
「貴様、な「お黙りなさい!」」
へへ、いい気味だ。
怒られてやんの。
「それではフードを取らせていただきます。」
そして姫様(仮)は被っていたフードを取った。
な、なんだと…
金髪蒼眼の美少女だと!
くっ、なんというテンプレ通りの姫様だ。
容姿だけで高貴な身分だと理解してしまう。
《情報分解》で既に分かっていたはずなのに、この威力とは。
なんとか動揺を顔の表面に出さないように耐える俺を他所に姫様(確)は自己紹介を始めた。
「お初にお目にかかります。私、ロードス=グレイム=レンテンドの直系、レンテンド王国第五王女フィアナ=イルミス=レンテンドと申します。」
そして、ロープの裾を持った綺麗なカーテシーをしてきた。
ちょっと感動ものだな。
御伽噺の世界に入り込んだみたいだ。
まあ地球にいた頃から考えると、十分御伽噺の世界なんだがな。
「あ、あの、いかがなさいましたか?」
やべ、つい物思いに耽ってしまった。
「いえ、なんでも。こちらも返事を返すのは道理ですね。私の名は丈、家名はございません。以後お見知り置きを。」
流石に丁寧な対応されたらこちらもそれ相応の態度で接する。
横柄な態度、ダメ絶対。
そして、やはり苗字は告げないことにした。
それで突っ込まれるとさらに話が進まなくなってしまう。
「ご丁寧な挨拶、感謝致しますわ。貴族でいらっしゃらないのなら、迂遠な言い回しは必要ありませんね。単刀直入に、物資の提供をしていただきたいのです。」
迂遠な言い回しってのは、貴族言葉というやつか。
まあ皆目分からないから助かるが。
それにしても物資の提供か。
出来なくはないが、それを施すだけの理由がない。
一応こっちも労働の末に手に入れたものだ。
ただでさえこの世界に来て間もないのだ。
どれだけ物資があって十分と言えるのか分からないのだ。
とりあえずここにいる理由を聞くか。
「物資の提供ですか……可能ではありますが、いくつか聞いてもよろしいでしょうか?」
「はい、構いません。もし対価が必要でしたら、この身を貴方へ捧げましょう。」
ぶっ、とんでもない爆弾発言が飛び出した。
「なっ、姫様!何を仰られるのですか!」
いや、ほんとそう思うよ。
豚団長さん、もっと言ってやって。
後ろに控える皆さんも慌てふためいてるよ。
これ以上女性が増えると、アイネに殺されかねない。
まあけど対価というものを理解しているのか。
俺がイメージする王族だと、民は自分らに献上して当たり前という感じだったからな。
これはいい意味で裏切られた。
ただ場の混乱を収めないとな。
「い、いえ、それには及びません。ひとまず質問に答えていただきたいのですが…」
「これは失礼致しました。どうにも先んじてしまったようで、オホホホ。」
姫様の顔をよく見ると、ほんのり赤くなっている。
色々と恥ずかしかったんだな。
すまんな、許してくれ。
「いえ、問題ありませんよ。ゴホン、では質問させていただきます。」
やっと本題に入れそうだ。
「何故この〈不抜の樹海〉という極限環境の地へあなたのような方がいらっしゃるのですか?」
これが最も大事な質問だ。
開拓なぞ進んでいない地に何故このような大人数がいるのか不思議でならない。
まさか今頃になって進出し始めたのか?
俺はひとまず思考を止め、姫様に向き合った。
姫様は一度悲しみを宿した目をした後、ポツリポツリと語りだした。
……明らかに厄介ごとになりそうなことを。
次回更新日は9/10(木)です。
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