Different Sides(1)
しばらくは更新日に2話投稿します。
1話目が12時に、2話目が18時に更新となります。
お読みになる際はご注意ください!
こちらは本日2話目です。
◇幼馴染・清水めぐりの望み
「ーえ、私死んじゃったの?」
「残念ながらそうなってしまいます。誠に申し訳ございません。」
さっきまでいつも通りに、丈と一緒にバスで通学していたら変なところにいた。
話を聞く限り、隕石に巻き込まれて死んでしまったみたい。
そして、ストラトラトス(?)で生まれ変わるみたい。
えーと、そうなると、
「あの自分以外にも転移する人がいるんですか?」
「はい、他の人もこの世界に転移することになっております。あなた以外だと6人ほどいらっしゃいます。」
「そ、その中に黄道丈っていう男性の方がいませんでしたか?私ぐらいの年齢で少し背が高めの」
「少し待っていただけますか?………ふむ、確かにいますね、私の上司のあたる方が担当しております。」
よかった、丈も新しい世界にいるのね。
彼がいてくれるのなら、安心できそう。
今までずっと一緒だったんだから、ここでさよならバイバイになるのは嫌だもの。
まだ伝えられてないこともあるし…
「わかりました、わざわざありがとうございます。」
「構いません。世界に転移するにあたり、1つだけ望みを叶えられるのですが、いかがいたしましょうか?ちなみに言語方面は《言語理解》というスキルが無償で与えられるので心配なさらずとも結構です。」
んーと、とりあえず丈に会いたいな。
彼が一緒にいてくれれば、それだけで安心できるわ。
「黄道丈と同じ場所に転移させて欲しい、ということは可能でしょうか?」
「……それは少し厳しいものがございます。どうやらその方は少しやり取りが難航しているようですので。おそらく転移先が決まるのがあなたが転移した後になりそうです。」
それはちょっと、いやかなり困るわ。
いったいどうしたらいいんだろう…
「次善策になりますが、自ら彼のもとに向かうのは如何でしょうか?幸いにも転移した後しばらくは私と会話のやりとりは可能ですので、のちのち彼が転移した場所をお伝えいたします。」
「それで構いません。いずれ会うことができるのですね?」
「はい、可能です。ですので、あなたの望みの権利を使って、彼に会えるよういたします。」
会えそうならなんだっていいわ。
それに丈だって探してくれるかもしれないし。
「それでお願いします。具体的にはどうなるんですか?」
「まずあなたが彼と再開するまで死なないようにいたします。生命神である私の権能の一部を劣化させた固有スキルというものを付与させていただきます。能力的には普通では治せないような、負ってしまった傷を癒したりできます。即死でない限りは癒すことができるようになります。」
「それって自分にだけ適応されるんですか?他の人の負傷も治せたりしますか?」
「はい、他の人の負傷も癒すことが可能となっております。あと、あなた自身は恒常的に治癒能力が高まりますので、会う前に途中で死んでしまうということはほとんどないでしょう。」
「なるほど、わかりました。けど、それだと抵抗する手段がなくて不安なのですが、どうなるのでしょう?」
丈が読んでいた小説を借りて読んだ時のテンプレに書いてあったわ。
こういう転移先は魔物とか盗賊とかがいて、犯されたり食べられたりするって。
さすがに死なないまでもそんな目には会いたくない。
「そうですね、ではこちらのネックレスを与えましょう。これを装着している限り、あなたを害するものを拒み弾くための結界が張られます。これでひとまずは大丈夫だと思われます。」
「ありがとうございます。大切に身につけさせてもらいます。」
「では、そろそろ時間となります。後ほど彼が転移した場所を伝えさせていただきます。ひとまず比較的発展した平和な街周辺に転移させます。彼に会うまではどこかのギルドに属して、お金を稼いでいた方が良いと思われます。」
「参考にさせていただきます。色々とありがとうございました。」
「いえ、構いません。では、新たな人生楽しんで下さい。」
光に包まれて次第と意識が遠のいていった。
「待っててね丈、会いに行くからね。」
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◇他の転移者たちの望み
「伝説の剣をくれ、勇者になりたい。」
「せっかくならイケメンに囲われる貴族の令嬢になりたいわ。」
「アイテムボックスが使えるように空間魔法を教えてほしい。」
「なにがなんだかわからないから、どこかの街で平穏な日々を送りたい。」
「なんだ胡散臭そうなこと言いやがって、そんなに言うならとにかく大金を寄越せ。5億円ぐらい用意しろ。」
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◇妹・黄道千景の状況
「お兄ちゃんが死んだとか、意味わからないこと言わないで!あんたなんなのよ!早くあたしのお兄ちゃんを返して!会わせてよ!」
「で、ですから、死んだと言っても他の世界で生き返るのでして…」
創造神より遣わされた配下の者はその使命を果たしに来た。
しかし、兄を失ったショックなのか、千景となかなか会話をすることができない。
「うるさいうるさいうるさい、あたしはお兄ちゃんがいない世界なんて嫌。耐えられないよ!あんた、神なんでしょ。なんとかしてよ。神なら生き返らせるくらいわけないでしょ?さっさと奇跡でも起こしない!」
まさに聞く耳持たずである。
ここまで、千景が取り乱してしまうのも無理もないことであろう。
両親亡き後面倒を見てくれ、その抱えた悲しみを慰めんと奔走してくれた、心の拠り所であった兄という存在を失ったのである。
さらに、千景の兄に対する想いは、もはや家族としての垣根を越え、好きな異性に対するソレと変わりなかった。
しばらく、千景は泣き喚いたり怒鳴ったりしていた。
配下の者もその想いというものに気づいてしまい、不思議とその場を離れる気になれなかった。
その境遇から考えるに、その道に進むことは考えられなくはなかった。
そして、それに対して憐憫に似た気持ちを抱かせた。
そして、ポツリと千景は言葉を溢した。
「………じゃあ、あたしもその世界に連れて行きなさいよ。」
その提案を断ることは本来であれば、NOと言うだけの簡単なことであった。
そんな好き勝手に世界を越えたりすることはできないものである。
しかし、配下の者は既に千景の想いに同情を寄せていた。
そのため、その想いに応えようとした。
「……すぐに会うことはできませんが、向こうの世界で会うこと自体は不可能ではないです。」
「じゃあ…」
「ただし向こうとこちらの世界の時間軸はズレており、今から向こうの世界に転移するとなると、数ヶ月から数年程度のズレが生じてしまいます。また本来の転移と異なりますので、他の方とは違う形で転移することになります。それでも本当によろしいでしょうか?」
「それぐらいならいいよ、だって同じ世界に行けるんでしょ?私が行くまでお兄ちゃんはきっと生きて待っててくれるもの。」
「……わかりました。では、時間もないようなので早速向かいたいだと思います。なにやり残したことはありますか?」
「ええ、特にないわ。すぐにでも行きましょう。」
そう言って、配下の者と千景はこの世界から旅立った。
「待っててね、お兄ちゃん。すぐに会いに行くよ!」